塚本学のレビュー一覧

  • 生類をめぐる政治――元禄のフォークロア

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    ネタバレ

    塚本学先生による近世における「生類」観を明らかにする一冊です。

    塚本氏によれば、「生類」とは野生動物のみならず人間にまで視野を広げた近代化以前の日本の生命観の一つであるとします。そして江戸時代の社会構造の変化や人間と生類の関わり方の変化を明らかにすることで、徳川綱吉の治世に施行された「生類憐れみの令」について当時の社会情勢の中で熟慮の上で立案された政策なのではないかという観点で再検討を行なっていきます。

    本書では生類憐れみの令について「鉄砲の所持規制」「鷹狩の抑制」などの個別の政策に分けて考察を加えます。注目されるのは生類と社会-特に農村-の関係、そして山野・人間社会を含めた生類をめぐる空

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    2013年06月22日
  • 生きることの近世史

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     本書で著者がやろうとしていることは、「はじめに」に「日常些事の歴史は、当事者にとって些事ではなく、また当事者とその周辺にしか意味をもたない歴史でもない。天下国家の歴史から些事とみなされるような、無名の民の日々の生こそが、人類の歴史の内容であったはずである」に強く表れているとおり、いわゆる事件史、特に支配する側の歴史ではなく、この日本列島に暮らすふつうのひとびとの、生きた歴史を描くことである。

     著者の専門とする近世、16世紀後半から幕末、近代国家成立直前までの時代を対象として、災害、飢饉、病気といったものから、お上の支配や貨幣経済の浸透などに対して、人々がどのように生き延びたかが具体的に描

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    2024年01月24日