青谷真未のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ☆お気に入りの文
「――荒坂君は、どうして人は本を読むんだと思いますか?」
唐突な問いかけに僕も足を止める。僕は通行人の邪魔にならないよう、道の端に寄りながら首を横に振った。わからない。
藤生は僕を見詰め、きっぱりとした口調で言った。「この世にある物語は、すべて予言の書になり得るからです」(P84 L16~P85 L3)
「書物の中でも特に物語に没頭するのはなぜだと思いますか?」
「え、面白い、から?」
僕自身はそうは思わないが、世間一般にはそうではないだろうか。しかし藤生は「そういう側面もありますが」と言って全面的に肯定しない。
「私は、幾通りもの経験をシミュレートできるからだと思っています」(p84 L8~12)
☆に対しての感想
普段は、大人しくて無口な藤生が本の話になると人が変わったかのように饒舌になるところが好き。能ある鷹は爪を隠す状態でカッコイイなと感じた。
樋崎先生の受け売りではあるけど、実際に起こり得る可能性があるからこそ、人の中で物語が生まれるんだなと考えた。
1つの物語で、誰かの生き方を経験することが出来る。読書はやっぱり、人生も心も豊かにしてくれる代表的なツールだと感じることが出来た。
だから、私は読書が好きだし、これからも続けていくと思う。 -
Posted by ブクログ
去年読んだ「読書嫌いのための図書室案内」の作者のものだが、評判もまずまずだし感じ良さげだったので買ってみた。
校庭に響いたマイクの音に心を奪われ衝動的に放送同好会を設立した巌(3年生)。
入学早々に入部届を出してきた涼音と白瀬(1年生)に、彼らに通学中の競馬実況を聴かれて入部してきた梓(2年生)。
素人ばかりの放送部の活動とともに4人それぞれの悩みが語られる章立てだが、一番良かったのは梓の話。
競馬を背景に親子の情を絡められると、私の好きなものと弱いもののミックスでもうダメだな。最後のリレーの実況は熱い。
この作者、前作でもそうだったが語り口に何となく理に落ちたところがあって、本作でも話の流れをそうしたいのだろうけど、あれをそんな風に受け取るか?というところがいくつか気になった。
巌のウジウジも白瀬のオドオドも涼音のイジイジもそこまでの意識過剰や刷り込みや囚われにならなくても良いのではないかと思えて、だけども、まあ、そういうところが高校生ってところかも知れないけどね。 -
Posted by ブクログ
近所の本屋で何気なく手にした本。帯に小島秀夫さんの「いとも簡単に”読書の真髄”を教えてくれる。なんとも素晴らしい小説だ。」とのコメントに興味を持ったので購入した。
読書に興味のない高校二年生の荒坂浩二さんが、楽な仕事と思って入った図書委員。そこで図書新聞の再刊を任されてしまい、同級生の読書好きの藤生蛍さんとともに紙面づくりに奔走する。読書感想文の執筆を先輩、同級生、先生の三人に依頼していくが、果たして無事に感想文を入手することができのか?というお話。
文芸書を読む楽しみ方にはいろいろな視点があり、その視点が人生をより豊かにしていく原動力になっている。
豊かな人生を送る糧としての読書を体感できる小説だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ伏線の張り方が凄かった。
確かに冒頭に「全て想定内」と言ってはいたが、主人公は分かっていたんだなと。
初恋相手が何故主人公のことを思い出せなかったのか、主人公が極端に多くを望まない理由などなど、段々と明かされる秘密に「ああ、だからこういう書き方していたんだな」と後からびっくりさせられること多数。
構成がうまい。
幻香師という職業も細やかに練られていて、素敵な職業に思えた。
実際はクレームも多いのだろうが。
自分が実際に身に着けているお守りの力を信じてみたい、そんな気にさせてくれる話だった。
そう、主人公が彼のことを「魔法使い」だと信じてきていたから、彼も救われたことが多々あった。
信じる力は、こちらが思っているより遥かに強大な力になるのだろう。
一つ一つのエピソードも本当にしっかり練られていて、どれも印象的。
そんな中、柊木なる人物の活躍が少ないなと思っていたら、最後の最後でやらかしてくれて「やっぱりな」と無駄のない人物配置に拍手。
こいつがまた平気で嘘を吐くえげつない野郎だったという。
利用するものは利用して、不必要になったらポイ捨て。
うん、でもこういうキャラがいてこそ、あの展開があってこそ、ヒーローの活躍が目立つ。
主人公が抱えていた最大の悩み。
それを解決するのはヒーローの純粋なる願いだったのが感動的で思わず泣けた。
「頼む、信じてくれ。魔法にかかってくれ」
この言葉で涙腺が大決壊。
ここまで彼が積み重ねてきたものがあったから余計にぐっと来た。
その魔法にかかった場面がまた非常に美しくて幻想的で綺麗で、とにかく印象的。
あのシーンを拝めただけでも読んだ甲斐はある。
だだ漏れだった恋心には決着がつかなかったが、主人公の幻香師の弟子としての修行はこれからも続く。
目指せ、稀代の幻香師!
これまで我慢してきた分、思う存分自分の幸せを願ってくれと切に思う。
この主人公、貧乏暮らしが長いせいで非常に逞しい。
オオバコもタンポポも彼女にかかれば立派な食材になる。
節約、野草料理はお手の物。
家事は無論バリバリこなす。
いい嫁になるぞ、これは。
金銭感覚麻痺しているお坊ちゃまなヒーローにはぴったりな相手だ。
末永くお幸せに、というのは早い祝福だろうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ村の揉め事をあくまで現実的な理論で解決へ導く綾乃。
母のことがあったとは言え、その観察眼恐るべし。
その理論も、各調停後のご当主と当事者の会話で非日常へとひっくり返るのは驚きつつも面白かったです。
人間の世界から、話が進むごとにじわりじわりと妖たちの世界へと誘われる、その匙加減が絶妙でした。
桜の話が特に素敵で泣けました。
ご当主家と綾乃の母との因縁が分かりそうで分からない、ラストでようやくその点の謎も明かされてすっきり。
そして、更なる暴露話でご当主の謎(本人にしてみれば綾乃にだけは明かされたくなかったであろう事実)も明らかになり、読者側にしてみれば何たる嬉しいサービスもあり、大団円で終わって本当によかったです。
これまで自分のことは二の次だった綾乃が、自分の幸せを第一にご当主と生きていってくれたらなと願っております。 -
Posted by ブクログ
スカイツリーを見上げる下町の片隅にある、架空の商店街の物語、第3弾。
知らない作家さんの名前も増えてきたが、今回もまた一段と、箱庭世界が充実していった。
自分のコレクションが増えていくような気持ち。
自営業と後継ぎという定番の物語、古くなってしまった業種、逆に商店街にはそぐわないようなおしゃれな店舗のことなど、品ぞろえ多数。
その中、シリーズで一番最初のお話だったカフェ・スルスのその後の様子を知ることができてよかった。
また、店の内情は一つもうかがわせず、舞台として使われている「アイスバイン」は、ちょっと異色で、文学的にして官能的である。
『明日の湯』が一番好きかも。
そして、お店をやっていくというのは、才能が必要なのだと改めて感じた。
自営業はみな「専門家」だ。今更ながら。
一軒目『カフェ スルス ~一年後~』 大島真寿美
スルス一周年記念のお祝いをすることになるが、招きウサギが勘違いで出雲大社でハワイアンでアニソンで!(意味不明)
二軒目『ブティックかずさ』越谷オサム
商店街のイベントステージに立つ悪魔?
三軒目『エステ・イン・アズサ』青谷真美
いくつになっても。
四軒目『明日の湯』秋山浩司
風呂屋の申し子のような名前を持つ三木家の長男。
祖母がいきなり銭湯を畳むと言い出し、急に納得できなくなる。
五軒目『ドイツ料理屋「アイスバイン」』島本理生
あの人は肉を食べない。
六軒目『多肉植物専門店「グリーンライフrei」』加藤千恵
母親の離婚で、男を信用できない10歳の少女の、冷めた発言がまたかわいい。
七軒目『赤城ミート』彩瀬まる
私と、もう一人の私。
別の才能を持ち、別の才能を持たない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大好きな明日町シリーズ、第三弾
一軒目「カフェ スルス~一年後~」大島真寿美
平均年齢60歳。老後の楽しみに開いたお店に咲く恋の花。
二軒目「ブティックかずさ」 越谷オサム
三十近いひきこもりがちのバンドマンの一人息子VS昭和の香りプンプンな「ブティックかずさ」を守り続けている父。
三軒目「エステ・イン・アズサ」青谷真未
お互いを思いやるお嫁さんと姑さん、なんて素敵なんだ。
四軒目「明日の湯」秋山浩司
銭湯の壁の絵にまつわるおばあちゃんの恋心に、心がぽかぽか♪。
がんばれ三太郎!
五軒目「ドイツ料理屋・アイスバイン」島本理生
ずっと好きでいたいからと、他の男性と結婚した主人公。
だから、その罰として義母をきちんと介護するんだなんて…
温かなポトフの匂いがするわりには、美味しそうに思えなかった。
お店のマスター目線で読みたかったかな。
六軒目「多肉植物専門店・グリーンライフrei」加藤千恵
多感な小学生の女の子と、憧れの叔母さん。
サボテンのとげがちょっぴりささる感じ。
七軒目「赤城ミート」彩瀬まる
彩瀬まるさんはとても好きで、特に楽しみにしてたんですが…
最後まで読めなかった。ふがいない…
特に好みだったのは二軒目
語りは「ブティックかずさ」の飼い猫・黒猫のオジーちゃん。(ちゃんをつけると妙ですが)
普段はほどよい距離でほっておいてくれと言いながら、
ぎくしゃくする親子の関係に、あれこれ気をもみ駆け回るオジーがかわいすぎる!
こんぺいとう商店街のすみっこにいる、片耳の折れた招きうさぎ。
今日もお鼻をひくひく、ぴょんぴょんぴょん。
できれば24店舗といわず、ずっと続いてほしいです。