田村優之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ落ち着きのある京都を舞台に、二人の男女が描かれた作品。ラスト、本当に涙腺が緩みました。
テーマは恐らく、彼女の心の不安定さと人の心底に潜む暗い部分、それから作中でも触れられているように、国籍に関すること。男性の女性に対する大人な恋情が胸を打ち、女性の明るさが胸を締め付ける。何と言いますか、胸が締め付けられるような作品でした。
ただ、テーマがテーマなだけに内容の温度が急激に上がったり下がったりというのはなく、例えるならば作中にあったような、船で静かに水面を滑っていく作風となっています。そういった作風が苦手な方は多いと聞いたことがありますので、私自身は結構好きでしたが、読書があまり好きでない人には少々読み進めるのが苦しいかもしれないと思います。 -
Posted by ブクログ
「企業戦士がこの本を読んで泣いています」がキャッチフレーズ。
なぜ企業戦士なのかは読み始めてすぐに分かるし、物語後半には読者を泣かせようという意図まるみえの文章が密度濃く散りばめられている。これで泣かなきゃ人間じゃないというほどに。
そもそも、悲しいことがあったり、苦しかったり、痛かったりした場合に泣くのが人間の常。ま、笑いすぎて泣くこともあるけれど。
しかし、そういった状況ではなくても、自分から進んで泣きたくなることもある。感涙小説を読むのはまさにそんな時だ。つまり、泣くことにはある種の快感が伴うのではないか。だからこそ、自分の生活において泣けることが無い場合に、わざわざ泣ける小説を手にとって号泣する。小説の中の泣ける状況に自分を置いて泣く。これは読者自身の幸せ確認作業なのではないかと思ってしまう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『今、いちばん泣ける文庫です。』という宣伝文句に惹かれ、この本を購入しました。
現役新聞記者の作品というだけあり、中身の半分以上が経済に関することでした。読んでいて自身の知識不足のせいか、理解するのに苦労しました。しかし、現社会の実態や経済に対する懸念を作品によって示唆する作者の思いも何となく伝わります。
純子と修一と有賀の事件の真相が作品の最後に明らかになり、なるほどと腑に落ちる展開ではありました。しかし、その後の余韻は感じられず、期待以上の感覚は得られませんでした。
駿や、美加の子どもの今後を考えて涙が出ましたが、心に響くというよりは、経済についての感心が少し高まるような作品だと思います。 -
Posted by ブクログ
アナリストの修一と新聞記者の有賀。高校時代のある事件をきっかけに絶縁していた二人の再会。現在と過去を描きながら、事件の真相が明かされるという話。
事件の真相自体は驚きに満ちたものではなくベタな話。しかし、修一の仕事がアナリストであることから、国債発行や経済情勢、金融機関や財務省の思惑等が織り交ぜられていて話に奥行があった。経済小説などを全く読まない人には理解しづらい部分かもしれないが、個人としての仕事へのプライドと組織の論理との間で苦しむ現在と、仕事に理想を抱いていた青い時代がリンクしていて、良い構成だと思った。
仕事に対してアツい気持ちを持ち続けられる男性って素敵だな。周りの評価に甘えて、泣くほど必死に働けなくなったのはいつからだろう。褒められたり気遣われたりする度に自己嫌悪と閉塞感しか感じられない自分が嫌だ。心を殺さないと利益をうめない仕事って何なんだろう。
*以下引用*
* 俺、思うんだけどさ、経済成長の目的ってさ、競争でみんなが疲弊するためのものじゃないはずだよ。(p36)
*確かに最低限の経済の豊かさってのは必要なんだが、貧しい国を無理やり成長させればいいっていう話じゃないんだよなぁ。むしろ逆で、そんなやみくもな成長の競争じゃあ、問題はさらに悪化する。産業革命時代のイギリスや明治の頃の日本みたいに、労働者が朝から晩までこき使われて工場の中でたくさん死んでいったり、水俣病やイタイイタイ病みたいに、企業が環境を壊してしまってそこでまた人が苦しんだりする。大事なのは、そこに属している人が本当に豊かになる成長のあり方、人が経済の犠牲にならず、環境も壊さない成長のあり方なんだ。そういうまるきり新しい枠組み、メカニズムを、誰かが見つけないと駄目なんじゃないかなぁ (p39)
*金利情勢次第ではあるが、基調としてはこれから銀行は、リスクを避けるために国債の保有高を少しずつ減らしていくだろう。同時に円が急落してもいいように、さまざまな形でヘッジをかける。確率がそれほど高いとは思っていないものの、もし実際に極端な円安が起きたなら、今まで通り何が起きているかも知らされなかった個人が逃げ遅れ、営々と働いて積み上げた円資産の暴落を呆然と見守ることになりかねない。 (p85)
*でもこの国の抱えてる構造的な問題はより大きいから、長期的には少しずつこの国は沈んでいく。そしてみんな、この先に待ってるものをうすうすわかってるのに、知らない振りをして笑っている (p171)
*星も同じだよな。ここに見えている光のうち、すでに星そのものは消えてしまって、光だけが届いているものがあるだろう。この街の様子は、それに似てると思わないか。本当はすでに死んでしまっている星の、昔の光。(p173)