四宮義俊のレビュー一覧
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もう「叫ぶ詩人の会」の歌を聞いて以来,ドリアンのファンになってしまったので,評価は付けられない(5以外にない(^^;;)。
さて本書について…
新宿に住む十数匹の野良猫を題材にして小説が書けることが面白い。主人公の山ちゃんという男性(ボク)。小さな焼き鳥屋の店員の夢ちゃんという女性。その焼き鳥屋に集まる常連は,なかなかクセのあるメンバーだ。
小説の常で,内容についてちょっとでも紹介すると,読むときのドキドキさがなくなる。だから,これ以上は書かない。
ただ,いろんな創作や文学や芸術は,一般大衆の大多数を相手にするのではなく,目の前にいる一人に向けて行うものではないか…という作者の訴えに -
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構成作家の卵である「ボク」は明日の見えない闇の中でもがいていた。
そんなある夜、何となく立ち寄った新宿ゴールデン街にある花梨花という小さな居酒屋で、野良猫を可愛がる夢ちゃんという女性店員と出逢う。客には無愛想だが不思議な優しさを秘めた夢ちゃんに「ボク」は惹かれてゆく。
2人は次第に距離を縮め、猫についての秘密を分け合い、大切な約束をするのだが…。
読んでいる最中に、これはもしかしたら、程度は分からないけれど作者の実体験も入っているのかな?と思った。というのも、夢ちゃんは詩作が趣味で、その夢ちゃんに影響されて主人公も詩を書き始めるくだりがあって、2人が書いた詩も作中に登場するから(作者は詩人で -
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売れない構成作家の卵と過去に傷を持つ女性の淡い恋の物語。
バブル期の新宿ゴールデン街にたたずむ居酒屋・花梨花。
山崎は色弱で、希望した就職ができず、有名構成作家の元で仕事を始めたが、大勢の人に向けたメッセージを生み出すことに喘いでいた。
花梨花にふらりと入った山崎は、店員の夢ちゃんと出会う。
夢ちゃんは斜視があり、不思議な雰囲気を持つ女性で、猫好きでもあった。
その店では、店の窓に現れる猫を予想して賭けをする「猫じゃん」をしていて、夢ちゃんお手製の「猫の家族図」が張ってあった。
次第に夢ちゃんに惹かれていく山崎は、ある日、夢ちゃんの悩みを聞くことになったが、2人の間は突然引き裂かれ -
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新宿ゴールデン街。ちょっと怖くて胡散臭いけれどちょっと憧れます。
かつての捻じれた若者達が大人になった今、昔どうしてそうなったのか分からない事だらけで、どの扉を開ければ未来につながっているのか全然分からなくて、悶えていた時の気持ちは今も残っているでしょうか。
たくさんの猫がひょっこり顔を出す居酒屋。店員の女の子の書いた猫の家族図。猥雑でどこか暖かな人々。色弱というハンデを背負って夢であった映像の道を絶たれ、いつも背中を丸めてもがいているような主人公。初速は遅いけれど読んでいるうちに心に加速がついて、心が次々追い抜かしていく風景はかつて自分が見た風景だったような気がしました。
昔が懐かしく、過ぎ -
Posted by ブクログ
バブルを迎えた頃の新宿ゴールデン街を舞台にした恋愛小説。
主人公と、主人公が恋をする飲み屋の女の子夢ちゃんのどちらも視覚に問題があり、それが色や感覚や猫につながっていくところは上手いなと思った。
みんなに、ではなく誰か一人の心にとどくものを、という思いは、この作者の全ての作品に通じるものかもしれない。
大江健三郎の『個人的な体験』で、個人的な体験を掘り下げていけば、普遍的な道にたどり着く、みたいな表現があったけど、それと似ている気がする。
実体験者だけにバブルの頃の勢いのある猥雑な雰囲気がよく出てて、こういうのは若い人が想像で書くのは難しいだろうなとも思った。
読み始めたらイッキ読みで、このリ