オースティン・フリーマンのレビュー一覧
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ネタバレネットで見かけて。
ソーンダイク博士という名前に聞き覚えがある気がしたが、
読んだことはないはず。
シャーロック・ホームズのライバルの一人と言われるだけあって、
レトロな感じで良かった。
第二章冒頭の「知り合いになるには然るべき紹介からはじめる」とか、
いかにもイギリスらしいし、
人を会うのに使いを出すとか、連絡をつけるのにメッセージを書いて届けるとか、
女性に対する距離感とか。
最近エジプトのミイラの話を読んでいたので、
多分それがトリックの要だろうなという予感(推理ではない)がしていた。
そこも面白かったし、
ソーンダイク博士とそのジュニア・パートナーの
ふざけあっている会話も面白かった。
衝撃的だったのは「カルトナージュ」。
自分が知っているカルトナージュは、
厚紙で箱を作って、紙や布を貼る素敵な趣味だ。
だがエジプト学では、
亜麻布やパピルスを糊や接着剤で何層も貼り重ね、
ミイラで型をとり作った棺のことだったとは。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「オシリスの眼」と同じ作者だったので。
またもや零落したご婦人を助けるお話。
しかも今回は直接的危害、
逃げようとした殺人犯に刺されたり、
毒入りチョコを贈られたり、
弟が怪我をしたと呼び出されて殺されかけたりと、
かなり危険な目に遭ったご婦人を助けられて良かった。
ただし、2番目と3番目の危険については、
あまりにも古典的な手口になので、
それにひっかかるとはどうよと思ったことは否めない。
古典だからしょうがないが。
それほど価値がない宝石コレクションの強盗殺人と、
残された指紋の謎、
行方不明になっている遺書がからみあい、面白かった。
悪者が自分の仕掛けた毒で死んでしまう、
しかもそれをソーンダイク博士はドブネズミ程度にしか見ていない、
という衝撃的な展開もあったし。
前作に引き続き「マスコット」という言葉が、興味深かった。
「マスコットキャラクター」の意味でしか知らなかったので、
人々に幸福をもたらすものや動物、
いわばお守りが本来の意味だとは知らなかった。
他には、ソーンダイク博士と今回の助手役が、
閉じ込められた部屋から脱出す階段が、
壁がぬるぬるとした藻類や菌類で覆われ、
大きなキノコが群生するのが最も怖かった。
後半でかなり重要な場面、宿場で昼飯を食べる場面で、
ジャコバイト党の話がチンプンカンプンな方は、
解説をご覧あれ。 -
Posted by ブクログ
ソーンダイク博士シリーズ長編。
語り手はジャーヴィスではなく、『赤い拇指紋』に登場したアンスティ弁護士である。
アンスティが刺された女性を助けたことから殺人事件に巻き込まれる。強盗殺人と思われたが、被害者の弟は納得せずソーンダイク博士が出馬することに・・・
ソーンダイクといえば地味にコツコツ科学捜査のイメージがあるが、この作品はかなり冒険活劇で、ロマンス、アクション、歴史を遡る因縁話など盛りだくさんな内容で驚いた。意外性はあまりなかったが、広げた風呂敷がきれいにたたまれるラストは本格の醍醐味。
訳者あとがきによると、ウィニフレッドやモーキーが他の作品にも登場しているそうなのでそちらも読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
法医学者ソーンダイク博士を探偵役とするシリーズ長編。シャーロック・ホームズと同時期に活躍した探偵だが、作中、徹底的な科学捜査を駆使する手法は今回もお見事。同じモチーフを(例えば指紋の話など)ここまで複数作繰り返し使いながらも、見せ方を替えて話の筋に生かしてくるところが凄いで。(同じ素材でも複数の調理法的な…)
特に今回の話は要素が盛り沢山で、宝石商の殺人に始まり、聖書を使った暗号、チョコレートに混ぜ込まれた毒薬に周囲をうろつく謎の人物の影、ジャコバイトの反乱に遡る一族の因縁話とそれに関係する領地相続の物語、空き家で命を狙われるヒロインに邸宅内の隠し部屋を巡る冒険……と(まだまだ他にもありますが)よくもまぁこれだけ盛り込んだ、という黄金期の探偵小説にありそうなイベントの数々。そしてこれらが大団円で綺麗に収束していくのがお見事でした。 -
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予想以上に早く殺害してしまったので、残りのページ数がもつかと心配したのだが、読み終えてみると、その構成力の巧みさには舌を巻いた。慣れるまでは読み難かった。ひとつの段落が長いし、何事もとことん説明してくるので、そのしつこさには困惑させられた。そして何より、どこまでいっても地味なのだ。
しかしそれもこれも、作者のフェアなスタンスを思えば当然なのかもしれない。追い詰められた犯人が次にとる動き、そこから犯罪の姿を確信する探偵──この辺りのストーリー展開に作者の自信が垣間見える。そしてラストの素晴らしさ。読者の願望をすべて実現してくれたようで文句のつけようがない。倒叙ミステリのひとつの完成形がこの時代に書かれていたとは……さすがホームズの母国。