ベン・ファウンテンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ものすごく面白かった。
と言ってしまうと、あまりに平凡で身もふたもないのだが、それ以外に言葉が見つからないぐらい、面白かった。
全編「おふざけ」がちりばめられている。「ミリオンダラー・ベイビー」のオスカー女優、ヒラリー・スワンクとデスティニー・チャイルドなんて、いったい何度名前が登場しただろうか(彼女らは自分の名が使われることを承知したのかしら)?わたしにはわからなかった「あの人」もたくさんきっと出ているのだろう。そこに、いかにも若い男の子たちらしいお下品な会話がポンポン飛び交う。電車で読んでいると、時にほっぺの内側を噛んでにやけ防止をしたくらいだ。
…それなのに、行間のどこにも「死」のイメー -
Posted by ブクログ
これって、早い話が人格形成小説(ビルドゥングスロマン)だよね?年若い青年が周囲の人々の影響を受けて、自己を作り上げてゆくことを主題とする。ヘッセやマンとちがうのは、これがたった一日の出来事を中心に書かれているってこと。雪混じりの感謝祭の日にテキサススタジアムで行われる、ダラス・カウボーイズとシカゴ・ベアーズのアメリカン・フットボールの試合会場が舞台。
で、なんで一日かというと、ビリーっていうんだけど、この主人公。陸軍の二等兵で、イラク戦争で手柄を立てて勲章を二つも貰い、ただいま仲間のブラボー分隊と一緒にご褒美の「勝利の凱旋」旅行中。二週間かけて、アメリカ各地を回ってきて、いよいよ今日が最終日 -
Posted by ブクログ
9.11後、姉の婚約者の車をボコボコにして、更に婚約者を追い回した19歳の青年ビリー・リン。彼は訴追を逃れるため軍に志願した。そしてイラク戦争の最前線で心の師とも言える友を目の前で失い、苛烈な戦場を7人の兵士たちと共に生き延びた。彼らはアメリカ合衆国の戦意を高揚させるヒーローとして一時帰国し、ハーフタイムショーに駆り出される。愛情、憐れみ、畏怖、蔑み、憧れ…あらゆる視線に晒され、愛国者達の慰みものとして、資産家に金の卵として利用される。そんな中、ビリーはチアリーダーのひとりと恋に落ちるが、イラクに戻る時間は刻一刻と迫っていて…
利用する者とされる者。半狂乱ともとれる群衆の熱量。強烈なコミュ -
Posted by ブクログ
若い兵士のビリー・リンは、イラクの戦闘で英雄的な働きをしたため、小隊全員で凱旋帰国させてもらった。NFLの試合でハーフタイムショーに招待され、ヒーローインタビューだ。招待席に戻っても、握手を求められ、讃えられるかと思えば、喧嘩騒ぎも起こしてしまう。1週間後には前線に送還され、戦争に戻る不安定さがそうさせるのだろうか。
英雄的な戦闘では、友を亡くしている。次の戦闘では自分が戦死するかもしれない。でも、今は酔った頭でビヨンセが歌い踊るのを目の前に見ている。自分たちをモデルにした映画ビジネスの話も持ち上がっている。全てアメリカの現実だ。
アメリカで、社会的に取り残されたものを待っている現実だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ裏表紙に書かれていたイラク戦争版のキャッチ22ということば。私の感覚も、同じようなものでした。
そこで感じた、戦場の狂気。そして、戦場を離れ祖国に戻った時の狂気。
アメリカの19歳の若者、戦闘に巻き込まれ生き残った仲間は、米国に呼び戻され、戦意高揚のためにフットボールのハーフタイムショーに引きずり出される。
でも、その間も仲間の狂気、戦場の記憶は続いている。
そして、祖国では、別の狂気が続いている。
そして、自宅に戻って自分の部屋で静かに自慰をする。
彼の部隊はまた戦場に戻っていく。
そして、狂気は残り続けていく、彼の周りでも、彼の祖国にも。 -
Posted by ブクログ
主人公のビリー・リンはワケあって軍に入隊、イラク戦争に送られ、英雄にまつりあげられ、愛国心のアイコンもしくは見世物パンダとして全米凱旋ツアーに駆り出され、スーパーボールのハーフタイムショウでビヨンセと共演する-
という感じのあらすじを見ただけで面白そうだなと思って読みました。
戦争や愛国心、アメリカに対するアイロニーが込められた作品なんだろうなとは容易に想像できるけれど、
読んでみるともう1文ごとに何かしらの皮肉、揶揄のオンパレード。すべてがジョークのようなのになぜかリアル。
ビリーたちの体験を映画化しようと企む人物がいて、
ビリー(男)の役をヒラリー・スワンクに演じさせようと計画するエピ