マーヴィン・キングのレビュー一覧

  • 錬金術の終わり 貨幣、銀行、世界経済の未来

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    ネタバレ

     金融危機前後の期間にイングランド銀行総裁を務めた著者による、政治経済の大局的視点からの金融政策の諸問題と、持続可能な経済システム構築に向けた提言の書。極めて長大でスケールも大きく、読み進めるうちに見当識を失いそうになるが、全編を通じて「不均衡」「根源的な不確実性」「囚人のジレンマ」「信頼」の四つの概念が軸になっておりブレがなく、理路整然とした論調は読んでいて清々しい。現在の先進国の金融政策が持続可能でないばかりか、新たな危機の火種になりかねないというのは自分の直観に沿うところでもあり、それを極めて精緻に言語化してくれているという意味で稀有な書だった。将来に向けた提言は主に金融政策上のルール構

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    2017年10月15日
  • 錬金術の終わり 貨幣、銀行、世界経済の未来

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    ー 何世紀ものあいだ、貨幣と銀行は金融の錬金術だった。それは強さの源泉とされていたが、実際には、資本主義経済のアキレス腱だった。貨幣と銀行、そしてグローバル経済という制度を長い歳月をかけて改革するには、知的な革命が不可欠である。2007~9年の金融危機後、ほとんどすべての先進工業国が停滞を克服できないでいるのはなぜか。それは個人の失敗か、それとも制度の失敗か、あるいは思想の失敗なのか。それが本書のなかで投げかけた根本的な疑問である。しかし、そのなかでいちばん大きいのは思想である。

    錬金術は終わり、経済の停滞は克服できないままだ。モーゲージも預金を元手にした融資もレバレッジも、そもそも労働に値

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    2024年09月16日
  • 錬金術の終わり 貨幣、銀行、世界経済の未来

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     筆者は、世界金融危機を収拾した立役者の1人であり、「錬金術師」とも評された前イングランド銀行総裁。
     安定した将来見通しが得られない不確実性と経済の不均衡が常に存在する現在、従来の金融の仕組みでは、必ず危機が再来すると警鐘を鳴らす。そこで、中央銀行の果たすべき新たな役割を提案。世界経済の不均衡を原因とする迫り来る危機に対処するには、短期的な処方箋である金融の量的緩和政策では効果がなく、新たな思想にもとづく経済学と政策の仕組みが必要だと力説する。

     私の言う「錬金術」とは、紙幣はすべて、金など、そのもの自体に価値がある商品にいつでも換えられる、銀行に預けているお金は、預金者が払い戻しを求めれ

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    2021年08月08日