三谷太一郎のレビュー一覧
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明治以降の日本の体制について研究した本。政治体制、資本主義、帝国主義、天皇制について詳しく述べている。知らなかったことが多く、勉強になった。ただし項目によっては、特に、植民地獲得の拡張的政策については違和感のある論述もあった。はっきりとは言えないが、なにか違うような気がしてならない。学術的ではあった。
「日英の政治には、決定的な違いがありました。英国には自由主義的伝統、とくにその主要な要素である「個人の尊重」の伝統が影響力をもっていたのに対し、日本にはそれはたしかになかったのです」p18
「(マックス・ウェーバー)合議制というのは行政任務の専門家が進行して、専門家が不可欠となってくるような状 -
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政党政治・資本主義・植民地・天皇制を切り口に日本近代史を総論しようとする一冊。
大ベテランの先生こそ専門の研究領域の総論を書くべきだと思うので、こういう本は大事。「青春期の学問」ではできない「老年期の学問」として総論を書くというスタンスもある意味正しい。ただ「最近の研究成果を踏まえていない」という批判をかわす方便というか、開き直りにも見えて、なんだかなぁという気持ちにもなる。。。
自分には少し難しかったので要再読だけど、資本主義の章はちょこちょこ気になった。たとえば不平等条約の下では外資に依存しない資本主義にならざるをえなかったとか、自国文明への「恥」の意識が近代化の促進要因になったと書かれ -
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日本の近代について、政党政治、資本主義、植民地、天皇制という4つの点から考察。
教科書で習うような近代の概念をさらに深掘りし考察を加える。
部分的に見れば、近代の概念を覆される。特に意識をしなければ、戦前=近代は遠いものだとどこか自分の離れたところに置いていたが、その形成過程を見ることで、当時を生きた人々がどのような考えに基づいて「近代」を作ったかが考察でき、その制度の合理性および非合理性について整理することができる。
ある程度まとめて言えば、制度とは、なんらかの一貫した意図を持って形成されるのではなく(もちろん形成する当初は一貫した意図があるのだろうが)様々な意図や環境が混じり合って出 -
Posted by ブクログ
副題に「問題史的考察」とあるように、「政党政治」「資本主義」「植民地」「天皇制」という近代日本の根源に関わる4つの問題を歴史的に考察した書。著者は政治史学界のいわば「レジェンド」的存在の大御所だが、分析視角の鍵としてウォルター・バジョットを持ってきたり、日本の近代化の特殊性を相変わらず西欧(というより英米)との偏差によって規定するあたり、レジェンドであるが故の「古臭さ」は否めない。明治前期の非対外募債主義を幕末の「倒幕派」に遡及している点などおかしいところもある。とはいえ、最近はアプリオリに自明の前提として等閑視されている歴史学の根源的問題、すなわち「なぜ日本は非欧米圏で唯一植民地にならず、