待鳥聡史のレビュー一覧
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政治が機能していないと言われて久しい。それが政治不信の原因とされ、選挙制度をはじめ様々な改革が行われてきた。だがそもそも政治が「機能」しているとはどのような事態を指すのか。そして改革は何を目指し、その効果をどう評価すべきなのか。本書はこうした問いに対し、比較政治制度論の近年の研究成果を踏まえながら、各国の代議制民主主義がいかなる歴史的経緯を経て現在のかたちをとるに至ったかを、その基本的な理念に立ち帰って検証し、あるべき議論の筋道を示す。実証的政治学と規範的政治理論の野心的な統合の試みであり、久しぶりに歯応えのあるシャープで骨太の政治学に出会ったという気がする。
著者は代議制民主主義とは自由主 -
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ネタバレ合衆国大統領に与えられている権限は、その「世界大統領」的なイメージと違って恐ろしく少ない。そもそもが、議会のポピュリズム的な暴走を抑制するために設置された役割であり、合衆国の国力伸張によって求められる役割が変わった後も憲法の条文改正が行われなかったため(司法判例に基づく解釈改憲)行政の役割が増大した今でも、制度的には大統領の権限は恐ろしく制限されているままである。
合衆国大統領の権限がかように小さくても今まで大統領のリーダーシップで国が動かして行けたのは、合衆国の政党及び議員の特性によるモノであり、政党の凝集性が(日本などと比べると著しく低いとはいえ)高まると、政党の枠を超えて大統領が進める政 -
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そもそも、民主主義と議会制度は出自が異なるのに、今では民主主義と言えば、普通選挙に基づく議会制度が必須となっているが、これは、決して直接制民主主義の代替物では無く、自由主義と民主主義の貴重な接点であること。そして、自由主義的側面と民主主義的側面が互いに摩擦を起こすことこそが、必要なことなんじゃないのかなあと。
多数の専制に陥らないように民主主具は制御される必要があるし、政治家の正統性は民意に基づかねば維持できない。そして、熟議民主主義では、民主党政権が行った(偏った専門家主導の)討論型世論調査で実証されたように、却って専門家による専制を招きかねない。
そして、民意と政治家と官僚(専門家)の関係 -
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政治の世界をテレビなどで見ている時に、様々な問題に対する批判や泥仕合を見ることが多いように感じていたのですが。その原因が一体何なのか、政治家が悪いのか、官僚が悪いのか、それとも私たちが勉強不足なのか、わかっていないままに散髪屋の親父と化してしまっていました。それを理解する視点として、代議制民主主義が日本の政治体制であり、その制度の利点や問題点を知ることができたこと、本書を読んで良かったと思いました。世界の政治制度を知ることで、日本だけの問題でもないことを知ることも重要と感じます。
代議制民主主義は柔軟な制度であり、それゆえバランスをとることが困難ですが、よくも悪くもなる制度であること。その希望 -
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最近政府に対する批判として時々聞かれる「民主主義的でないという言葉がよくわからず(選挙で選ばれた代表が多数決で決定することがなぜ「民主主義的でない」の?)、かと言って厚い政治学の本を読む気もなく、ちょうど良さそうなタイトルの新書だったので読んでみました。
ものすごく要約すると、結局のところ、執政制度や選挙制度に一つの正解なんてものがあるわけなく、必要とされていることと、現状の制度のずれが大きくなったら、適宜改革は行っていく必要がある。そのキーワードが「自由主義的素」と「民主主義的要素」のバランスで、極端に寄り過ぎて良いことはない、難しいけどね、というとこでしょうか。
私は学生時代、政治に興 -
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京都大学大学院法学研究科教授の待鳥聡史(1971-)による比較政治学の観点からみる代議制民主主義論。
【構成】
序章 代議制民主主義への疑問 議会なんて要らない?
第1章 歴史から読み解く 自由主義と民主主義の両輪
1 近代議会の成立と発展
2 大統領制と議院内閣制
3 拡大する代議制民主主義
4 代議制民主主義の黄金期
第2章 課題から読み解く 危機の実態と変革の模索
1 動揺の時代
2 変革の試み
3 目立つ機能不全
4 危機への対応
第3章 制度から読み解く その構造と四類型
1 代議制民主主義の基本構造
2 代議制民主主義を分類する
3 制度と政党
4 四類型 -
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1990年代以降進められた「選挙制度改革」、「行政改革」、「日本銀行・大蔵省改革」、「司法制度改革」、「地方分権改革」という実質的な憲法改正ともいえる「政治改革」について、それらを「近代主義」という「アイディア」が通底していた一方で、その具体化の過程で各領域での「土着化」が生じ、マルチレベルでは不整合がみられる結果となったと指摘している。
「近代主義」が政治改革の様々な分野を通底していたというのはちょっと後付けの理屈のような気もしたが、本書は、政治改革の全体像について一貫した説明を与えるとても(知的に)面白い試みだと感じた。
本書のキーワードの1つである「土着化」は、過去の改革を読み解く上でも -
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トランプ大統領が誕生した2016年のアメリカ大統領選の直前に執筆された、アメリカ政治の解説書。アメリカ大統領制の歴史的な展開や国際的な制度比較の観点から、アメリカの大統領が常に直面する困難さや課題について明らかにしている。
2020年のアメリカ大統領選が近づいてるので読んでみたが、もともと合衆国憲法は議会が政策過程の主導権を握る前提であったこと、ニューディール期に憲法改正なき大統領制の転換があったこと、アメリカの大統領は制度的にも政党指導者としても限定的にしか影響力を行使できないこと、1970年代まではリベラル・コンセンサスが存在していたこと、近年はハネムーン効果はほとんど確認できないことなど -
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地方議会をはじめ代議制民主主義への批判論や否定論の声が高まる中、代議制民主主義のあり方と意義を改めて考えるという趣旨の本。代議制民主主義の歴史を振り返りつつ、明快な論理で代議制民主主義を分析し、今後の改革の方向について展望している。納得性の高い議論を展開しており、代議制民主主義への理解を深めるには最適の1冊である。
著者は、代議制民主主義を、エリート間の競争や相互抑制を重視する自由主義的要素と、有権者の意思(民意)が政策決定に反映されることを重視する民主主義的要素の緊張関係を孕んだ存在だと捉え、その本質を「委任と責任の連鎖体系」であると指摘している。そして、代議制民主主義の2つの基幹的政治制度 -
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近頃政治をめぐって「民意」とか「民主主義」といった言葉を用いた、罵り合いにも似た言論が盛んである。本書はそうした政治の現状をあくまで比較政治的に、選挙制度の選択×行政権の強さから検証したものである。
比較政治の妙味であるが、「こうすべき」と言われるような政治制度の多くは、既にどこかの時代のどこかの国で実施されている。それは失敗して別の制度に移行している場合もあれば、時々失敗はしつつも現在までそのままという場合もある。そうした政治制度の幾つかを検討して、「では、今の日本の代議制民主主義は言うほど悪いものか。」と読者に働きかける。
結局、そうした政治制度の帰結のどの点に着目するのかで結局議論は分か -
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2015年は「民主主義」という言葉が溢れた1年だったように思う。
とりわけ大きなトピックとして、安保関連法案と、大阪における大阪都構想の住民投票および市長・都知事ダブル選挙があった。
これらについては、とても奇妙に思える状況があった。
まず安保関連法案については、憲法学者による違憲という指摘がされたこと、「戦争法案」という批判により大きな運動が起こった。
しかし、ここで憲法について触れると話がややこしくなるので、以下ではその点はあえて無視をして進めていく。
憲法上の問題を無視すれば、少なくとも自民党・公明党は2012年の衆議院選挙、2013年の参議院選挙を経て議席の過半数を獲得し、