安東みきえのレビュー一覧
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安東みきえさんによる児童文学。
空気を読まない転校生のアキト、周りをよく見すぎて言葉のみこんでしまう主人公の美海。
対照的な二人が距離を縮めていくまでのお話。
美海は空気を読みすぎるところがあるが、だからといって流されやすいわけではなく、客観的に物事を捉える力がある。
思ったこと、気になることをどんどん口に出してしまうアキトは、変わり者で性格が悪いとレッテルを貼られてしまうが、美海は反感を抱きながらも一方的な見方をせずに、理解しようと努力する。
この年頃の子どもの友達関係の難しさがよく分かる。
誰もが美海のようになれたらいいのだろうけれど…。 -
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子どもたちの友情を感じ、こういう時期って一瞬だったなぁと思い返す。
一緒に冒険することの楽しさもこの時期だけの特別なものだったと。
だけどこの物語は、母娘の関係性をゆっくりと確かめていくようなものであった。
中学一年という微妙に面倒で中途半端な時期。
反抗期真っ只中といっても過言ではない時期。
親をウザいと感じ、親も子どもの気持ちがわからない。
微妙な関係のまま、大人になり親に悪態をついたまま、親に死なれた繭さんの気持ち。
その繭さんを奮い立たせるような美月ちゃんのママの怒鳴り声。
きっとみんながそれぞれに何かを感じたであろう。
わかってもわからなくても、何かを。
親になってわかること、子ど -
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安東みきえさんは、教科書のみに書かれている短篇が二作あるそうなのだが(「そこまでとべたら」と「星の花が降るころに」)、私の学生時代より、遥かに新しい年代だったので、知らなくて当然といえば当然。
しかし、本書を読んだ後になると、それが読みたくてたまらなくなり・・要するに、こんなタイトルでも(失礼)、気軽に楽しめる事に加えて(ごく自然にクスッと笑える感じ)、何かを学び得られるような感覚と、心がぽっと温かくなる空気感もあって、そこに私は妙な新鮮味を感じられました。
とは書きつつも、ざっくりした表現になると、物語の内容の殆どが、外国のおとぎ話のパロディを盛り込みながらも、オリジナリティはちゃんとあ -
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せんたくものが風に吹かれている。
手ぶくろも右手と左手で風にあおられ、けんかしている。
そのうち強い風で右の手ぶくろが飛ばされてしまう。
庭では、ニワトリがなにやらケンカしていて…
「りっぱなトサカのオンドリだけが鳴けるのです」
落ちてきた手ぶくろをかぶったメンドリが、これでオンドリにみえる、鳴いてもいいと嬉しそう。
だけど池に映るすがたは、大きくゆがんでいて、とてもおかしなかっこうに見えた。
オンドリのマネをするのは滑稽だと気づく。
それから手ぶくろは、持ち主のことを思い出す。
そして、離ればなれになっていた片方の手ぶくろに持ち上げられた。
片方だけで冒険した手ぶくろから見える大切な -
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ホラーを読みたがる子どもは多いが、子どもに勧められる内容とクオリティを兼ね備えたホラーはあまりない。
しかし、これを読んでさすが安東さん!と思った。
子どもの日常から離れず、それでいてゾッとするような人間の恐ろしさを垣間見せてくれる。
「川釣り」「青い金魚鉢」「鬼ヶ守神社」が良かった。
「青い金魚鉢」が一番好きだ。無神経ないじりに傷つけられて学校に行けなくなった少女が、因縁のある金魚鉢を手に入れる。出窓に置いた金魚鉢から、かつて自分も毎日通った通学路が見える。鬱屈した心理と、歪んだ青いガラスが彼女に力を与えてしまう。
ちょっと「押し絵と旅する男」みたいな。
表紙の絵がかわいいのが、ホラーに