西川祐子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
天涯孤独の身の上でなければ、人は一たびは「家族」の中で暮らす、そしてそのうつわである「家」に住む、持ち家や借家の違いはあれ。戦前の明治民法下には「家」制度があり、「家」制度の桎梏との対決ということが個の自立を目標とする近代文学上の大きなテーマの一つであったし、そもそも人間の営みを描こうとする小説においては、生活の拠点、うつわである家が舞台となることが多かった。
しかし、家族はともかくとして、家族のいれものである「家」に着目した文学史という視点が面白い。本書では、明治から令和まiでに書かれた小説を取り上げ、「家族」について、家/家庭/個人という関係性が、またうつわである「家」について、い