ビクトル・デル・アルボルのレビュー一覧

  • 終焉の日

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    初のスペインミステリー。スペイン近代史の流れの中で起きる事件から、目が離せませんでした。モラ兄弟が悲愴。それに政治家となったあの人、そんなに権力あるものなの?もの悲しげなラストでしたが、もっと堕ちてもいいのでは、とすら思えました。それほどの悪辣さです。

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    2019年07月15日
  • 終焉の日

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    スペイン、1980年、弁護士マリアは警官セサルが情報屋を暴行した時間で警官を刑務所送りにし、売れっ子弁護士へ。しかしセサルは娘を拉致されていた。大物政治家が裏にいて、暗躍している。マリアはセサルに話を聞きにいくと・・・1941年、フランコ政権下、ファランヘ党幹部の妻イサベラ・モラは息子を連れて夫から逃げようとする。しかし・・・40年を経て、暴れ出す謀略、怨念とは・・・

    ううむ。こういう話は大好物だ。ラスト近辺でややもたつくので全体としてやや長いけれど、それ以外は完璧に面白い。

    イサベラはなぜ夫から逃げようとするのか、その結果どうなったか。それがどういう怨念を生んだのか。40年後、誰がどうな

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    2019年05月15日
  • 終焉の日

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    ネタバレ

    1980年代のバルセロナが舞台でそこから40年前に起きた殺人、策略、嘘、憎しみ、復讐。家族三代にわたって引き継がれることとなった憎悪。そして始まる復讐。全てはそのためというような人生を生きてきた者。それを止めようとする者。そこには法や社会を超えたそれぞれの正義があって悲しみの連鎖がある。憎しみから始まり、運命に動かされ、それだけにしか生きることができなかった人間の悲しみ、孤独がある。個人的に文体がすごく好きでとても心地よかった。

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    2019年04月11日
  • 終焉の日

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    スペイン現代史にさほど詳しいわけではない。ヘミングウェイや逢坂剛の作品を齧った以外、あまり勉強していないのが実情である。それゆえ、スペインの作家がスペインの現代史を題材に書き上げたネイティブなこの作品には惹かれるものがある。しかも、フランコ没後、独裁制から民主化に移行したこの国にとっては大転換となるこの時期である。本作は、平和というものの産みの苦しみの中で様々な陰謀とそれに絡め取られていった人々の重厚、かつ壮大なノワールとも言える力作なのである。

     多くの登場人物が現れる。また多くの過去の複数時点を語る物語でもある。複雑に絡み合った人間たちの愛憎模様と、彼らの離合集散が生み出す化学反応は、時

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    2019年04月11日
  • 終焉の日

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    ある誘拐事件に関して口を割らないケチな情報屋を執拗なまでに拷問し、命の危険にまで追い込んだ悪徳警官セサルは塀の中に収監されていた。セサルを刑務所送りにしたのは弁護士のマリアだ。フランコ軍事政権下にはびこっていた強欲な警官に違いないと、被害者の弁護を請け負ったマリアは、セサルの非人道的な行いを徹底的に裁判で攻撃し勝利した。その結果としてマリアは名声を得て、セサルは自由を奪われた。

     それっきりで二人の接点は途切れるはずだった。しかし、いまマリアは刑務所にいるセサルに会いに来ていた。私はとんでもない過ちを犯してしまったのかもしれない、という疑念が頭から離れなかった。果たしてセサルが執拗に聞き出

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    2020年10月10日
  • 終焉の日

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    とても重たい。漂う空気は常に緊張して喉が渇いて、口臭がする。そういう緊縛した世界で描かれる人の命の重たさがずっしり。主に三家族の不幸が重なり絡まり全ての人達を苦しめ続け、権力という吸い上げ気により、人生を狂わされた人々の物語。暴君の家族ですら、本人以外、むしろ一番悲劇を植え付けられている。それを後世にのこすなー。悲劇の遺伝。こう、皆わかっちゃいるが、悪者はなんでしぶとく生き延びるかなあ。なんかどっか壊れてんだよね。周りが全員不幸で、自分だけ幸せでいい、ってさ、生きる資格ないと思う。

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    2020年04月12日
  • 終焉の日

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    スペインを舞台に、フランコの独裁政権下の1940年代に端を発した事件が、時代の流れを伴って民主化直後の1980年代のさらなる事件へとつながっていく。

    スペインの陰鬱な時代背景が大きく作用するストーリー展開のおもしろさはあるものの、復讐をベースとした拷問、監禁、殺人など、全編をおおう残虐さには閉口する。ヨーロッパミステリ大賞受賞作ということだが、血生臭いものは年々苦手になってきているので、帯にある「人間ドラマ」を味わうゆとりはなかった。
    コロナで閉塞的な日が続くなか、『極北』『幻夏』など重苦しい読書が続いたので、このあたりでほっとしたりスカッと気分転換のできたりする作品を読みたいな。

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    2020年04月01日
  • 終焉の日

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    ミステリとあるがSFのようである。 過去の事件の方がなまなましく、現在の人は過去の亡霊におびやかされているかのように影が薄い。登場人物たちの感情や内面や背景を極限まで廃しており、不思議な読後感。

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    2019年10月12日
  • 終焉の日

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    病室のテレビは国会が襲撃されたクーデター事件を放送している。一九八一年のスペイン。弁護士のマリアは三十五歳。バルセロナの病院で死にかけている。複数の事件に関わっているらしく病室には監視がついている。事件は一応終っているのだが、逃亡中の容疑者がいて、刑事が時折訪れて尋問めいた話をしていく。マリアは脳腫瘍の手術後で、しかも腫瘍はまだ取り切れていない。髪の毛は剃られ、身体にはチューブがつながれている。

    多視点で語られる。遡行したり、現時点にもどったり、行きつ戻りつを繰り返しながら、絡み合う人物同士のもつれあった関係を一つ一つ解きほぐし、一本の筋の通った物語に纏め上げてゆく。親の因果が子に報い、とい

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    2019年07月01日