サッカーもプロ野球もバスケットもアメフトも全ては札束の世界。より多額の金を用意出来るところがいい選手を獲得出来る。それが、プロの世界だから。
さて、本書はサッカーの戦術分析話。
では、国同士で戦う五輪やワールドカップはどうか?基本的に選手は自国出身に限定され、少なくともお金が物を言う世界ではなくなる。(もちろん、有名監督の招聘や地域別出場国数の政治的駆け引きなどはビッグマネーが動いている可能性はあるが)
私の様な素人は、とにかく試合結果が全てで、試合後の選手採点を見ながら「なるほど~」と頭を整理するのが関の山。
本書では、サッカーの戦術をスペース、配置、ゾーン(ビエルサゾーンという言葉を初めて知りました)などから分析。試合開始時の選手選択と配置により攻撃的布陣なのか守備的布陣なのか、得点や失点の状況からの戦術の変化、ピッチを3ゾーンに分けて攻撃の起点となる方からゾーン1と定義し、各ゾーンでのテーマと課題(ゾーン1ではビルドアップとロングボール、ゾーン2でのスペースの創出と崩し、ゾーン3でのゴール前の攻防)を解説。
中でも参考になったのが、「日本代表試合分析」。
2019年2月1日アジアカップ決勝戦の対カタール戦【1-3で負け】と同年3月22日国際親善試合の対コロンビア戦【0-1で負け】。どちらも得点につながる決定的場面を選手の動きと戦術を絡めて解説。ボールを持っていない選手の動きがキーになるのが面白い。昔、オシム監督が試合中に歩いてる選手を激怒したが、その時のオシム語録に「走りすぎて死ぬことはない」が懐かしく思い出された。
あとがきでは、筆者が《らいかーると》という名前でサッカーブログを始めた経緯が書かれています。1つは、2006年のワールドカップで日本代表が惨敗して微力ながら何か貢献したいという気持ちと、ベルント・シュスター監督のヘタフェ、マルセリーノ監督のレクレアティーボ、ウナイ・エメリ監督のアルメリアのジャイアントキリング(持たざるチームが戦術で強豪チームに勝つ)を見てサッカーの答えはピッチに落ちている(現象を分析し、その理由を考察)と気づいたから。
「データも大事だが、自分の目の方がより大事」byジョゼ・モウリーニョ(マンチェスター・ユナイテッド)。