いろいろと考えさせられるエッセンスがギュッと詰まったとてもよく勉強になる本だった。竹内好のアジア/日本論を受けて、‘アジアを西洋列強から救う日本’というナルシシズムの纏わりついたアジア主義者ではなく、また従来の‘アジア主義’の系譜に連なるような人も避け、その他の積極的にアジアの声を聞き、コミットし変
...続きを読む革・改革しようとした人たち(福沢諭吉・勝海舟・尾崎秀実・矢内原忠雄など)の矛盾・葛藤も含めた言説を、当時のアジア各国とどのような相互作用があったのかという話とともに、19世紀後半から冷戦後までを紹介しています。やや引っかかってしまったのが‘アジア主義’という言葉で、竹内の一応の定義によると、それは実質内容を備えた客観的に限定できる‘思想’ではなく状況に応じて変化する傾向性ともいうべき、アジア主義と呼ぶ以外に呼びようのない‘心的ムード’で少なくともアジア諸国の連帯の指向を内包している、とあるのだけれど、著者はどう意味づけして本書で著者が取材した人物がどう差別化されるのかという点が、序章で少々混乱してしまった。。。あと甲申政変・甲午改革の失敗は、本書が言うように確かに日本側からすれば挫折であり脱亜の契機となったけれど、朝鮮側からすれば日本に依存した少数のエリートによる国民的合意の無い、上からの改革運動から脱皮して大衆化したより啓蒙主義的な独立協会の運動に発展したという肯定的な側面は否定できないと思うのだけれど。‘相互作用’や‘絡まりあい’の範囲を広げていくと、なかなかなかキリが無いと思うし、個人的に多分やや朝鮮贔屓なのでこういうところが気になったりもするのかもしれないけれど。