レベルアップで九死に一生を得た老師が異世界を旅する物語シリーズの第一巻である。
合気術の達人・竹村嘉一は死の間際、担当看護師のトキコと共に異世界へと移動し、異世界サイズのサイと対峙。
そのサイとの一瞬の攻防を制し、荒唐無稽な「投げたいモノ」ノートの其の壱(サイ、挿絵はだいぶ絵心ない芸人風)を
...続きを読む見事投げ飛ばしてみせた。
最期の満足を噛み締めながら死にゆく彼に届けられたのは「レベルが 上がります」という通知であった――。
そんな形で1話は展開し、異世界転移物語としてかなり異質な風景を活写している。
物語のモデルにはおそらく初期のドラゴンボールが含まれている。
果てしなく広がる世界を駆け抜けて、摩訶不思議アドベンチャーを繰り広げるのが主題になりそうだ。
また、登場人物(トキコ、後に竜人のロン・ニュー)が各自特殊能力を得ている(保持している)点で見ると、ハンターハンター的な超能力バトル要素などもあるかもしれない。
ロン・ニューの設定回りなどは、おそらくワンピースを思い出した人も居ることだろう。
主題となる「余命二ヵ月」を踏まえつつ、物語像はジャンプ王道作品の系譜をひくものである。
まだまだ物語像は見えづらいが、「老人主人公」「余命宣告」といったオリジナル要素を活かしつつ、広い異世界を探検していくのだろう。
この巻は星四つ半相当と評価している。
先行きに期待しつつ、現状ではシリアスとコミカルの食い合わせや各要素の背景の見えやすさが気になるところで、その辺が星を下げた理由になる。
小技は効いていて、たとえば「ぶん投げたいモノ」ノートが地味に書き進めるに従って画力が上がっていたりする。
月のグラの独自性なども魅力的だった。
こうした点が次巻以降でさらに物語を彩っていってくれると嬉しいところである。