本書はマンガや映画などで見かけるロングソード術やレスリング、レイピア術など、中世・ルネッサンス期における剣術・格闘術のすべてを図解したものです。筆者の執念を感じる仕事には本当に敬服します。
本書はある方に資料として勧めたときに、いい機会だから自分でも読んでみようかと思い、手にとって見ることにいた
...続きを読むしました。僕は中世ヨーロッパの武術に関してはほとんど知識はなかったのですが、筆者の執念にも似た膨大な資料と、ある技術は失伝して技術が途絶えていることを認めつつもこうして一冊にまとめてくれたことを感謝します。
ここに記されているのは、マンガや映画などでおなじみとなったロングソード術や、レイピア術だけでなく、某連続殺傷事件で有名となったダガーナイフとはまた別なルーツを持つダガー術に加えて、日本の古流柔術などと比べてもなんら遜色もないレスリング術、さらには日本の戦場における鎧組討を髣髴とさせるような、鎧を着たレスリング術など、中世ヨーロッパの戦闘教本を解説したものになっております。これはおそらく日本で発行された初めての書籍でしょう。
僕はその辺の事情はよくわかりませんが、俗説として近世より遅れていると思われ続けたといわれる中世ヨーロッパの武術が、当時いかに発展していたかを知ることのできる一冊であると思います。
特に自分が興味を持ったのはレイピアなどの剣術やスタッフと呼ばれる棒術は無論のことですが、ダガーを使った戦闘術は、お互いの間接を取り合ったり、けり技などの当身を交え、さながら日本の竹内流に代表されるような古流柔術を彷彿とさせるもので、『いかに相手を仕留めるか?』というおおっぴらに語るにはある種のタブーが付きまとう知識や話題でありますが、その技術の精緻さに思わず舌を巻いてしまいました。
さらに、戦場における最後の手段である鎧を着た状態でのレスリングは、武装の隙間を攻撃したり、組み伏せたあとに頭部をダガーで一突きして止めをさす描写を書いた絵と解説を読んだときも興味深いものをおぼえました。これは当時のことを知る貴重な資料であるとともに、これを参考にして物語を作るときなどにも使え、多様な用途を持った一冊であると確信をしております。