皆川達夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いざバロック音楽を聴こうとしたとき、まずその作品群と世界観に圧倒されてしまうことが多いかもしれない。本書はそうした見えない壁を乗り越えるのに役立つだろう。年齢の積み重ねと共に、聴きたい音楽の志向が変わり、西欧音楽の原点を探索し始めた人にも有効だ。音楽の新奇性やオリジナリティを求める前に、実はその本質を把握することが必要だったことに気付いた。序で著者は、「わたくしたちの現在の生活に密着した意識から出発したものであり、わたくしたちが現在の自分たち自身を知り、自分を見出す一つの手掛かりを求める積極的な前向きの行為」として音楽の根源に触れることを説明している。この本を読みながら、人生を通じて気長にバロックと付き合っていくのがよさそうだ。
41頁で音楽の歴史の150周年周期を紹介している。大まかな流れはこうだ。
850年ごろ グレゴリア聖歌 他性音楽の体系化理論化
1000年ごろ セクエンツィア・他声音楽の展開
1150年ごろ ノートルダム学派へ移行 アルス・アンティクァ 吟遊詩人の世俗歌曲
1300年ごろ アルス・ノヴァ 世俗的他声音楽の出現
1450年ごろ ルネサンス音楽成立
1600年ごろ バロック音楽の始まり
1750年ごろ バッハ死去 古典派へ引き継ぎ
1900年ごろ 近代市民社会の音楽の始まり
ここまで見てくると、気付くことがある。「大学」制度の広がりと何らかの接点があるのではないかということだ。音楽も大学も時代・文化・政治体制といった社会システムの中で生み出された。と整理できるかもしれない。ただそういえる理由を述べる紙幅はないので、今後の課題しておく。 -
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引用。
第一章 キリスト教と音楽
ハイライト(イエロー) - 位置271
神は人間の前には目で見える姿で 、現われない 。しかし 、それに代わって 、神はみずからの意志を言葉をもって語り 、人はその神の言葉を耳を通して聞くのである 。ここでは 、目で見るのではなく 、耳から聴くという関係が重視される 。
ハイライト(イエロー) - 位置284
「ムジカ ・ムンダ ーナ 」とは 「宇宙の音楽 」を意味する 。天体や地球 、つまりマクロコスモスの作り出す音楽であって 、これは耳に聞くことのできないムジカである 。同様に 、 「ムジカ ・フマ ーナ 」は 「人間の音楽 」 、つまりわたくしたち人間の精神および肉体 、ミクロコスモスを律する音楽で 、これも聞くことのできないムジカである 。結局 、現象として鳴り響き 、耳に聞くことのできる音楽 、つまりわたくしたちのいう 「音楽 」とは 、最後の 「ムジカ ・インストゥルメンタ ーリス 」ということになる (本章扉参照 ) 。
第二章 中世世俗音楽の隆盛
ハイライト(イエロー) - 位置570
十一世紀から十三世紀にかけて 、ゴリア ールと呼ばれた 、放浪の下級聖職者ないし学生たちが横行していた 。彼らは今日ふうにいえば 、就職にあぶれ 、反体制的心情をもつにいたったインテリ層で 、既成の道徳や秩序を無視した愛の歌や風刺の歌 、酒の歌などをラテン語によって大胆にうたいあげていた 。それらゴリア ールの歌曲のいくつかは 、 〈カルミナ ・ブラ ーナ 〉の名をもつ歌曲集によって 、今日に残されている 。
ハイライト(イエロー) - 位置651
中世騎士世俗歌曲の旋律には 、教会旋法 (第一章参照 )ふうの動きと併せて 、長調あるいは短調への傾向をみせるものが多数存在して 、すでに十二 、十三世紀に長調 、短調的なものが顕在していることを証言している 。とくに注目すべきことは 、これら中世世俗歌曲には 、ド─ミ─ソとか 、ソ─シ─レというように 、旋律を三度の音程の積み重ねのうえに構成してゆく傾向が著しい 。すぐれた音楽学者クルト ・ザックス (一八八一─一九五九 )の見解によると 、ヨ ーロッパの旋律が三度を中心に構成されることが 、長調 、短調の確定に結びつく大きな要素であるという
第三章 多声音楽の展開
ハイライト(イエロー) - 位置835
最近の西洋史学では 、 「ヨ ーロッパ的なものの成立 」は 「中世的なものの成立 」とほぼ同義的に受けとめられている 。ロ ーマ教会とフランク王国とが強い連携を保ち 、地中海的なものを洗い落としてゆくところに 「ヨ ーロッパ的なものの成立 」を認めようとするわけで 、それは十世紀前後に始まり 、十二世紀のころにクライマックスを形づくることになる 。それは社会の組織の面でも 、教会制度でも 、文化の諸相においても 、同様である 。たとえば 、言語についていうと 、フランス語 、ドイツ語 、英語などの俗語による文書や文学作品が姿をあらわしはじめるのは 、十世紀前後のことである 。それ以前は 、それら俗語は会話のための言語として民衆の間で使用されていたのだが 、十世紀前後にいたって 、文書のうえに書きとめられるようになってきた 。音楽についても 、まったく同じ状況であったとみることはできないだろうか 。
ハイライト(イエロー) - 位置1016
モテトゥスとは 、最初はオルガヌムないしクラウズラという典礼音楽──実はオルガヌム自体がもともとはグレゴリオ聖歌に対するパラフレイズなのであるが──に対するパラフレイズとして始まったが 、やがてそのパラフレイズが一種の自己目的をもつようになる 。
ハイライト(イエロー) - 位置1045
中世の音楽家たちは 、彼らのすぐれた職人芸で 、すでに存在している素材──教会によって 「聖 」とされたグレゴリオ聖歌をあらゆる形で改編し 、変形させ 、パラフレイズし 、しかもそれらのすべてを相互に結びあわせて 、偉大なる総合体を形成してゆく 。この 「総合 」と 「パラフレイズ 」こそ 、中世のヨ ーロッパ音楽の創作のひとつの基調となったものである
第五章 ルネサンス音楽を作った作曲家たち
ハイライト(イエロー) - 位置1496
オケゲムの音楽デュファイの次の世代を代表するフランドル楽派の作曲家といえば 、まずヨハンネス ・オケゲム (一四一〇ころ─九七 )が重要である 。彼は三代のフランス国王に仕え 、ポリフォニ ーの大家として知られていた 。その 〈ミサ ・プロラツィオ ーヌム 〉は 、二つずつの声部がそれぞれ対になって 、同一の旋律を異なったリズムで歌ってゆく 。しかも 、それが 〈キリエ 〉に始まり 〈アニュス ・デイ 〉まで 、各章各節ごとに同度 、二度 、三度とだんだんに音程を拡げ 、最後は八度のカノンにいたる 。バッハの 〈フ ーガの技法 〉の十五世紀版とでも呼ぶべきだろうか -
Posted by ブクログ
『バロック音楽』(皆川達夫、2006年、講談社学術文庫)
本書は、いわゆる「バロック音楽」(いびつな真珠、ゆがんだものが語源)の前後の音楽の潮流を述べ、楽器の発達を含めたバロック期の音楽の特徴を記した書である。まずは音楽史の流れを説明しているので、バロック音楽だけではなく、その前後の音楽史の発展の関係が理解できておもしろい。
バロックと言えば、バッハやヘンデルが有名である。ちなみにバロック音楽の終焉は1750年とされており、この年はバッハがこの世を去った年である。最終章でバッハとヘンデルの生い立ちを説明しており、古典派へと続く音楽史の流れを述べる。
(2010年6月15日 大学院生)