「ストーカー」というタイトルだと、好きな相手につきまとって最悪なときには殺人事件に発展してしまうあのストーカーを連想しがちだ。しかし、本書はそのストーカーではない、れっきとしたSF小説だ。
何が起きるのかわからない謎の領域であるゾーン。来訪者があったのち、地球に残された謎である。
そのゾーンの謎を解明するため、ゾーンに不法侵入して遺物を命懸けで持ち出すストーカーたちがいる。
こういう設定で物語は進む。この作品においてのストーカーとはそういう意味だったのか。
SF小説にはよくあるが、設定を読み解くまでは何のことかわからない言葉に戸惑う。この作品では、来訪者であったりストーカーであったりだ。
そういう言葉が何を指しているのかわかれば、後は物語の世界に浸ることが出来る。それがわかるまでの、探り探りしながら読むところがSF小説の読みにくいところだ。
この作品には謎が多い。
来訪者とは一体何なのか、何が起きたのかわからないままだし、ゾーンの正体も不明なままだ。
そのためこの来訪者を普通に異星人の襲来と捉えてもいいし、何がしかの天変地異と捉えてもいいかもしれない。とてつもない規模噴火や洪水だったり、隕石が落ちてきたとか惑星が衝突したとか。
とにかく、人智の及ばない異常な大事件が起きたあとの人間の物語ということだ。
人間は自分たちの力を過信し、どんなことも予測出来、何とか出来ると思いがちだ。それでも人間の力では地震も予測出来ないし、噴火も止められない。それどころか年を追うごとに異常気象は加速している。
人間が知り得ることなど、たかがしれている。
何でもわかった気でいるため、理解の及ばないことが起きたときは目も当てられない。
もっと謙虚でいなければいけないなと反省したりする読書だった。