村上貴弘のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
アリ研究者のエッセイ。タイトルがキャッチー。
著者の専門は「菌食アリ」と呼ばれる、ハキリアリやキノコアリである。彼らは農業を営むアリとも言われていて、巣の中に畑を作り、そこでキノコなどの菌類を育てて女王や幼虫の餌にしている。ハキリアリは葉っぱを切って運ぶことからその名がついているが、この葉っぱを直接食べるのではなく、キノコを育てるために使う。
アリは社会性動物であり、ハキリアリも女王を中心として、育児やキノコ栽培といった複雑な社会生活を送る。その際にはもちろん、コミュニケーションが必要なわけだが、従来いわれてきた「におい」によるコミュニケーションに加えて、音声のコミュニケーションがある、というのが本書の1つの読ませどころだ。
アリがどう話すのかというと、
キュキュキュキュ キュッキュキュキュキュキュ
キュキュキュ キュキュキュ
キュンキュン ギョギョ
という具合。
発音器官は、胸と腹部の間にある「腹柄節」という部分だ。昆虫の中でもアリにしかない。
小さなアリが小さな部分で立てる音を拾うには、高性能の小型録音装置が必要になる。まともに買うと飛んでもない価格だが、著者は安い部品を集めて工夫して高性能のものを用意する。
これを飼育ケースにセットして、キノコ畑を再現し、アリを入れる、というわけだが。
人相手の言語学者であれば、現地の人とコミュニケーションを取りながら、どの行動でどんな言葉が発せられるかを調べ、仮説を立てながら検証していく。
しかし、相手はアリ。ひたすら行動観察して音声と突き合わせていく。これが飛んでもなく地道な作業である。録音した音を聞きながら、あるシチュエーションで「キャ」が何回、このシチュエーションでは「キュキュ」が何回、この場合は「ギー」が何回と、「正」の字を書きながら(!)数えていく。あるアリなどは15分で7000回もしゃべっており、この15分の解析だけで1ヶ月掛かったというから気が遠くなる。著者も
「本当にお前、意味のあることしゃべってるのか?」
とぼやきたくなったというのもむべなるかな・・・。で、挙句の果てに、寝言でまでアリ語をしゃべるようになってしまったのがタイトルの意味。
この解析の結果から、行動と音声の関係に関して、いろいろおもしろいことがわかってきたそうで、近いうちに論文発表されるとのことである。
地道な解析に加えて、現地(ハキリアリはパナマなど中南米にいるため)でのディープな研究者生活の話も興味深い。
著者はヒアリも専門にしていて、最終章はヒアリにあてられている。近年、日本への本格上陸も警戒されているが、そのためにはまず、ヒアリについて正しい知識を持つことが大切だという。
特異なアリの研究から、「社会性とは何か」や、ヒトと「害虫」との関わりについても見えてくる。
軽く読めてディープで楽しい。 -
Posted by ブクログ
キノコアリ種 ハキリアリ、ムカシキノコアリ ウロコキノコアリ(祖先)
巣の中にキノコ畑 中南米生息
マヤ文明神話集 Popol Vuhにもハキリアリは出てくる
「そのう」で発酵させた食べ物を吐き出してキノコ酵母のつぶにする。
女王アリと幼虫のえさに。
アリの巣にしか存在しない共生菌。それに寄生するそこにしかいない寄生菌。
寄生菌の抗生物質をだすバクテリアがアリの体内に。
農業とは、人間が代わりに「穀物の社会」を進化させられたもの?
世話するエネルギー>農作物のエネルギー
教科書が正解ではなく、自分のスキルとデータから論を構築。新発見につながる。
フェロモン
アリは捨てられるにおいとそれを妨害するにおいを出す。
ハキリアリの女王アリ
巣の菌を口に、結婚飛行、
数個体のオスと交尾し精子を20年間保存し生涯3000万個の卵を産む。
ひとつの巣から200個体以上の女王アリ新たな巣を築くのは1個体程度。
働きアリはすべて雌 寿命は3か月。長時間の休みはとらない24時間労働。
女王が死ぬと働きアリの卵巣が発達して卵を産むがオスにしかならない。
最後の手段。
ハキリアリの言葉
発音器官:腹柄節
音によるハキリアリの防除 コーヒー、オレンジ、野菜
ヒアリも音で巣から誘い出す。
サムライアリ
クロヤマアリの幼虫や蛹を奪い働かせる社会寄生種
新女王アリ 巣の乗っ取り プロパガンダ物質でクロヤマアリを錯乱
シジミチョウ幼虫 匂いの擬態と女王アリの音を真似る。 -
Posted by ブクログ
audible。アリは砂糖が好きだと思っていたし、外でこぼしたお菓子はアリの餌になると信じてきたけどアリは固形物を食べないらしい。
固形物の中の汁を吸っているだけなので糞もしない。みんなで一生懸命にクッキーやパンの食べカスを運んだりしているのに、あれは果たして汁が吸えるのか?!俄かに信じがたい。
また、アリは地面に伝わる振動を波として脚にある器官で音を聞いているそう。
人間の足音は周波数の違いで聞こえないから大騒音にはならない。
生物によって周波数の違いがある意味を知って衝撃的だった。確かに全部の生物が同じように音が聞こえたら大変だ。
本書は、単独で楽しめるけど一応前著の続編らしい。そのためか、馴染みのないアリや難しい遺伝子の話などもあり意識が遠くなりかけた。
ところどころにユーモアのある文章を挟んでくれているけど、audibleが淡々としたデジタルボイスでスベリ気味だったのでこれは紙の本の方がお勧め。
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Posted by ブクログ
アリの社会には働かないアリが一定数いるという。怠けているわけではなく仲間が疲れたときに代わる「控えの戦力」だ。しかしすべてのアリが常に働き続けるとどうなるか。過労死するアリが増え社会全体の維持が困難になるという。
これは人間社会にも通じる。効率を追求しすぎると余裕がなくなり組織の持続可能性を失う。ではなぜ働かないアリがいることで社会が安定するのか。研究によれば労働に偏りがあるほど全体の生産性が向上し危機に強くなるという。
適度な休息と役割分担が社会の安定には不可欠なのだ。個々が支え合い休むことで全体が健全に機能する。アリの世界から学べることは多い。
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Posted by ブクログ
きっかけは、2024年10月7日の文化放送「田村淳のNews CLUB 今週のスゴイ人」に著者の村上貴弘さんがゲスト出演し、とても楽しそうにアリの話をしているのを聞いたことでした。村上貴弘さんはおしゃべりをするハキリアリの研究を深めた結果、アリ語で寝言を言う筋金入りのアリ研究家。
アリがこの地球に出現したのは約1億5,000万年前。約5,000万年前にはほぼ現存する属が出現し、その後さらに、多様な環境に適応する中でさまざまな種に分かれていった。現在、分かっているアリの種類は約1万5,000種。アリはほかの昆虫が到底生きられないような場所にも適応している。例えば、酷暑の砂漠や、極寒の地や、海中で生活しているアリもいる。
さらに、アリは真社会性と呼ばれる見事な社会を作る。アリの個体はそれぞれが適切な判断基準を持ち、それに沿って自由に動き回る。それが何万個体と集積することでいわゆる「集合知」となり「最適解」に極めて近くなる、というのが実情に近い。個々が自由に行動していることが、利他的行動となり、それが全体に集約されると最適化されていく。誰かに押し着せられたものにただ従うのではなく、自分自身の中にちゃんと決断する基準を持つ。そしてそれらを粛々と積み重ねることで、社会は最適な選択にたどりつく。
まさに1億5,000万年を経た進化の結果で、生物学的には生身では人間よりよっぽど進化しているそうです。