S・ミルグラムのレビュー一覧
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購入済み
論文形式でさまざまな服従に関する実験とその結果が書いてあります。
実験結果には疑問符が付いているものの、考え方などは確かにと納得させられる内容だと思います。 -
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ネタバレ個人の道徳観の力は、社会的な神話で思われているほど強いものではないっていう本。
この有名な実験について大枠しか知らなかったが、人や場所や状況等のパターンを変えてみたり、被験者の実験時の言動が細かく書いてあったりと、ミルグラム実験の詳細が知れる。
尚且つ元々の原文が良いのか訳者が良いのか最後まで飽きずに読める。
p.22〜p.23
道徳律の中で「汝、殺すなかれ」といった能書きはずいぶん高い位置を占めるが、人間の心理構造の中では、それに匹敵するほど不動の地位を占めているわけではない。新聞の見出しがちょっと変わり、徴兵局から電話があって、肩モールつき制服の人物から命令されるだけで、人々は -
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実験のレポートと考察が丁寧に書かれていて非常に読みやすかった。
人が権威に服従するのは責任を権威のあるものに背負わせているからだと思う。
責任の及ばない範囲で人は行動している。
それが社会の仕組みなのかなと。
逆に自由になりたければ責任を負わなければならない。(起業して社長になるとか)
本編も面白かったけど、訳者の考察がとても良かった。
実験の前提と本質に疑問をなげかけている。
例えば、実験では人は性善説に基づいて行動している(根底には人を傷つけたくない心理がある)としているが、訳者は一般的にはそれは成り立つのか疑問を呈している。戦争なんかでは、略奪が目的だったりと、、、
作者のスタン -
Posted by ブクログ
ミルグラムの電気ショック実験。
これは、ナチスのアイヒマン実験とも呼ばれ、権威者による命令が個人を従属させ、殺人のような重大な結果をもたらしかねないことをシミュレーションしたもの。
解答者(役者)、被験者、指示者において、
ある単語の問題に対し、回答者が不正解だった場合、その被験者は低い電圧から徐々に大きいで電圧(疑似)電気ショックを与えていく経緯について分析した実験。
それぞれが置かれた立場、ヒエラルキー、権威によってどのような結果となる傾向なのか分析した実験。
『典型的な兵士が殺すのは殺せと言われたからで、かれは命令に従うのが自分の義務だと心得ている。被害者に電撃を加える行動は破壊的な -
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心理学の文献ではしばしば登場する「ミルグラム実験」について、ミルグラム教授ご本人が書かれた報告書。
「アイヒマン実験」とも呼ばれるこの本は2008年に新訳として再版されるまでは約10年は絶版だったそうだ。
2012年には文庫化されたが、357ページで1300円という価格となっている。高すぎるのではと思い読み始めたら、疑念はすぐに払拭された。実験の全貌、ミルグラム教授の分析等、事細かく書かれている。被験者を募集するための広告、役割や条件を変えての全18種類の実験内容、被験者のナマの声等、読み応えは充分。
更によかったのが訳者山形氏による「訳者あとがき」である。通常のあとがきに加え、「蛇足 服従 -
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通称「アイヒマン実験」の報告にあたる本著。ここで得られた実験報告は人は権威に対して服従する生き物であるという、目を背けたくなるような結果だったということ。厳密にいえば、この実験で行われた手法の正確さについて異論等もあるようだが、いずれにせよ確実なことは、権威という目に見えないパワーの強大さ。そして人間がそれに対して、社会システムの構造上指示に従わざるを得ないところにいるという点は否定しにくいのではないだろうか。
日々、家庭、学校、会社、社会・・・あらゆる生活の場に権威は存在しており、その権威に服従して生きている。こう考えると、自分はさも奴隷かのように感じてしまうが、そうではなくて視点を変え -
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このアイヒマン実験について著者のミルグラムは、参加者の良心と権威に対する服従についての葛藤の場として見ている。一方で日本語訳者は、参加者の社会に対する信頼の度合いと、なにがより高位の規範であるかについての判断の場として見ている。これら実験に対する向き合い方の違いは、人の理性について理解しようとする際の方向性の違いだけでなく、アウシュビッツの存在がそれぞれに与えた衝撃の受け止め方の違いのように感じた。
前者の考え方の落とし穴は、人の良心を信じる者がアイヒマン実験の結果を知ったときに、その結果を人の性悪説の証明であるかのように感じ、実験のプロセスを含めて強い拒否反応を示すことにある。また後者の考え -
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ミルグラム実験についての詳細な報告。長らく読み継がれてきた報告ですが、新訳&文庫落ちにより手に取りやすくなりました。
ミルグラム実験は非常に著名な実験でありご存じの方も多いと思いますが、そのうえでなお本書は必読。実験デザイン、結果、解釈という繰り返しにもかかわらず、一気に読み進めてしまう力を持ちます。
権威の中に位置づけられた人間がいかに容易く非人道的行為を為し得るか、そしてそのような行為を為したことをいかにして弁護するか。この二点には衝撃を受けることになるでしょう。
個人的には、かつてハンナ・アーレントが述べた「悪の陳腐さ」を想起しました(順番としてはアーレントが先なのですが)。
なお -
Posted by ブクログ
ミルグラムのこの実験の内容は知っていたものの、いろんな条件を変更して行っていたことは初めて知ったので読んでいて楽しかった。
多くの人は権威に服従して、残虐な行為をも行ってしまう。だから個人は主体性をもって権威を疑い、安易な服従を避けることが重要という結論。エージェント状態やオートマトンの理論はとても興味深いものだった。
だが、ナチスの事件について、ただの1個人が果たして政府に不服従をできるのかというのは疑問に思った。これについては訳者あとがきに非現実だと述べられていて安心した。中でも訳者の解釈として、権威が権威となるために道徳的チェックが入るから権威への服従は信頼の裏返しというのは共感でき -
Posted by ブクログ
ミルグラム実験については名前しか知らなかったが、近所の書店のフェアで表に出ていて気になったので購入して読んでみた。気持ちの良い話ではないが、とても興味深くて自分の場合はどうだろうかと考えさせられる本だった。
権威に服従するモードに入ると普段のその人がするとは思えないような残酷な行為でも命令に従って実行できてしまうという心理学実験。権威に服従するというとナチスなどを思い浮かべやすいが、学校で起きるいじめとかでも同じようなことが起きていると思うと、明確な命令がなくても容易に服従してしまうのではないかという気がする。訳者あとがきの批判にあったように人間は残虐性を社会規範という権威によって抑えるよう -
Posted by ブクログ
異常に興味深い。
組織で言われる主体性が必要だ云々という話を前提からひっくり返す話でもある。
そもそも人は権威に従属するものであり、そういった進化を辿ってきている。
それは進化の過程で必須の要素であり、進化を経て強化された。
自律モードと、組織モードがあり、組織モードを「エージェント状態」と言い、
自身の価値観に関わらず盲信的に権威に従ってしまう状態で、これは社会的な動物としての生存有利性から発生していると。
一方道徳心・良心などといった個人に属するもの(と筆者はいい、訳者はそれも社会的な権威であるというし、それが正しいと思う)は、2次的なものになると。
訳者が権威をそもそも定義していな