棚橋正博のレビュー一覧
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江戸中期の版元と作者の協業により生み出された
名作黄表紙から16作品を厳選し紹介する、アンソロジー。
挿絵豊富で、現代文でも分かるよう、訳と注を配置している。
・凡例
「見徳一炊夢」「長生見度記」「箱入娘面屋人魚」など16作品。
・舌代(棚橋正博) ・編者一覧
「江戸の戯作絵本」各巻収録作品
・「全盛期黄表紙集」概説 ・概説参考文献有り。
大人向けの読み物、黄表紙。
洒脱なナンセンスとパロディーは知的であり、
見立てと連想の妙が窺えるし、当時の江戸の話題や事件、
流行や言葉遊び等も巧みに取り入れている。
最終巻は、江戸時代のベストセラー16作品をを収録。
中でも山東京伝は5作品。板元では蔦屋8、鶴屋3、西村屋3など。
「虚言八百万八伝」は絵入り小咄本で、話芸が盛んに
なる前の先鞭となる作品。蔦屋重三郎版、四方屋本太郎作。
「大違宝舟」は説経節や江戸の説話、人形浄瑠璃、
歌舞伎、小咄がごちゃ混ぜ。鶴屋喜右衛門版、芝全交作。
「豆男江戸見物」と「花の御江戸」は販路を地方からの客の
江戸土産とした西村屋与八の戦略が窺える。市場通笑作。
「夭怪着到幉」は妖怪を集めた絵画帳な黄表紙で
鶴屋喜右衛門版。鳥山石燕とは異なる北尾政美の絵が楽しい。
「人間一生胸算用」は「心学早染草」の後編で蔦屋重三郎版、
山東京伝作。善悪に続き、心・氣・鼻・目・口・手・足も
分身化。
「人間一心覗替繰」は19歳の式亭三馬の出発点。西宮新六版。
「仇報孝行車」は長編の敵討譚で合巻の始まり。
西村屋与八版、南仙笑楚満人作。
貸出延長しての完読。特に興味惹かれた作品を紹介しました。
当時の流行や話題が盛り込まれていて面白い。
創作の妙には驚かされてしまいました。 -
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大人向けの読み物、黄表紙。
洒脱なナンセンスとパロディーは知的であり、
見立てと連想の妙が窺えるし、当時の江戸の話題や事件、
流行や言葉遊び等も巧みに取り入れている。
「親敵討腹鞁」は、「かちかち山」の後日譚。
狸の子が猟師と共に仇討ちに。主から兎の生胆を求められた、
爺々婆々の息子も登場。どうする兎!・・・って鵜と鷺!?
忠臣蔵や謡曲の趣向たっぷりだけど、ナンセンス。
八畳のきんたまが笑える。
「案内手本通人蔵」は、「仮名手本忠臣蔵」のパロディー化。
塩治判官が通人だったら、かの悲劇は起こらなかったと。
徹頭徹尾それを貫き、ハッピーエンドで終わらせるとは。
「吉原大通会」は、謡曲の天狗物を趣向とし、当代の狂歌師や
歌舞伎の古今の名優たちが勢ぞろいの、風流と洒落の愉しみ。
「莫切自根金生木」は、唸るほど金があるため、貧乏神を
祀ったり、いかに金を使うかに四苦八苦。逆転社会でも
金銭に振り回される人々の姿は、現実の裏返し。
「黒白水鏡」は、田沼時代の施策への批判、幕閣の内紛、
そして刃傷を、鎌倉時代の人物の見立てで、滑稽に描く。
余りにもあからさまな内容のため、作者も画家も処罰され、
特に作者は手鎖での江戸払という、筆禍で名高い作品。
「的中地本問屋」は、十返舎一九の苦し紛れの作品だが、
草双紙の製本過程が詳しく&愉しく描かれていて、
現代からすれば、江戸時代の製本の史料になっている。
表紙と綴じの工程が、書肆の家族作業だったとは~。
全三巻読破!
江戸時代の、寺小屋の隆盛と本の流通拡大の頃に、
持て囃された黄表紙。江戸への憧れを満たす流行の描写や、
歌舞伎や謡曲、読み物の趣向が散りばめられて発見する愉しさ、
そして逆転や擬人化の発想などの物語の面白さ、
鳥居清長や喜多川歌麿、歌川豊国等の画家の技巧など、
知的好奇心を満たす作品の数々は、江戸の文化の一端を
知ることが出来て、愉しかったです。
それにしても描く時代の制約があったからでの、鎌倉時代や
南北朝時代が趣向や見立ての舞台になっている作品が多いなぁ。
その一方、仏様の遊蕩なぞが制約されていないのも、面白い。 -
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江戸時代の傑作黄表紙を紹介するアンソロジー。
挿絵豊富で、現代文でも分かるよう、訳と注を配置している。
・凡例
<変革期黄表紙集>
「鸚鵡返文武二道」「天下一面鏡梅鉢」など8作品
<末期黄表紙集>
「敵討義女英」「化物太平記」など8作品
・作者・画工略歴 ・「変革期黄表紙集」概説
・「末期黄表紙集」概説 ・概説参考文献有り。
大人向けの読み物、黄表紙。
洒脱なナンセンスとパロディーは知的であり、
見立てと連想の妙が窺えるし、当時の江戸の話題や事件、
流行や言葉遊び等も巧みに取り入れている。
だが、田沼意次から松平定信へと政権が代わり、
政策への揶揄が巧みに取り込まれた物語が登場する。
それは危うい綱渡りの如し。
ついに筆禍事件の影響で武士作者が総退場。
町人作者中心になれど、茶化しから理屈の笑いへ
作風が転換される。心学や文武奨励、敵討、見立てに絵解き。
恋川春町、朋誠堂喜三二等の武士作者の名残の作品と、
続く町人作者の市場通笑、山東京伝、芝全交、十返舎一九、
曲亭馬琴、式亭三馬等の作風の違いには、
黄表紙の作者としての紆余曲折と苦心惨憺が窺える。
「悦贔屓蝦夷押領」は、未開の奥蝦夷に逃れた源義経が
その地を平定し、江戸に模した町造りをし、江戸へ凱旋。
田沼意次と松前藩への批判が内在する物語の、主役は昆布。
「鸚鵡返文武二道」は、醍醐天皇の世を舞台に、松平定信の
『鸚鵡言』、文武奨励、政策への揶揄がたっぷり。落書も。
恋川春町の死と武士作者が総退場になるきっかけに。
「奇事中洲話」は、寛政改革で死罪となった武士に関わる
事件と『冥途の飛脚』や歌舞伎、心中等をごちゃまぜに脚色。
「心学早染草」は、心学を理屈臭い趣向で説く。
諧謔と茶化しは鳴りを潜めるが、善悪の魂がユニーク。
「敵討義女英」は、敵討物再興の祖。子供同士の喧嘩が
敵討に発展、敵の娘の悲恋、彼女の死により決着する。
「无筆節用似字尽」見立て絵文字&『歌字尽』のパロディーは
曲亭馬琴によるコミカルな作品。隠し絵探しも愉しい。
「稗史億説年代記」は、草双紙の歴史と変遷を
「鉢かづき姫」に仕込んで見せる趣向。草双紙の小事典の如し。
「化物太平記」は、実は「太閤記」のもじり。蜂須賀小六が
河童、木下藤吉郎が蛇、織田信長がなめくじと、登場人物が
化物に見立てて描かれる。パロディーとして人気を博したが、
出版統制の対象となり、処罰を受けることになる。
「十四傾城腹之内」や「侠太平記」も趣向に妙有り。 -
Posted by ブクログ
江戸時代の傑作黄表紙を紹介するアンソロジー。
挿絵豊富で、現代文でも分かるよう、訳と注を配置している。
・黄表紙とは ・凡例
<初期黄表紙集>
「金々先生栄華夢」「御存商売物」など9作品
<全盛期黄表紙集>
「狂言好野暮大名」「江戸生艶気樺焼」など8作品
・作者・画工略歴 ・「初期黄表紙集」概説
・「全盛期黄表紙集」概説 ・概説参考文献有り。
これまでの草双紙とは異なる、大人向けの読み物、黄表紙。
洒脱なナンセンスとパロディーは知的であり、
見立てと連想の妙が窺えるし、当時の江戸の話題や事件、
流行や言葉遊び等も巧みに取り入れている。
黄表紙ジャンルの始まりとなる、恋川春町の
「金々先生栄華夢」は、「邯鄲の夢」のパロディー。
「桃太郎後日噺」は桃太郎の後日談と、
鬼ヶ島が連れてきた白鬼の運命の、道成寺趣向。
「時花兮鶸茶曽我」は曽我物趣向の金の亡者たち。
「御存商売物」は、本尽くしの擬人化。
「万歳集著微来歴」は源平合戦趣向で描く、狂歌界の確執。
「頭てん天口有」は有名店が多数登場の、料理見立ての合戦。
「狂言好野暮大名」は、若殿様が歌舞伎に夢中になっての騒動。
「江戸生艶気蒲焼」は、京伝鼻と言われた獅子鼻の艶二郎の、
19歳にて浮名を流したいという思い込み願望が起こす珍談。
恋川春町、朋誠堂喜三二、山東京伝、四方山人(太田南畝)等の
奇抜な話と、それらを彩る画の表現が絡む、面白さ。
これらを読み解き、絵解きする、当時の読者の教養の高さも
知ることが出来ます。
但し、文字が小さいので読み進めるのが大変でした。