シャーウッド・アンダーソンのレビュー一覧

  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    2018年に出た新訳版。橋本福夫の旧訳版に比べ、読みやすくなっている。
    時代は1900年頃、舞台はオハイオ州、架空の町ワインズバーグ。その町で起こる小さな出来事をめぐる25篇。田舎の風景や季節の描写、人物の心理描写が秀逸。
    それぞれの掌篇はしゃれた終わり方をするわけではないし、受ける印象も明るいものではない。でも、なにかしら心に残る。この作品にインスパイアされて、レイ・ブラッドベリは『火星年代記』を書いた。構成のしかたが似ているだけでなく、読後の印象も似ている。
    (訳文は練られているが、多少気になる訳語もある。たとえば「哲学者」の章、パーシヴァル医師はさほど高齢でもないのに「わし」や「わしら」

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    2025年05月04日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    エリザベス・ストラウトが『オリーヴ・キタリッジの生活』において、クロズビーという架空の町での人々との交流を描いたり、レイ・ブラッドベリが『火星年代記』の冒頭で「こんなにすばらしくなくてもいい、これの半分だけすばらしい本でいいから……ぼくが書けたとしたら、どんなにすてきだろう!」と賛辞を送るほど影響を与えた本作。二作とも好きですが、これも読み進めるほど話に引き込まれて、読んで良かったと思いました。

    本書は、ある老作家が見た夢「いびつな者たちの書」という物語から始まる連作短編の形を取っています。舞台は、オハイオ州の架空の町ワインズバーグ。どの短篇も新聞記者のジョージ・ウィラードを登場させて、一見

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    2024年09月25日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    19世紀アメリカ西部の田舎町、ワインズバーグ。新聞記者の若者ジョージ・ウィラードを中心に、町に住む「いびつな者たち」の物語を綴る連作短篇集。


    この作品に描かれた「いびつな者たち」とは、大きく括って社会的なマイノリティーの人たちを指しているのだと思う。さまざまな理由ではぐれ者扱いを受けている人たち。「手」のビドルボームや狂言回し役のジョージが抱える葛藤から、〈男らしさが至上の世界からこぼれ落ちた人びと〉というテーマを受け取った。ヒーローにも不良にもなれず、世間から賞賛されるようなことはひとつも成し遂げられない苦しみ。〈落ちこぼれ〉のなかには当然〈女〉も入ってくる。
    ジョージの母エリザベスを主

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    2022年12月31日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    随分前に橋本福夫の訳で読んで、大好きだった本。上岡伸雄の新訳が出て、『リンカーンとさまよえる霊魂たち』の訳も良かったし、再読してみた。
    とてもいい訳だと思ったが、福田訳を何度も読んでいたので、どうしても違和感があった。特に美しい「紙玉」(上岡訳では「紙の玉」)の「ひねこびたリンゴ」という言葉が心に残っていたので「ごつごつしたリンゴ」には物足りなさを感じてしまった。
    しかし、全部読んでみると福田訳よりずっと分かりやすく、福田訳では読み飛ばしがちだった「狂信者」(福田訳では「信仰」)は思い込みを信仰に結びつける者の恐ろしさ、愚かさ、悲しさが伝わってきて、ラストのジェシーの哀れな姿は胸に迫るものがあ

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    2019年01月02日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    必読書としてよく挙げられてはいるものの、なかなか読む機会を得なかった『ワインズバーグ、オハイオ』、新訳が出た、ということですぐに入手した。
    で、読み始めたものの何やかやで途中でページが止まっていた、のだが、今朝、ふと再開したところ、とにかく止まらなくなってしまった。
    無数の人たちが次々に現れては短い物語の主人公となったり、脇役となったりする。当初は、だれに心を寄せればよいのか掴み切れず物語に入り込むことを難しく感じたていた。それも途中で手が止まっていた要因かと思う。
    ところが、なぜか、今日は読み始めたときに「これは、読める」と思った。そして案の定、一日をかけて、すべてを夢中で読んだ。読書には、

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    2018年09月17日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    19世紀のアメリカ中西部・オハイオ州の田舎町の人々を描く短篇集。
    冒頭「いびつな者たちの書」で語られるとおり、この作品で描かれるのは「孤独・不安・疎外感」を感じている「完璧でない者たち」である。
    いずれの話も個人的な葛藤を題材にしているものの、それらを主人公の視点からとりまとめることで、19世紀後半の中西部の雰囲気を上手く描いている。
    ここで語られた「いびつな者たち」が、まさしく現在のラストベルトの労働者階級(ヒルビリー)になっていったのだと思うと非常に興味深い。
    個人的には、「考え込む人」のいかにもウブなセス・リッチモンドに最も感情移入できた。
    アメリカの田舎町の鬱屈を描くという点で、時代も

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    2025年02月04日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    1919年に発表された小説だとは思えないほど現代的。
    頭に全く入ってこない話もいくつかあったが、「変人」、「神の力」、「品位」は特に良かった。

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    2022年09月07日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    人生が複雑怪奇であるということは真実だ。平凡な人生というものはありはしない。と、解き明かすような、アメリカの想像上のある町「ワイインズバーグ」に住む人々の暮らしや心模様の物語群でした。ひとつひとつの物語でもあるが、若い地方新聞記者ジョージ・ウィラードは聞き役でもあり、つなぎ役でもあり語り部です。

    1900年代の初めに書かれたアメリカ文学、ヘミングウェイやフォークナーに影響を与え、モダニズム文学のさきがけということです。この前に読んだ佐藤泰志『海炭市叙景』の下敷きのようなものということで読みました。

    なるほど、あるまちを創造、住人の人生模様を癖や性格などを素材にして物語るのは同じようです。で

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    2020年07月07日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    実はあまり期待していなかった。要するに成長というか変化。とてもクールな散文詩。あまり書かれている意味とかストーリーを読み取らずに、理解しようとせずに、スーパーフラットに読んで欲しい。正しいブコウスキー。

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    2019年11月23日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    すごい、綺麗事が一つもない。
    かといって救いがない訳ではない。

    決して人からはよく思われないし共感もされないような衝動、感情がつまっていた。
    個人的にはとても共感できた。
    全く関わりがない人々と町の話なのに親近感を覚える。
    ましてや違う国の話なのに。

    人に言えないような感情や行動を、実はみんな抱えているんじゃないか。

    田舎においても都会においても、何かに縛られている現代人にとってこの物語は自分自身の物語だと思う。

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    2019年08月06日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    なかなか読み終わらなかった。そんなに人は出てきてないのかもしれないけれど、たくさんいる気もする。架空のスモールタウンに暮らす人々のそれぞれの物語。オムニバス。
    地元紙の記者ジョージウィラードが町から旅立つ一編は場面は映画「アメリカングラフィティー」を想起させた。
    妙に印象的な本。

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    2019年04月26日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    オハイオ州ワインズバーグを舞台にした短編集のような長編。その街に住む一人の青年を中心に、街の人々の人生を物語る小説。色んな人生を温かく見つめるような作者の視線が、とても優しい気持ちにさせてくれるような。人の温かさに触れたくなったら、ぜひ。

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    2018年09月24日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    新潮社の名作新訳コレクション「Star Classics」の一冊として刊行された本書は、19世紀後半から20世紀前半を生きたアメリカ人作家、シャーウッド・アンダーソンによる長編作品である。全く知らなかった作家及び作品であるが、これが大変素晴らしい。

    20世紀のアメリカ文学を眺めたときに、我々は牧歌的なマーク・トウェインやO・ヘンリらの作風と、ヘミングウェイやその後のフォークナーに流れていく実存主義的な作風との間に断絶があることに気づく。シャーウッド・アンダーソンは、まさにその断絶を埋める世代の代表的作家である、というのがアメリカ文学史における位置づけなのだそうだ。

    本書では、オハイオ州の架

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    2018年09月23日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    19世紀後半(推定)
    オハイオ州ワインズバーグ――架空の地名――に暮らす人々の
    悲喜こもごもが、
    主に地元新聞の若き記者ジョージ・ウィラードの目線で描かれる
    掌短編連作集。
    地味だが奇妙な味わい深さがある。

    流行らなくなったホテルの経営に悩みつつ
    打開策を見いだせない女性(ジョージの母)、
    スキャンダルで職場を追放された元教諭、
    ほとんど診察しない医師、
    狂信的に神を愛す農場主と、それに反発する家族、
    流れ物の身の上話と教訓に深く感じ入る女児、
    心の平衡を失った牧師の強硬策、etc。

    興味深いのは、人間関係が密な昔の田舎町を舞台にしながら、
    本当は誰も共同体内の真実を知らない、
    といったス

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    2021年08月01日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    シャーウッド・アンダーソン、初めて読んだ。
    ヘミングウェイとか、カーヴァーとかに影響を与えた作家らしいのでとっても楽しみにしてた。

    すっかり長編小説と思ってたのだがなんとオムニバス形式の小説だった・・・。

    【オハイオ州のワインズバーグという架空の町を舞台にした22編の短編からなる】それぞれは独立した短編作品だが、登場人物が他の物語に再登場する相互リンクの要素があり、多くの作品に登場する青年、ジョージ・ウィラードが作品集全体の主人公格である。】

    ジョージ・ウィラードが不器用でいとおしい。
    この世代の小説、土着のもの多くないか?なんでだろう。
    次は長編読みたいなあ。

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    2019年03月12日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    オハイオ州にあるワインズバーグという架空の町を舞台にし、そこに住んだり関わったりしている人の日常的な話を短編として綴ったもの。よく登場する人物はいるが、一人だけに焦点を当てているのではない。かといってキャラクター小説というわけでもない。
    話に盛大なオチがあるわけではない。大事件が起きるわけでもない。日々過ごしている中で自分の中に突如現れる衝動とそれに対する行動に焦点を当てていると感じる。登場人物は町のなかでも変わり者扱いされている人も多く不可解な言動も多いが、突然沸き起こる感情や衝動、その行動の中には何か納得するものもあるから不思議。納得できないと読み手がおいてけぼりになることもあるが。

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    2019年01月19日