芳賀日出男のレビュー一覧
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芳賀 日出男
(はが ひでお、1921年9月10日 - 2022年11月12日)は、日本の写真家、民俗研究家。
関東州大連生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。日本・世界の祭り・民族・民俗芸能の写真取材を行った。 1973年、全日本郷土芸能協会を設立[1]。 1985年、株式会社芳賀ライブラリーを設立、取締役会長。 1989年、紫綬褒章受章。 1995年、勲四等旭日小綬章受章[1]。息子の芳賀日向も写真家。100歳を超えても活動している[2][3]。2022年11月12日、老衰のため死去[1]。101歳没。
死者に会える? 巫女市の実態 恐山 青森県大湊田名部市 青森県下北半島の -
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1964年の角川新書を再編集したもの。民俗写真家の芳賀日出男氏が1960~63年に撮影・取材した各地の祭礼や年中行事が、18件紹介されている。徳島県の山村に残る傀儡師(漂泊の人形遣い)の集落を取材した冒頭の「初春の傀儡師」に驚き、それ以降も一気に読み進めてしまった。
傀儡師のように間もなく姿を消した芸能だけではなく、かまくらやお遍路のように今も残る習俗も記録されている。だが、消えたもの、残るものいずれにも共通するのは、「資本主義の世の中では観光資源化する祭のみが強力に生きのびることができる」という冷徹な事実であり、「祭を信仰の立場から見る人はそれを堕落と嘆き悲しむ」。その一方で、「町の人の身 -
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宮本常一に学んだ写真家のフォト・ルポルタージュ。1962年に秋元書房の「トラベル・シリーズ」という新書から刊行されたものを再編集の上、文庫化した貴重な一冊。北海道ノサップ岬から沖縄県久高島まで17か所が収録されている。
「秘境」というタイトルから分かるように、当時としても決して普遍的な光景ではなかったのだろうけれど、今とは時間の流れの違う世界が確実に存在していたことが窺える。同じく宮本から多大な影響を受けた網野善彦は、高度成長を南北朝に匹敵する日本社会の大変革と定義したが(『日本中世の民衆像』)、その正しさも本書は示しているように思われた。 -
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秘境旅行」なんて少し大げさなタイトルです。作者自身も前書きに書いているように「今や日本には秘境などなくなってしまった」とある。昭和三十年代にはもはや秘境ではないが、秘境の匂いが少し残ってる地域の紀行文となる。
北海道のノサップから沖縄の久高島まで各地の生活や文化が紹介される。
網走に住むオロッコ族の祭り。大和民族に統合される前にアイヌとの戦いに敗れたオロッコ族やモヨロ族、ギリヤークなどのオホーツクの民族がいたらしく、その生き残りを訪ねる。ただもはや彼らはそのことを隠し、大和に溶け込もうとしている。ソ連から逃げてきた人たちもいる。今はもう誰も残っていないんだろうか。
長崎五島の隠れキリシタ -
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この本が出版されたのが1964年。60年前ですら忘れられかけている風習について取材しているが、今も残ってるのだろうか。残っていても形骸化してるのではなかろうか。現代人の弱点で、理由を知りたくなる。何を祀るのか?なぜ祀るのか?なぜこのような形態になったのか?
雪祭りのかまくらが水神様を祀るためのもので戦前までは丸くなく四角かったことを知っていたか。入口は子供がひとり潜り込めるくらいの小さな穴だったのに観光化して写真を撮るために大きくしたこと。だから火鉢を持ち込んでも内部が暖かくならないこと。
海浜のお盆。海から先祖が帰ってきて盆踊りに混じって現れる意味。その夜だけは都会に行った娘たちも帰ってきて -
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写真とその説明が丁寧にされているのでとても読みやすい。冒頭に簡単な地図もあるので、それをもとに自分の日本地図に書き込みをしていつかここに行こう、なんて考えたりしながら読み進める。
村それぞれにしきたりがあって、田舎の祭りでも時代と共に変遷がある。
伝統が続くお祭は本当にそこに神様が降りてくるお祭なのだ。著者は写真家だが、民俗学とは、民間信仰とはを考えさせられるテーマだった。
印象に残ったこと
桜は天候を占うなど、信仰としての対象でもあったこと。(鎮花祭 京都府)
勤労感謝の日は、もとは新嘗祭(収穫感謝)の日であったこと。(稲霊 奈良県) -
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写真家である芳賀日出男氏の紀行文集。
本書自体は、2020年1月の発行であるが、元になっているのは、1962年(昭和37年)に発行されたものである。筆者は、本書の中で、昭和30年の初めから10年間かけて2000日間の撮影旅行に明け暮れたと書いている。全国津々浦々に深く入り込んで撮影し、記録をした紀行文集である。
本書の中で、筆者が訪れ、記録しているのは、人里離れた場所ばかり。筆者は、1962年に書いた「はじめに」の中で「今や日本には秘境などはなくなってしまったと思う」と書かれている。日本全国を知り尽くしている筆者にとってはそうかもしれないが、50年前の人里離れた田舎は、現代の人間からしてみれば -
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昭和三十年代に、各地にかろうじて残る古俗を蒐集した旅の記録。
北海道 ノサップ
三月、氷を割く黒潮によって春が運ばれる。
国境のまち歯舞町。漁村の今昔。近代化が押し寄せる。
北海道 網走
北方ツングース族の支族であるオロッコ(ウィルタ)族、ギリヤーク(ニブフ)族。ソ連領樺太のオタスの森から、土地を保証されるが彼らの神をいただくことを許されないことを理由に移住した人びと。
博物館の借り物の衣装で著者のためにマツリが行われる。文化の記録を目的とする著者の目的にはいかにもそぐわない変質したマツリである。しかし生きた彼らが信仰を持ち続ける限り可能なかたちに変わっていくのは自然なことだろう。マツリは -
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・芳賀日出男「神さまたちの季節」(角川文庫)は「著者が昭和三十五年から三十八年にかけて足にまかせて自由に見てあるいたものである。」(「はじめに」3頁)私にはまづこれが有難くもまた嬉しい。東京五輪が昭和三十九年であつた。その直前の各地のおまつりの姿が見られるのである。今となつてはかういふのは珍しいであらう。解説で神崎宣武が「いちばん気になる写真」(267頁)といふ186頁の「鹿の精たちは農家に祝福の踊を捧げてめぐる」、確かに「ここには、たくさんの情報がある。」(同前)神崎が挙げてゐる以外にも多くの情報があるだらう。私は「霜月の訪れ神」(220頁)の参候祭の写真が「気になる」。その最初は三都橋集落
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ネタバレ昭和30年代の日本各地を写真に収めた記録集。農村史でもあり、農業史でもあると思った。
北海道から沖縄まで、民俗行事や民間信仰の豊かさに興味が尽きない。本書で紹介された各地が現在どうなっているのか、つい調べてしまった。意外にも存続している行事が多いけれど、たぶんイベント化しているんだろうなあ。
震災後の東北で民俗行事や無形文化財の保存活動が盛んになったけれど、保存させるために従来のしきたりが形骸化したりして、記録することの功罪を考えてしまったことを思い出す。
北海道の少数民族である、オロッコ族・ギリヤーク族を初めて知った。アイヌだけじゃなかったんだ…。
あと皇族の証である菊の紋章を使うことを黙認