リーマンショック時にブッシュ政権でニューヨーク連銀総裁、オバマ政権では財務長官として対応にあたった。リーマンショック時には躊躇ない銀行の救済とストレステスト、財政出動を推し進め、危機後には金融界の基盤強化に取り組んだ。ブッシュにせよオバマにせよ、政治任用において経済官僚の人事を間違わず、またその忠告を素直に聞き入れるのは意外だった。一方、財務長官時代の議会との折衝では議員に対する批判が目立ち、政治家は経済分野において日本のレベルとそう変わりない輩が跋扈しているのがよく分かる。表では投資銀行を批判しながら、裏では真逆の行動を取っている議員さえいた。しかしその中でも学術界、官僚のレベルではバーナンキFRB議長、ガイトナー財務長官、サマーズ国家経済会議委員長とまともな人材ばかりが重要ポストで任用されていた。オバマ大統領もその中で舵取りを間違わず行っていたが、就任当初はリーマンショック対応が経済における最重要課題ではないとの発言(危機対応が最大の功績になるとの助言に、それだけでは不十分だとの返答)もあり、当時はマクロ経済に関して十分な知識を持っていなかったように思われる。その中でも有用な人材を任用できたアメリカのシステムは非常に力強い。本書の記述を見る限り学者、官僚間の相互評価がうまく行っており、政治任用に関して有能な人が有能な人を推薦するという正のサイクルが働いているように見える。アメリカはコネ社会と言われることがあるがこれはまさにコネが最適な人事システムとして働いている例だろう。
一方でオバマ政権下の外交政策が頓珍漢であったことも事実で、分野によって官僚のレベルは大きく違うようである。当初、日本の安倍政権に対する評価が的外れであたかも極右政権であるかのように警戒してあたっており、一方の明白な権威主義国家である中国に対する親和的な姿勢とは整合性が取れていなかった。また、シリアに対する弱腰が後の惨劇を生んだとの評価はアサド政権が倒れて以降、明確化してきている。