福永光司のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ中国古代の思想家として知られる荘子の思想を「実存」の観点から解き明かした本。
荘子は春秋戦国時代の政治闘争が人を狂わせることを激しく認識していた。生者の世界は絶望、不自由、侵略、飢餓に満ちているのだ、と。彼の哲学はそんな悲惨な時代に「それでも生きていかなければならない」ということを前提に成り立っている。
だから、孔子など儒家とは異なり、相手が凡愚、小人であっても彼らが有意義に生きることを肯定し、人間のありのままを捉えようとした。
そんな彼が理想としたのは「真人」、「至人」という存在。何ものにも囚われない知恵は「真知」であり、それを会得した人間のこと。
自分が、相手がどうであれ -
Posted by ブクログ
ネタバレヘーゲルが自由なき生活と決めつけた古代中国の専制支配のまっただ中に生きて、泥まみれの現実と苦闘しながら、自由なき生活の中の自由、不自由の自由を必死に追求したところに荘子の自由の独自性があるのである。
自由とは荘子にとって、それぞれの自己がそれぞれの自己として、それぞれの自己の直面する極限状態の中で、なおかつ生きてゆくことであった。古代アジア的専制支配下の最も不自由な歴史的現実、人間の現実的な在り方の極限状況の中から追及された自由であるところに、荘子の哲学の特異性が考えられるのである。
「わたしの哲学が実存主義であろうとなかろうと、それはわたしの知ったことではない。実存主義であるというのであ -
Posted by ブクログ
荘子の思想の解説書です。
「あとがき」には、「私としてはただ現在の私が理解する私の『荘子』を、私なりの表現で説明する以外にいかなる方法もなかった」と述べているように、『荘子』のテクストの内容を読み解き、著者自身の観点からその内容についてわかりやすい解説がなされています。
従来の解釈では、『荘子』の「内篇」が比較的古い部分であり、荘子そのひとのほんらいの思想に近いとみなされてきたと著者は説明し、そうした理解を基本的には正しいものとして受け入れつつも、「最近の私はむしろ内・外・雑篇の形式的な区別を重視することよりも、その枠をはずした全体の中で荘子的な哲学の本質のようなものを選択してゆくことによ