山上正太郎のレビュー一覧
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第一次世界大戦の国際政治・外交を記述している。
期間としては戦後も含めて10年程ではあるが、ボリュームのある内容であると思う。
読前は第一次世界大戦は連合国が順当に勝利した、という印象を持っていたが、想像以上に紙一重だったことがわかった。
タイトルにあるように、第二次世界大戦と比較して第一次世界大戦は「忘れられた戦争」と呼ばれる。特に日本は第二次世界大戦の衝撃が大きすぎたこと、第一次世界大戦では直接の被害を被っていないことから、その傾向が強い。しかし、100年前のこの戦争が今後の世界に与えた影響は大きい。さなかに生まれたソビエト連邦、ヴェルサイユ体制等々、は第二次世界大戦、冷戦に密接に関係して -
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▼山上さんという著者の方は存じ上げなかったのですが、楽しめた読書でした。実は「第一次世界大戦について」の一般向けの本を読むのって、多分2冊目か3冊目なんです(笑)。なかなか1回ではすぐに忘れて残らなくて。あともう1冊くらい読んだら、大まか明瞭に把握できるのではと期待しています。
▼どことどこが、なんで戦ったんだっけ?・・・・というところからして、「ヒトラー」という千両役者?がいる第二次世界大戦と違って・・・。というのが世界史音痴だった自分の状況だったので。
ようやくぼんやり分かってきました。つまり、第一次次世界大戦は、欧州帝国主義と、欧州帝政国家とが限界に達したんだなあ、と。自分たちが生み -
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第一次世界大戦について知っていること・・・
ボスニアのサラエボでオーストリーのフェルディナンド大公夫妻がセルビアの青年に暗殺されたことが第一次世界大戦の引き金になった
・・・ということは誰でも知っていますがナゼそんなマイナーな(?)地域での事件が世界を巻き込む大戦争のきっかけになったのか、正確に答えられる人はごく少数でしょ?
例えばこういう簡単な質問に答えられないことについて疑問を持つ人に対して、この本は実に的確に回答を与えてくれる。
歴史は必ず原因があって結果がある。
歴史とは因果関係が必ずあるという前提がなければ成り立たない学問である。
何故いまのロシアがあるのか、中国があるの -
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第一次世界大戦がもたらした世界とはどのようなものであったか。 戦況よりむしろ、政治、外交がどのように展開していったかを時系列に沿って追う。 ロシアの革命、無制限潜水艦作戦の開始、アメリカの参戦など。 シベリア出兵を含め、日本の動向も述べる。第一次世界大戦の結果、ヨーロッパの4つの帝国、ドイツ、オーストリア・ハンガリー、ロシア、オスマントルコはいずれも解体の道を辿った。史上初めての共産主義国家の誕生に加え、国際連盟、民族自決など、歴史上重要な概念が生まれた。 しかしその戦後処理は大国の利害を反映したものとなり、第二次世界大戦の勃発を避けることはできなかった。
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ネタバレ電気通信大学名誉教授である山上さんの手からなる歴史本。
第一次世界大戦に関する歴史本は様々な著書が出版されていますが、どれも作者の力点や焦点が異なっているので、読むたびに新鮮な感覚を覚えます。
山上さんのそれは、大戦前夜、そして戦中戦後の期間を、主に政治家たちの活躍に焦点を当てて描かれています。そのため、戦闘推移における劇的なイベントについてもサラッと流されています。例えばトルコが同盟側(独墺陣営)に加わり参戦した経緯については以下のように描かれています。
「そのうち1914年10月末、ドイツ艦隊とその指揮下に入っていたトルコ艦隊は、黒海北岸のロシア領を砲撃した。
ここに英仏露とトル -
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ネタバレ第一次世界大戦への道のりを描いた本。池上彰の解説も読みごたえあり。
これは新たな時代への幕開けにつながる戦争だったと思った。旧社会では、強力な権力を握る国王vs虐げられる農民という構図が長い間続いてきたが、この権力構造を崩壊させるのがこの時代の戦争。自由を求めた人民は資本主義へ、平等を求めた人民は社会主義へ向かった。民意の醸成を経ずして構造崩壊が起こったため、国王に代わる新たな権力者を生みだしただけの地域もあった。
また、脈々と続いていた国王の外交(国王同士の口合わせ、政略結婚による戦争回避など)も、この時代で終わってしまった。『戦争は他家に任せておけ。幸いなオーストリアよ、汝は結婚せよ』