決して24歳の著者の成功物語ではない。
ごく普通の青年が、何の因果かオバマ大統領のスピーチライターになった。
もちろん偶然ではないし、本人の努力や才能や運もあったと思う。
しかし本書で書かれている内容はとても控え目で、等身大の24歳の青年が、そのままの目線で自らの仕事について描いている。
決してオバ
...続きを読むマ大統領を賛美することはない。
オバマ大統領も人間だ。イライラもするし、失敗もする。
しかしさすが黒人初の大統領だけあって、やっぱり普通じゃない。
大統領のスピーチライターはホワイトハウス内で何人もいて、彼はあくまで下っ端ライターだ。
書いたスピーチは何度となく書き直され、ほとんど褒められたことはない。
大統領と直接に話をしたのも、これだけ近くで数年間も働きながら、ほんの数回のようだ。(当然だ)
そんな彼のモチベーションは、決して権力欲でもなく、自分のキャリアアップのためではない。
当然にそういう下心も多少はあることを本書では包み隠さずに書いている。
しかし、やっぱりオバマの側近として、綺麗ごとではなく、
少しでもより良い世の中にするために働きたいと思っているのだ。
アメリカの中で不平等を無くしたい。
オバマが大統領に選出される前、イチ地方議員だった時のスピーチに触れそれに感動し、オバマ支援のために政治の世界に入りだす。
当時は「Change – Yes We Can!」がちょうど世間のツボにはまった時だ。
今までの保守的な考え方でなく、世界を変えていかねばならない。
過去のやり方で悪い面は変えていかなければいけない。
そういう考えに賛同した人々がオバマ支援に乗り出したのだ。
そして著者もその一人だったのだ。(白人であるにも関わらず)
彼のような人たちに、日が当たることは決してない。
しかし彼らがいたから、世界は少しだけ良い方向に向かって行けた。(と信じられる)
ゾーイ・リンのエピソードは、オバマの功績を端的に表している。
世界を変えるのは、年寄りではない。
そして大統領でもない。やはり若者なのだ。
それもごくごく普通の若者。
会社も同じだ。彼らのハートに火を点けることがものすごく大事なことなのだ。
そんなほっこりとする等身大の若者の物語だった。
(2020/5/31)