セブンイレブンが、江東区豊洲にオープンして40数年、今や全国で55,404店(2018年3月)・売上高約4兆円となり、生活に欠かせないインフラになったコンビニエンスストア。ただ、コンビニエンスストアには、大きな問題点・闇の部分がある。それは、過重労働問題と、歪なフランチャイズ契約。
コンビニオーナーは、形式的には独立した経営者の扱い。労働基準法の適用にならず、法的な保護も受けない。スタート当初は、名称どおり午前7時から午後11時までの営業も、現在はほとんどの店が24時間営業。人出不足もあり、オーナー含めた家族でフォロー、その負荷はコンビニオーナーが背負っている。人件費はオーナー負担で、フランチャイザー(本部)には痛みはない。痛みがあるどころか、フランチャイザーは利益は売上比。フランチャイジー(加盟店)にとって24時間営業の費用対効果は今はなくなっているはずだが、フランチャイザーは、いろいろな手段を使って、売上増・24時間営業を強要してくる。
コンビニの雄・セブンイレブンは、国内に20,286店舗展開(2018年3月)・全店売上高は4兆5,759億円(2018年2月期)も、直営店は約450店・年間1000億円程度の売上で2%前後。ほとんどはフランチャイズ契約で展開。セブン・イレブン・ジャパンの2018年2月期決算は、売上高(営業総収入)は8,949億円、粗利7,777億円(91.5%)、営業利益2,441億円(28.7%)、当期純利益1,667億円(19.6%)。この売上は加盟店からの収入で、加盟店が本部に支払するロイヤリティ=チャージ。この部分には通常の商品の仕入原価は発生せず、フランチャイズシステム提供の人件費・物件費が原価で、粗利率が90%を超えている。ちなみに、直営店売上1000億円の粗利率は約28%。セブンイレブンのビジネスモデルは、このフランチャイズ契約が利益の源泉。セブンイレブンは、商品の品揃え・店の運営は、日本流で進めたが、「粗利分配方式」と「会計システム」は米国流、「おにぎりやお弁当を自分で売るより、誰かに売らせてチャージを吸い上げる方が、効率よく稼げる」。
セブンイレブンは、毎日発生する仕入代金の貸借や会計処理を、セブンイレブンが代理で行う会計簿記制度を採用。契約上、オーナーはこの制度以外では決済できない。コンビニ会計の特徴は、①売上金の全額(つり銭用の規定額を除く)を加盟店が毎日遅くとも翌日に本部に送金。加盟店が給料等、月々のやりとりに充てるのは「月次引出金」として所定の算式で本部に稟議を上げ、承認を受けた後、定額口座に振り込みされる。売上金の一部に手をつけると、本部社員が加盟店に乗り込み、24時間の「出納管理」を行うことも。②加盟店の会計は加盟店が行うのではなく本部が代行。店のオープン時、加盟店は店の在庫の全ての支払を行うのではなく、一部定額のみ負担。差額は本部が「与信」として本部が融資する形をとる。ただ、実際は、商品の支払は後払いで、お金を預けているのは加盟店の方。なのに、低利とはいえ、与信には金利が付加されている。この金額は数千億円になると想定されている。③発注は加盟店も、99%が本部推奨商品で、仕入先ベンダー・仕入原価はストアコンピュータに表示も、伝票・領収書はなし。本部のバイイング力は圧倒的で、仕入価格も安いはずだが、表示の仕入価格はそうなっていない。仕入内容の開示を求めて裁判を起こした加盟店があり勝訴も、開示のための費用は加盟店負担とされ、いまだ詳細な内容は把握されていない。④粗利は分配され、本部が一定率(セブンイレブンの場合、56~76%で粗利額ごとに率が変わる)をチャージ収入として徴収。但し、この粗利の売上原価は、売れなかった商品の原価は差し引くとして、棚減り(棚卸ロス・万引き等)やお弁当・おにぎり等の廃棄が引かれている。結果、見ばえの粗利額が増え、本部へのチャージ支払が増え、棚減りや廃棄は営業費として加盟店負担。機会ロスをなくすということで、一定額を発生させることを目標とされたり、加盟店に値引きを制限しているのも、この契約が背景。廃棄は全て加盟店負担は、あまりに不公正なため、公正取引委員会からの指摘を受け、本部負担に変更された。ただ一部のみ(15%)。
「加盟店舗とベンダーとの取引において本部は経済的利益を受けていない」とするが、財務会計上の計上はともかく、本部が負担すべき広告宣伝費や販促費用、商品の開発費等を、ベンダーに負担させるといった方法で、実質的な経済的利益をえていると考えられる。Aタイプは自分の土地・建物で本部チャージは30~49%、Cタイプは本部が土地・建物用意し本部チャージは60~70%。店舗指導員として配置されているOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)、建前は週2回オーナー店でカウンセリングを行うことになっているが、実際はオーナーの監視と新規商品を進める営業マン、その上位者で地区を統括するDM(ディストリクトマネジャー)、さらに上位者の県単位・ゾーンを統括するZM(ゾーンマナジャー)と二重三重の管理体制が構築されている。
コンビニ・フランチャイズ契約を規制する法はなく、民法は契約当事者が対等であるという前提に立つため、契約自由が原則で、権利濫用・信義則・錯誤の適用はハードルが高い。契約当事者間の置かれている状況の不均衡を考慮すると、何らかの立法対応が求められている。こんな歪な契約で、コンビニはこれから10~20年も続くのだろうか。365日24時間稼働は、既に外国人雇用で維持されつつある。これも、いつまで続けられるのか。
セブンイレブンは、2015年にブラック企業大賞。ちなみに、2012年東京電力、2013年ワタミ、2014年ヤマダ電機、2016年電通、2017年引越社、2018年三菱電機。