補完食の考え方自体はこれから少しずつ広まっていくのかなという気がするが、補完食という言葉は離乳食と対比させるようなものではないような気がした。つまり「離乳食よりも補完食がいい」というようなことではなく「離乳食は、補完食としての役割を果たせるようやり方を考えましょう」というのが、補完食に対する正しいス
...続きを読むタンスではないだろうか。
本書では「補完食も離乳食も大きな道すじは実は同じ」と言っているが、その言い方自体や本書のタイトルが、そもそも補完食を離乳食とは異なるものとして考えているし、離乳食と補完食の対比のようなこともしている。
筆者が親切にわかりやすくまとめてくれようとしているのは感じるのだが、商業的な理由で「補完食」のインパクトを押し出したかったのか。そのせいでどうも筋が通っていないというか、分かりづらくなっているように感じた。
補完食という言葉を全面に押し出している割に、「補完食とは」の説明がどうもしっくりこない。
「離乳食は母乳・ミルクを食事に置き換えていくイメージ、補完食は母乳・ミルクを維持したまま追加する食事」とのことだが、それなら離乳食の方が栄養素が充実しているということになるのでは?
それなのに、補完食の場合は栄養素が大事だから、離乳食でよくある10倍粥でなく5倍粥からスタート、とか、1日1回からでなくいきなり2回からスタート、などの説明があり、補完食は離乳食よりも栄養素が充実しているということだ。
本書の後半というか大部分で述べられている栄養素の説明や実践方法などは、補完食のやり方というよりも、「現在一般的になっている離乳食メソッドへの改善案」なのではないか。それを「(離乳食とは別の)補完食のやり方」としてアピールしているように感じた。
「補完食のやり方」でなく「離乳食をこういう考え方に則って見直しましょう」としてくれた方が、わかりやすいし取り入れやすいと思う。
補完食の基本的な考え方は、「母乳(ミルク)は2歳まで減らさずにあげつづけましょう、それで不足する栄養素を補完食で補いましょう」ということだと理解した。本書でもそのような記載がある。
つまり、母乳だけでいくと不足する栄養素があるので、そこをしっかりケアしましょう(これも既存の離乳食メソッドへの指摘)ということが、補完食の考え方のキモなのではないか。母乳を2歳まであげ続ける人にとっては、補完食(として述べられている知識)は非常に有益な情報がまとめられていると思う。
なお「ミルク育児の場合も母乳と同じ進め方でよい」と述べられていたが、本書の大部分は、母乳前提の話になっていると感じた。ミルクは母乳で摂れない栄養素が補われているので、基本的な部分の考え方は共有できるが、細かい実践論は事情が違う。
全体的に否定的な感想になってしまったが、本書の内容自体は有用な部分がたくさんあると思う。「補完食ってどんなんかな!」という読み方でなく、離乳食メソッドの一つとして採用する(離乳食は自分の考え方に合う一冊の本に従うとやりやすいと思うので)か、または離乳食の栄養素についての考え方の参考として読むのには良い本だと思う。