カロリン・エムケのレビュー一覧

  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

    Posted by ブクログ

    強制収容所の生還者、捕虜、強姦、虐待など過酷な体験からのサバイバーが自らの体験を言葉にする大変さ、言葉の重さ、沈黙に触れている。話の文脈もバラバラだったり、言葉に詰まりながらの語りは当たり前で、彼らとそうした体験を持たない聴き手との断絶を意識しながら、彼らの傍らにいて切れ切れの言葉を聴いていく、聴き手の姿勢が問われているし、そこに著者は希望を見出そうともしていると思いました。

    0
    2024年02月13日
  • 憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

    Posted by ブクログ

    全体的に当たり前のことを書いているだけなんだけど、具体性と詳細さで細やかな部分まで主張を伝えてくる。当たり前のことに詳細に気づくことの難しさを感じるし、そういうことをきめ細やかに内省させてくれる。そして自分で気づき続けなくてはならないことを教えられる。のだが、こういう本を読む人にはたぶん少なからずその土壌がある。この本に手が伸びない人に、どうやって伝えていくかを考えると気が遠くなるとも思った。
    イスラム教徒を差別することがISの理想(ある限られたイスラム教徒のみを認める過激な信条、ヨーロッパの二分化)を叶える方向に作用するという説明はなるほどと思った。
    多様性のなかにいると落ち着く。それはつま

    0
    2022年10月12日
  • 憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ドイツクラウスニッツに到着した難民達のバス、アメリカニューヨーク州スタテンアイランドで脱税たばこを売っていたと疑われて警官に取り囲まれたエリックガーナー、共に一方的な他者の憎しみが描かれている。バスの中の難民一人一人の境遇があるにも関わらずな難民として不可視な存在として全てを排除しようとしているのである。かたや黒人というだけで常に恐怖の一旦として疑われ、警察に取り囲まれ命を落としてしまった彼は本当に言葉で言い表すことができない。
    偏った見方をしてしまうアメリカ国内の歴史もあるのだと思うが、現代でまだ起こりうる、起こり続けているこれらの問題に対して個人個人がよく考えて行動をしていくしかないのかな

    0
    2022年06月19日
  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

    Posted by ブクログ

    それは言葉にできるからとカロリン・エムケは信じる。とても言葉にできない体験も、時間や聞く人への信頼などによって言葉になることもある。聞くこと、伝えることの大切さを説いて素晴らしい。他者の苦しみ、故郷などの体験から語られる文章にも感銘を受けた。彼女の弱者に向ける視線と本質を見極め言葉にする力にこれからも期待します。

    0
    2021年01月27日
  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

    Posted by ブクログ

    2019年?冊目。(最近レビュー執筆怠り数え忘れた...)

    『憎しみに抗って──不純なものへの賛歌』から注目していたジャーナリスト、カロリン・エムケの新刊(原書の出版は2013年で、『憎しみに抗って』よりも前)。

    年末年始、他に読みたい本がたくさんあるけれど、これは連休中にもう一度読み返さなければいけない...今年の自分にとって、本当に大事なテーマで、消化して整理するにはまだまだ時間がかかる。現段階の雑感だけでも言葉にしておきたい。

    ...

    「言葉にし得ない体験」をめぐる考察。

    極度の暴力や不正に遭った人が失った言葉に対して、どんな言葉も及ばず「それ」としか形容できなくなってしまった

    0
    2019年12月28日
  • 憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

    Posted by ブクログ

    世に蔓延る差別に対する指南書
    多様性なんて言葉が流行りとして使われてるうちはダメなんだろうなぁ
    そして皆にこの本をお勧めしたいが、まず読むのが(内容的にも)面倒くさいと感じるであろうと察するので、まずはその面倒くささを取っ払う活動しようっと

    0
    2018年05月05日
  • 憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

    Posted by ブクログ

    2018年18冊目。(再読)

    〉2018年17冊目。
    〉読み始めてすぐに心臓がばくばくし、読み終えてすぐに「もう一度読まねば」と急き立てられた。

    の通り、初読の直後にもう一度読んだ。思うところが多すぎて、それでもまだうまくまとまらない。長く付き合うことになる一冊。
    ==========
    2018年17冊目。

    読み始めてすぐに心臓がばくばくし、読み終えてすぐに「もう一度読まねば」と急き立てられた。
    近年悶々と考えていたことが、物凄い密度の言葉で語られていた。
    言葉の力が強過ぎて、「陶酔して盲目にならぬよう、気をつけて読まねば」とも思うくらいに。

    流入する難民、異なる人種、性的マイノリティ

    0
    2018年03月25日
  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

    Posted by ブクログ

    トラウマを抱える人の語れなさを考える上で、学ぶべきことが多かった。語れないのか、あるいは語ろうとしないのか、当の本人から聞く側や社会の側へ目を向けて考える視点を自分も意識したいと改めて思った。聞くことの責任と、聞いたことを語る責任が印象的であり、本書にあるように、見聞きしたことを「言葉で言い表せない」という表現で片付けてしまわぬようにしたい。

    0
    2025年10月01日
  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

    Posted by ブクログ

    ホロコーストやユーゴの集団強姦などの非人道的な暴行・扱いを受けた人間が、なぜ自分の身に起きた出来事を話せないのか。
    常軌を逸した出来事を経験したからこそ、それを首尾一貫して説明できることは難しい。被害者の供述が曖昧だったり支離滅裂だった時、決してそれはその被害者の記憶力や説明力が問題なのではなく、ただその人の身に起こった出来事が異常だっただけである、と言う彼女の主張が非常に印象的だった。
    とても心の優しい人なんだろうなと思った。
    訳も結構読みやすい。

    0
    2023年02月13日
  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

    Posted by ブクログ

    言語化することは、その治療的側面からとても深い意義がある。その人の内面の課題を解決するためには、内面を言語化するしか方法がないと私は思っている。
    カウンセリングにしろ、トラウマ治療にしろ、その基本は「傾聴」することだ。すべてそこから始まる。ナラティブセラピーしかり、メンタライジングしかり。発達の未熟さから言語化が難しい幼児は「表現」でその代替行為をする。絵を描いたり、工作をしたり、箱庭療法なんかもその一つだ。言語にするなり形にして表すなりすることで、内面にあるイメージ、感覚、感情を整理し、内面を客観的にして初めて自分自身の状況を把握できるのだろう。「治療」というが、つまるところ、自分自身で自分

    0
    2022年07月23日
  • イエスの意味はイエス、それから…

    Posted by ブクログ

    旧西ドイツに生まれた著者、カロリン・エムケは、日本ではまだメジャーではないジャーナリストだ。
    現在は議論の場を設けたり、幅広いテーマで著作活動を行なっており、精力的な活動を行なっているという。
    彼女、そして本書に出会えたことは、大変良い出会いであった。

    日々、私には何ができるのだろう、とか、なんとなくの違和感とか、不快とは言えないけれど、モヤっとすることがある。
    それは会社での会話だったり、新聞の投書だったり色々なのだが、こんなことが一例としてあげられる。
    ある日の新聞のオピニオン欄で、女性の生理用品を買えないことについて、識者や読者の意見が載っていた。
    読者である年配の男性は、たかが数百円

    0
    2021年06月13日
  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

    Posted by ブクログ

     強制収容所での拷問、戦時中の集団強姦など、悲惨な体験をした被害者たちの話を聞いてきた著者。彼らが「それ」としか呼ぶことができない体験を言葉にしていくことの意義や、その過程で聞き手側に望まれる態度について論じるエッセイ集。後半は、故郷についてや、旅をすることについても語っている。

     印象に残った部分を抜粋。

    -----
     こういった理解不能な世界は、子供たちとは違った形で大人たちを脅かす。「残虐の規範」に直面したとき、誰よりもまず打撃を受けるのは大人たちだ。別の規範、別の秩序のもとで育ってきた彼らは、新たな規範を理解することができないのだ。(P.35)
    -----

     アウシュヴィッツでの

    0
    2020年01月03日
  • 憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

    Posted by ブクログ

    自分が傷つけられたことには意識的である。反対に人を傷つけたことには、気がついていないのだろう。多分、これまで、何気なく人を傷つけきたのだろう。
    多数派である限り気がつくことができない。さまざまな人がいる。よく対話をすることなくして、安易な思い込みでの発言や、軽はずみな発言は控えなければならない。
    自分が自分らしく自由にいられるためには、ひとが傷つかないように気遣う必要がある。

    0
    2019年02月16日
  • 憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    やっと読めた。
    半分くらいから、頭に入ってこなくてつらかった。
    なぜだろう...
    -----
    憎しみに憎しみで返すのでなく、
    なぜそうなっているのか前提や状況に知ろうとすること。

    人種、マイノリティ差別がテーマだけど、
    日々の周りの人への憎しみへの心構えとしても参考になるもの

    0
    2023年12月23日
  • 憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

    Posted by ブクログ

    差別について、違う表現方法で同じことが繰り返し繰り返し書かれている。
    ジャーナリストであり、同性愛者である作者。「駅で拍手をしたことが一度もなくても、私は軽蔑される人間たちのひとりなのである。私の愛し方ゆえに。考え方、書き方ゆえに」という一文が印象に残った。

    0
    2023年07月18日