S・ミルグラムのレビュー一覧
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ミルグラムの社会実験とそれにおける分析をまとめたもの。実験概要は、被験者は先生役を与えられ、実験者である指導役に、学習者が問題を間違えるごとに電流を流すよう指示される。また間違える度に一段階ずつ電流のボルトを上げるよう指示され、電流のショックに呻く学習者にどこまで強い電流を流し続けるか?というもの。
実験は色々なパターンを変えて行われたが、概ねの結果としては多くの人は実験者の指示に逆らえず最高レベルまで電流を流してしまうということだった。被験者は特別サディスティックな性質を持っているわけではなく、至って普通の人たちである。それでも指示されると服従してしまう、という怖い結果だった。
そ -
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話に聞くだけではどこまで信用できるのか分からないような印象を持っていた実験だが、こうして細部を知るとなかなか説得力がある。でもなお、この実験での「服従」の度合いが驚くべきものではあるとは言え、その絶対的な水準からあまり多くを汲み取るのも勇み足である気がある。巻末の山形解説もその点、面白い。引き換え、いろいろ条件を変えて服従度合いへの影響を探るあたりは興味深い。
また、ミルグラムがベトナム戦争でのソンミ村虐殺などに極めて強い問題意識を持っていたこともはじめて知った。山形氏によれば、それがミルグラムの視野を狭めているということで、たしかにその側面は否定できないが、単に心理学の実験というだけではな -
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見ず知らずの人に「殴って下さい。」と言われて実際に手を出せる人はまずいない。
だが、実験室を用意し、実験参加の求人広告に応募してもらい、白衣の指導者が参加者に実験の概要を説明し、
簡単なテストに間違える仕掛け人と電撃発生装置を用意したならば、その電撃の強さを最大値まで設定できる人間は多い。
本書は各所で引用されるミルグラムの服従実験を、スタンレー・ミルグラム自身が語る一冊。
驚くような新事実が載っているわけではないが。
実験室の様子、与えられる役割、種々の条件設定、結果データの数値など、引用では省かれる詳細がよくわかる。
だが、本家だからといって実験に対する考察が十分にされているとは言い難 -
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世紀の実験論稿。社会性生物である人間のシステムは、権威への服従と同調を基礎に持つ。実験は、服従への抵抗を確かめるため、道義に反する、他者への電撃行為を、仕事だということで従わせるもの。抵抗し、電撃を与えなくなるまでが服従とする。様々な手法を取り、完璧な実験を仕上げる。成果は、上々だ。
だが、抜けがある。この実験は、予め、身体に影響が無いと通知されたものだ。被験者は、やや懐疑的になりながらも、自分の仕事をしたに過ぎない。自らの意思を超越し、権威に服従したのではない。この結果が本著が提起するような、アイヒマンのユダヤホロコーストやベトナム戦争での虐殺の免罪符には決してならない。考えても見てほしい -
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「道徳的に正しい行動を選んだとはいえ、被験者は自分が引き起こした社会的秩序の破壊に困惑したままであり、自分が支援を約束した目的を放棄したという感覚を捨て去ることはできない。」
人がいかに権威に服従するのかについて、実験をもとに考察された本。その実験は、参加者が学習者に電撃を流すように依頼されるものである。”強い電撃を流す事は非人道的であり、そのような電流を流すのはナチスやサディストしかいない”という考えを覆し、”普通の人”が抗議する学習者に電撃を流した。特に、11章以降の実験の解説からがさらに面白い。
親が子に何か命令するとき、それは二つの観点から正当性の根拠が発生する。1つは、道徳。もう -
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そう言われてみれば、組織に属している限りはその安寧と引き換えに、何かを預けている気がしないでもない。
それは、主体性だったりするのかもしれない。
そりゃそうだ。会社員がいちいち会社の方針を批判したところで、何も変わらないし、仕事が進まない。
だったらサラリーマンなんかやめて、起業すればいい。
服従なんてまっぴらごめんだわ。
ん?
えー⁈
めんどくぜーな。それ。
ちゃうちゃう。
権威が正しい権威たるように、ちゃんと“服従”できるように、組織員がそれぞれの役割に応じて、主体的に、そして有機的に機能することこそが重要なんではないか、それが組織を健全にし、ナチスやその他もろもろの悪の組織に陥らな