大河内直彦のレビュー一覧
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科学的な記述の中に、ときおり挿入されるエピソードに、心が踊った。例えば、南極の初到達を争った2人の、勇猛さと悲哀。どこを向いても、南がない不思議な地点への人類初到達を、命をかけて目指した。気温はマイナス40度。防寒具なしで人間が外に出たら、血液が凍るレベルだ。1人は、最初北極点に向かっていたが、他の人が到達したニュースを聞き、それならばと南極に向かった。しかも、情報統制のため、南極に向かっていると隊員が知ったのは、南極大陸への着陸直前だったという。それでも、隊員の士気は高かったという。人類未踏の地というものに、みな強い憧れを抱いていたのだろう。
結局、2人の争いは、途中から南極に向かっていた人 -
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地球温暖化、異常気象という単語は誰もが耳にしたことがあると思います。これらの現象を研究対象とする科学がどのように進歩してきたかを辿る科学ノンフィクションです。
誇大に危機感を煽るような書き方を一切廃し、気候変動をどのような方法で観測し、研究を積み重ねて来たのかを分かり易い文章で解説しています。取り扱うテーマは非常に広範で、地球の軌道や太陽活動に関する天文学、南極やグリーンランドの氷から過去の気候を研究する気候学、化石などの試料の年代を放射性同位体の性質を利用して特定する分析法、過去の気候を定量的に評価する古気候学などの基本的な考え方や過去の研究者の試行錯誤の様子の人間ドラマも交えて描いています -
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地球の成り立ちから、主に海や地殻の事がとても分かりやすくまとめられている。
例えば、
その昔(約二万年前)、海面は今よりも130メートルも下にあったようだ。海底で見つかる遺跡のような巨大な石なども、実は当時の人々の営みが海面上昇により沈んだものなのかもしれない。また当時は黒海も干上がっており、その後約9400年ほど前に、海面上昇に伴いボスポラス海峡から黒海に海水が流れ込んで、周辺の人々にとっては恐ろしい洪水となり、これがノアの洪水の起源ではないかという話も、非常に説得力がある。
他にも、海水はなぜ塩分を含んでいるのか、有馬温泉は火山が無いのになぜ温泉なのか、など、面白そうな話がたくさん出てくる -
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この数週間で、「生命の星の条件を探る」(阿部豊著)で数十億年にわたる宇宙の歴史の話を、「地球の履歴書」(大河内直彦著)で数億年前とか、数千万年前のレベルの地球の歴史を、「日本史の謎は「地形」で解ける 」(竹村公太郎著)で数万年前から数百年前の日本列島の話を読んだ。この3冊を買ったのはタマタマだけど、数週間の中で読む組み合わせとしては、すごく良かった。いずれも、わかりやすい文章・構成で、とても面白かった。「地球の履歴書」では、この数十年の調査技術の発展(調査の原理の発展とコンピュータのデータ処理能力の向上)により、とくに海底の細かな地形が詳細に把握できるようになったこと、それを用いてごく最近でも
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最初の章は、具体的な数字で地球規模でエネルギーの終始を説明してるので、数字が出てくる理科が苦手な人はページをめくる手が止まってしまうかもしれないけど、その後の章では石油・石炭・天然ガス・原子力などについて、エネルギーを生み出す機構や人類の歴史との絡みが分かりやすく書かれてます。
人類が石炭や石油を大量に使い出したのはここ100~200年くらいだけど、なにがしかの方法で利用したのはかなり古く、先史時代にまでさかのぼるそうで。 このあたりの話は全く知らなかったので興味深く読めました。
東日本大震災と福島原発事故で国のエネルギー政策が見直しを余儀なくされている昨今、この本で今一度エネルギーについ -
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むずかしいエネルギーの話を、非常にわかりやすく解説してくれる本である。化学式やイラストを用いた説明、資源活用の歴史など、内容も豊富で最後まで飽きさせない。ジェームズ・ラブロック氏の「ガイア理論」に通じる部分も多いと感じた。
本作を読んで改めて感じたが、人類が大きなエネルギーを手に入れ、それらを散々使いまくった代償は決して小さくないのだ。美味しいものを食べ過ぎて肥満になったり、テレビやスマホの見すぎで目が悪くなるように、楽しんだ後は必ずツケを払わされる事になるのだ。子孫たちに美しい地球を残すため、今すぐ大きく舵を切るべきである。
ちなみに本作によると、化学反応とは高温と圧力によって起きる現象 -
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地球の営みと人間の暮らしがどのような原理で結びついているのかを、エネルギーを軸に、さまざまな時代の出来事にスポットを当てながら考えてみる、という本である。
とかく専門的になりがちな理数系の話も多いのだが、キャプション入りの写真や図説などが手間を惜しまず適所に挿入されており、ことのほかわかりやすく、かつ面白い。
石油ストーブを部屋の中で使うことを化学式で表わしたりするのも、言葉だけの説明よりかえって理解しやすいから不思議だ。また、「人生とは連綿と続く一連の化学反応に他ならない」といった見方も、読んでいくうちになるほどと納得してしまう。ちょっと人に話したくなるような雑学ネタもふんだんにちりばめられ