幕末から明治にかけての蘭医、松本良順の自伝です、前半は。っていうか、すいません、後ろ半分の長与さんの自伝部分は読んでません(汗)。
もちろん文語なのですが、もう明治の頃ですから、読み下すのは難しくありません。近藤勇とか土方歳三が出てくるので、新選組が好きな人にもお勧めですが、それより、当時の科学・医学のレベルがどれほどのものだったか克明に分かって、興味深いです。それだけでなく、蘭学をやった人ですから諸外国の情勢もよく分かっているし、穢多の解放活動をやっていたり、この人、すごいカッコイイ!
穢多というのは士農工商の四身分のさらに下に位置させられて、動物の死骸処理とか皮なめしとかを仕事にしていて、すごい差別されていた人々のことです。子供の頃に読んだカムイ伝で、これは為政者が恣意的に設定した身分であって、別に全然差別されるいわれのない人たちというのは知っていましたが、元々鎌倉幕府時代、頼朝のお妾さんの子供の家系で、尼将軍政子の嫉妬から低い身分に落とされた、って知ってました? 知らなかった。。。
で、幕府に、こんなのよくないから改めろと談判(近藤勇も一緒にです)するのですが、今は被差別民ではあるが、税金は免除されている。これが市民になるなら税金は取られるんだよ、と確認したり、これまで、身分回復を図ってやるから金よこせという人がいっぱいいたらしいけど、俺と近藤はそんなんじゃない、金なんかいらん!とか。結局、幕府は滅亡寸前のごたごたしてる時だから、どさくさにまぎれてこの良順の申し入れは通って、穢多は身分回復します。ね、こんな混乱の時代に、こんな人道的なことやっちゃう医者って、すごくね?
幕府の御殿医は良順以外はほとんど漢方医なんですが、幕府に雇われてるってことは、お前ら軍医だろーが、戦場に行って傷病兵を見てやれよ!とか、漢方医は止血の仕方も知らない!とか、いなかの医者は銃創に綿を通して、キセルを掃除するように洗う!とか、熱いです。
惜しむらくは、多分絶版みたいで、ちょっと入手が難しい。