副題の<猫又伝奇集>をみて、妖怪の猫又かと思って読み始めた。妖怪らしきものも時々登場はするものの、この本のなかの猫又は架空の地名であり、冒頭に収められた『猫又拾遺』は、『遠野物語』形式の掌編集。ほかの短編もすべてこの架空の土地が舞台であり、それぞれの物語は登場人物やエピソードがリンクしている。巻末には自作解題やインタビューがまとめられていて、作中に散りばめられている方言の半分以上は創作であると語られている。一方で実在した(する)人名や地名なども多用されており、虚実ないまぜの語りを目で聴いている気分になる読後感だった。