小川忠のレビュー一覧
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2億人強、世界でも4番目の人口を持つインドネシア。ASEAN、BRICs、G20屈指の大国として力を増してきているこの国の変容に着目することは大きな意味がある。とりわけ本書が光を当てる「イスラーム化」と「デジタル化」は、現代インドネシア社会を理解する鍵となる視点だ。21世紀に入りシャリーアを導入したアチェ州や、外部からの影響を受けてヒンドゥーナショナリズムが高まるバリ島など、宗教と政治、地域性が複雑に絡み合う様子は特に興味深い。また、アフガニスタン和平への仲介を試みたイスラーム外交や、「新非同盟主義」とも呼べる多極的な対外戦略も、この国の国際的ポジションを考えるうえで重要な点である。
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Posted by ブクログ
日本には、あまりなじみの薄い国、インドネシア。
しかし、ASEAN加盟国の中で超大国でもあり、日本の外交・経済面では、とても深い関係にあることがわかる。
インドネシアの総人口もさることながら、当然イスラム教徒が多数を占める。
そのインドネシアにおけるイスラム教(徒)の歴史、また、政治に関わりなど、興味深かった。
現在の国際情勢と「寛容なイスラーム」の特徴を持つインドネシアのイスラムを知る。
本書は、インドネシアを理解するために重要で、かつ多くの視点から述べられている好著だと思う。
親日国であると同時に、 過去に、太平洋戦争時の日本の占領支配からインドネシア建国時にどんな経緯があったか -
Posted by ブクログ
ネタバレ【216冊目】現代のインドネシアを知る上で極めて有用な書であったように思う。難点は、筆者が国際交流基金職員という立場で現地を観ていることから、学校教育や文化交流の網にかからない、いわゆる「下層部」に属するインドネシア社会や市民までフォロー出来ていないのではないかということ。インドネシアの国土は広大で、人口も2億人以上いることから垣間見ただけで全てを知ることができたとするのは早計である。
それでも、この書は有用である。パブリック・ディプロマシーの担い手である筆者は、その主張の通り、一部のエリート層よりも広い層と交流してきたのだろうし、文章も他の学問的研究や一次資料からの引用がなされていて、ア -
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人は不安になったとき、何かに縋りたくなる。
この本はコロナ下において各宗教の活発化した動き、観測しやすいためだろう、主に原理主義に焦点を当てている。3.11でイスラム教が話題になったくらいで、他宗教でも信仰を集めているのは知らなかった。
科学的に謎が解き明かされようともそれが個人の不安まで吹き飛ばすこととイコールで結びつけられないという意味で、宗教は滅びないのだろう。ただ、縋る対象として宗教が選ばれた背景には、信者を減らしつつもまだ身近なものではあった点は関係するのか気になった。日本で信仰が深まらなかった理由は、確かにテロによる忌避感もあるだろう。だが個人的には、それが無かったとしても増えたと