「風邪をひいたら、たくさん汗をかいた方が良い」なんて民間療法を未だに信じているのならば、気をつけた方が良い。
本書は巷に蔓延る数々のニセ医学に対して、ひとつひとつ丁寧にその欺瞞を指摘するもの。
語り口はわかりやすく、丁寧で誠実であるだけに、本書のような正論を受け止められる人間は限られるだろう。
ニ
...続きを読むセ医学側は人間の脆弱性を的確に突き、論理ではなく信仰によってその影響を拡大しており、もはや論理的に正しい説得では通用しない。
彼らにこの本を突きつけたとしても、「その著者一人の言うことだから」「その頃とは違う治療法だから」「もっと売れてる本ではちゃんと説明されている」「良くなった人は全員間違っていたと言うのか」などなど、反論されてしまう余地はいくらでもある。
では、騙されないために何ができるのか、騙された人をどう説得すれば良いのか。
"信仰"には別の"信仰"で抗うしかないが、その"改宗"は難しく、
であればニセ科学に捕まる前に、科学リテラシーの教育とセーフティネットの整備を地道に続けるしかない。
昔の自分は、科学と論理のみを信奉していたが、今になって、占いや精神論など根拠のない思想も許容できるようになった。
正論や確率では答えが出ない時や、悲しみや辛さから抜け出せない人には、例え嘘でも「絶対に大丈夫」と後押ししてくれる他者が必要になる。
しかし、用法用量が適切でなければ、メリットよりもデメリットの方が大きくなる。
健やかな生活の維持のためには、病気や怪我の予防だけでなく、間違った信仰を防ぐ予防が必要となる。
本書はそのための一助となるだろう。