フジテレビで放送された『池上彰緊急スペシャル! 世界から格差がなくならない本当の理由』を書籍化したもの。
かつて、旧ソ連のゴルバチョフ書記長に「世界で最も成功した社会主義国」と評された日本だが、「一億総中流」だったのはもう遠い過去。アメリカ大統領選挙の結果を左右したのも「格差」。
アメリカでは富裕層が多い街が独立し、さらに富裕層が移り住んでくる、という状況が始まっている。取材で出てくるジョージア州のジョンズクリーク市は、人口8万3000人、平均世帯所得が1270万円、住みやすい都市:全米4位だそう。
なぜ独立を望んだのか。住民投票で独立賛成に票を投じた人は、「支払った税金は自分たちのために使いたい。そのほうが質の高い生活を送ることができる」「自分の税金が誰か知らない第三者のために使われるのではなく、税金は自分の利益になることが理想だと思ったんだ」と語る。
背景には貧しい人がたくさんいる地域で犯罪が多く、警察もそちらへの対応が忙しくて、税金を多く払っているはずの富裕層が住む地域がおろそかにされている、などの不公平感があった。
独立してからは、独自の渋滞解消システムや警察の留守宅への巡回サービスまでも取り入れられ、住民たちは満足しているようです。
一方、富裕地区が独立し残された地域の税収は44億円も減り、行政サービスが劣化。行政への不満が高まることになる。
「公平」とは何か?
富裕層からいえば、低所得層は拠出しているお金は少ないのに公共サービスを優先的に受けている。貧困層からみれば、富裕層は恵まれているのに自分たちのことしか考えていない。どちらかが正しいというのではなく、どこかで折り合いをつけなければならない。
ただし、このまま格差が広がっていくのをどこまでも見守っていく、というのは、社会不安を引き起こす。
OECD加盟先進国33ヵ国の「教育機関への公的支出の割合」が日本は33ヵ国中32位、2015年までは6年連続で最下位だった。
ヨーロッパの国の多くは高校まで、あるいは大学まで教育費が無料である。
ベースにあるのが、きちんと教育を受けた子供たちは、将来、就職してお金を稼げば税金を国に納めてくれるから、結局、教育に投資したお金は戻ってくるという考え方。
きちんとした教育が受けられて、就職して税金をきちんと納め、年金の保険料も払ってくれれば、将来の年金制度が維持できるということにもなります。広い視野に立ってこの問題を考えていくことも必要。
教育にお金を使うこと、教育格差をなくしていくことは、将来の格差解消につながる可能性が高い。
長期的な視点に立てば、いちばん効率的で確実な投資は教育である。