小俣和一郎のレビュー一覧
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旧優生保護法の問題を調べる中で、優生学と精神医学の関係を論じた著作は少なく、手にとった書物である。近代精神医学は主に欧州で発展してきたが、その背景に欧州の思想の流れが背景にあることを説明。それは古代ギリシア時代にも遡るが、それはさておきその思想的流れが精神医学の生物学的流れと心理学的流れに影響していることを説明されている。精神医学から哲学に転じた人もおり、哲学と精神医学の関係は多少なりとも知っていたが、大きな流れで思想と精神医学の流れを解説された点が特徴である。優生学との関係ではナチスへの精神医学の関わりが著述されているのが著者ならではのものと思う。反精神医学に関しても述べられることが少ない中
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Posted by ブクログ
ネタバレ発達障害当事者として、ずっと「自分は異常だ」という自覚があった。しかしうまく言語化できず、周囲と馴染めず衝突し、迷惑をかけまくって孤立した。周囲からは「個性的だが普通の人」として「普通たれ」というプレッシャーがあったし、病識のない頃は自分で自分にも「普通」を強い、40年適応できず二次障害的な精神疾患も発症していた。
「異常」といわれるものは、時代や文化・見る方向などでいくらでも変化するというのは、経験から何となく知っていた。
本書では、いくつも具体的な事実を専門家の客観的な視点で語られていたため、しっかり納得できた。
何度も読み返したい。
自分や他人、思想や嗜好に対して「異常」などと軽々しく口 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「正常」と「異常」の境界線について現役の精神科医が論じた本。精神医学を「狂気を排除する」と主張したフーコーの説も批判的に検討されている。
正常、健康であることが常にポジティヴ、異常、不健康であることが常にネガティヴであるというのは今も昔も同じだが、その物差しは時代ごとに変わります。現代語の「マニア」の語源である古代ギリシア語の「マニアー」は「躁病」、さらにたどれば「預言者」という意味であること、「大宝律」に記述のある「癲狂」は誇大妄想、パラノイアのことであり、彼らは犯罪を犯しても刑罰を軽減される存在であることなど、面白い記述が多くある。他にも、「狂」という字の「王」はシャーマニズムの儀式 -
Posted by ブクログ
医学の立場から広く社会を見ての「異常」論。基本的に数が少ないものを異常として排除する差別のメカニズムであることが前半で述べられる。またこの本の白眉は、正常を追求していくと異常になるとか、正常と異常の裏腹の関係について述べている部分だ。正常と異常を対立するものとする弊害を取り除くためにグラデーションで説明するモデル(たとえばセクシュアル・マイノリティについての説明などでは頻繁に用いられる)だと、結局ものごとに序列がついて排除の対象になるので、メビウスの輪のように片方の極からもう片方の極へいつのまにか行ってしまうようなモデルで考えよう、というところは、まだ説明としては煮詰まっていないけれども、そう