澤田直のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
生きていて、かつ死んでいること。
姿を現す前に、立ち去っていること。
二つの状態をあわせもつ猫とは、
言葉の別名だ。
ある夜、庭の暗闇からふいに現れた一匹の猫。
壁を抜けて出現と消失を繰り返す猫は、
パラレル・ワールドを自在に行き来しているのか。
愛娘を失った痛みに対峙しつつ、量子力学と文学との
接点を紡ぐ傑作。
*****
作品紹介を読むとSFっぽい印象を受けるけれど、SFではないし、いわゆる起承転結のある物語でもない(実際には起承転結はあるのだけれど)。小説と読んでいいのかどうか躊躇するけれど、こういう小説もありだよ、と言われれば「そうだな」と頷ける。だから小説 -
Posted by ブクログ
主人公が彫ったピエタは素晴らしい。素晴らしいのだが、何故か皆、少し違和感を覚える。最後に解き明かされるその秘密。そこに至る数多くの伏線。作者のJ.B.アンドレアの構成の才能は素晴らしい。
近代イタリアの歴史や事件を織り交ぜながら、文化遺産の解説までしてくれるので現地を旅しているようだ。権力者と貴族たちの謀略に抗う貧しき人々。目まぐるしい展開は、豊かに描写されている登場人物たちの動画のよう。読者は彼らのうちの誰かのファンにさせられてしまう。エンタメ&教養小説とも言えるが、ジェンダー問題など、現代的価値観もしっかり反映されている。
翻訳は素晴らしく、とても読みやすい。
惜しいのはタイトルが原題の -
Posted by ブクログ
読み慣れていなくて何度も戻ったりしながら読む。
(訳自体はとても読みやすい)
彼女がどうなってしまうのかが気になって、ページをめくる。聡明で好奇心旺盛で、自分の信念に忠実で。
でも、女性ゆえ不遇、批判される人生を送り、誤解されるというか輝けない、思い通りに生きられない。
イタリアのファシズム含め時代の暗さと反動の芸術性の対照さも見られる。
彼女が最後にミモに送った手紙がユーモアがあって悲しくてとてもいい。ミモとの友情?愛情?時にねじれたりもするけど、ヴィオラはミモを唯一の理解者と思い時に甘える。そんな関係にミモは自信をつける、そだててもらう。
いつも出てくるオレンジやネロリの描写が香ってく -
Posted by ブクログ
例えば、堀江敏幸の小説のように。あるいは蜂飼耳の散文のように。流れる言葉の連なりの中に、作家の思考の断片が幾重にもオブラートに包(くる)まれた状態で見つかるような文章に、惹かれる。フィリップ・フォレストはそんな文章を書く作家のひとり。
例えば草むらの中に転がる軟式野球のボールの白さにはっとするように。今まで歩を進めていた草原とは隔絶した物語がその白さの佇まいから流れ出すように。文章の森の中にそっと配置された思考の断片に潜んでいた別の言葉の連なりが想像され、思考が繋がる感覚を得る。しかしそれは龍安寺の石庭に置かれた庭石のように観察者の意図を寄せつけぬようでもある。加えて、石の配置の意味するとこ -
Posted by ブクログ
何だ! 彼は、どこから来たんだ!
ペソアを知らなかった。
このことを口惜しく思ったと同時に会えて心底喜んだのです。形の無いアンティークを見つけたように。
この読後感はカフカに近似しています。
それもそのはずで、本書も『城』や『審判』と同様に未完。音量の縮減。フェイドアウト的。いやどこかの結末を目指してさえいない散文で彩られていますから、そもそも終えようとしていないのかもしれない。私たちは本というシステムでもって彼を読みます。本には最後のページがあります。書籍的には一冊を読み終えましたが、実際は彼の世界を一度撫でたに過ぎないのです。
彼は「夢を見ている」と言っていますが、それはしなやかでた -
購入済み
理解が・・・
物理学は嫌いではありませんが、やはり、一般常識が通用しない、量子の世界はついてゆけない処があります。私には、楽しく読めませんでした。ただ、途中で放り出すことにはならない程度で、興味を引きました。その意味で、☆三つです。
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