石光真清のレビュー一覧
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ロシア革命後に陸軍嘱託としてブラゴヴェシチェンスクおよびアムール川を挟んだ対岸の黒河に特務機関を設置して情報収集に当たった時期について書いたもの(本文に特務機関という語はない)。
ボルシェビキの地域代表者や、反革命を謳う元の市長やコザック部隊、ドイツ=オーストリア(独墺)軍の捕虜から転じて赤軍に協力する部隊、独墺からの独立運動を行うチェコスロバキア兵、といった勢力が割拠するシベリアが描かれる。
長年にわたってブラゴヴェシチェンスクに在住していた日本人たちの自警団は陸軍から武器の援助を受けていたため、反革命勢力から自警の範囲を越えた協力を求められ、赤軍に包囲された戦闘で犠牲者を出す。
石光は -
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・東京に留まることを家族から望まれながら幾度も大陸へ「帰って」いく真清の姿を鏡として、自分は家族を幸せにできているのか自問せずにいられない。食べていくに困らない給料をもらい、平日は子供が寝る前に帰宅し、週末はどこか少し遠出をして好奇心を満たす、そんな平穏な日々を過ごせている幸せを自覚した。
・シベリア出兵の政策的欠陥についても考えさせられる。領土拡張を目的とする出兵であったなら戦線を広げすぎたし、戦力の逐次投入は避けるべきであった。連合国との国際協調及び革命思想の伝播阻止を目的とするなら、ロシア反革命勢力を一貫して支援し、連合国の不信を惹起する過剰戦力の投入は避けるべきだった。そもそも、英 -
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明治元年熊本に生まれ昭和17年に没した元陸軍軍人の残した手記。明治維新から敗戦までの期間の短さと明治人の気概が伝わってくる一冊は名著の予感。
全四巻中の一冊。あまり前知識なく読み始める。ロシア関係の諜報活動に従事した方らしい。
少年時代を故郷熊本で過ごし神風連の乱や西南戦争を体験、その後幼年学校から陸軍軍人となり日清戦争に従事、対露諜報活動の必要性を痛感しロシアに渡るまでが第一巻。
作家でない一般人の作品ではあるが文章に情緒が感じられる。個人の資質かはたまた漢文に精通した明治人ならではなのか。
日本の歴史の中で明治維新ほど日本人の生活もメンタリティも変えた事件はなかっただろう。激動の中 -
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日清戦争後にロシアに対する危機感を持った石光が対露諜報を志してシベリアに渡ってからの話。
義和団事件の余波からブラゴヴェシチェンスクでの清国人大虐殺(アムール川事件)を目撃し、満州への進出を本格化させたロシア軍を追うべく北満に侵入する。
あるときは馬賊の仲間になり、あるときはロシア軍の出入り業者になる。そして現地にいた日本人女性を助けたり、助けられたり。
すごい波乱万丈。あまりにも劇的なので実話なのか怪しく思わないでもない(本人の複数の手記で一貫していない部分もあるし)。本書の原型は戦中に公刊されているので、脚色が必要だったのかなと思ったりもする。
ともかく、ただただ圧倒される。
日露開戦で帰 -
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ノンフィクションならではの迫力。明治時代にロシアと満州で日本陸軍の諜報員として働いた石光真清氏の手記を息子が編集した4部作の第2巻。
日露戦争前の緊迫した時代である。クリーニング屋や写真屋などの仮面をかぶりながら、石光氏はロシアや満州の状況を探る任務を負った。
当時、満州やロシア東部にこんなにたくさんの日本人が暮らしていたというのが驚きである。通信手段も交通手段もほとんどない時代に、小さい町に住んでいたのだ。本書の描写を読むと、暮らし向きはとても劣悪で、過酷である。特に女性は苦しい環境にあったようだが、数か国語を話して陰でサポートしていた様子がうかがえる。
途中で病に倒れたり、捕虜になりかけた -
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日露戦争とその後の満州浪人時代について、これも率直に書いている。
開戦により召集されて臨んだ日露戦争については、戦記としては既知のことばかりだが、具体的な場面の記述については凄惨さ、苦戦ぶりを率直に書いている(公刊されたのは戦後、遺族によって)。
終戦後は除隊し、一般社会で生きていく道が探せずに満州浪人になった経緯をこれもあけすけに書いている。明治も末になって陸軍も規則づくめの組織になって、「何者だか不明な元軍人」が出入りするのは容易ではなくなったことで、満州浪人は文字どおりの浪人であった。
大した成果もなく帰国し、特定郵便局長の地位を得て生活し、明治天皇の崩御を迎えるまでが書かれている。
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この本の本編部分は著者の息子さんが遺稿を整理して世に出したものだが、巻末に「思い出の記」として著者オリジナルの原稿からの抜粋が収められている。これが興味深いもので、本編の内容がかなり脚色されていることが窺われる。そこから推測すると、おそらく西南戦争での薩軍との交流の記述あたりなども、編者がたいした悪気もなく「盛っている」のではなかろうか。
それはそれとして面白いし、明治という時代の息遣いを感じることができる。ほんとうに人が若くして病気で亡くなる。
ところで西南戦争のくだりで谷干城が「美髯の老人」として描写されるが、谷は当時40歳くらいである。当時は40歳だと立派に老人だったのだろうか、それ -
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明治時代に中堅武士の過程に生まれた石光真清の手記を息子の真人がまとめたもの。武士といっても、時代はすでに明治時代。真清の青年時代に西南戦争があり、彼の人生に大きな影響を与えたようだ。
歴史小説はたくさん読んできたが、この本がすごいのは、実際に明治・大正・昭和(1巻は明治のみ)の世の中を体験してきた本人が書いているところだ。つまり、リアルなのである。
昔は本当に優秀な人が多くいたのだな、と感じる。兄弟たちも立派だが、皆九州から上京して商社に勤めたり陸軍の学校に入ったりしている。
本書では、著者が日ロ戦争を前にロシア語にのめり込むようになったいきさつが書かれている。