佐久間文子のレビュー一覧
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頭のいい人が好きだ。
地頭がいい人はもちろん、博覧強記の人にもあこがれる。
頭のいい人にだけ見ることのできる、世界の違う断面を見せてもらうと幸せだ。
で、ツボちゃんだ。
名前のせいか文体のせいか、年配の人を想像していたのに、私よりやや年上だけれど、ほぼ同世代と言っていいくらいの年齢のかた。
なのに、なぜこんなに日本の近代のあれやこれや、何ならサブカルチャーにいたるまで詳しいのか。
なのにさ、たったの62歳で急逝しちゃったんだよ。
2年くらい前から体調が悪かったって…若すぎるよ。
そんなツボちゃんが北海道立文学館で『更科源蔵と豊かな交流圏』という副題の企画展をたまたま見て、更科源蔵を知らな -
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恋愛小説というジャンルにはあまり興味がなく、ほとんどの狂おしいほどの恋情は、性欲を抜けば大したものは残らないと基本的には思っているのだが、たまにぎょっとするほどすごい恋愛ものだと感じる本があり、それはなぜか実体験を描いたものに多い。
本当に深く一人の人間と長い間付き合うと、負の感情とも付き合うことになる。負の感情が時には圧倒することもあるが、別れないのはその感情以上にその人にしか抱けない、尊敬や愛着があるから。欠点も含めた相手の存在を愛おしく、哀しく思っている。
これは妻が亡くなった夫のことを描いていて、小説ではないのだが、楽しいこと美しいことばかりではない本当の愛情を感じた。三木卓の『K』の -
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コロナ禍なんて言葉がまだ存在していなかった2020年1月13日、急性心不全で逝去された文芸評論家 坪内祐三さん。享年61。この訃報には心底驚いた。
月に20本以上の締切を抱え、その大変さを『皿回しの皿をいくつも同時に回していくみたいな感じでやってる』と語る執筆に追われる毎日。ただ夕方にはきっかり仕事を終えた。仕事柄、神保町で古書を渉猟、夜は作家や編集者たちと新宿や銀座の文壇バーをナイトクルージングする日々。それだけに、まさか…。近年は体調はすぐれなかったことを本書で知る。
逝去後、坪内さんの追悼本も多く編まれ、その内の一冊『最後の人声天語』を玩読。文藝春秋に掲載された随筆をピックアップし -
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本の雑誌が「年間ベスト」を特集する時期、あらためて坪ちゃん不在の大きさを感じる。そんな坪内祐三の妻だった「文ちゃん」の坪ちゃん追悼本。本の雑誌とダ・カーポと両方の日記で文ちゃんの存在は知っていた。坪ちゃんが亡くなったことを自分の責任みたいに感じてしまってることが切ないな。
ここ1・2年は体調がすぐれずケンカのたびに「文ちゃん、あとすこし我慢して。おれ、もうすぐ死ぬから」と言ってたそうで、自分でも予感があったのかな。
今年の照ノ富士の活躍や白鵬の引退など、坪ちゃんならどう言うかなぁ、と考えることも多い。身内でもないのに、そんなふうに思わせる人は他にいないよ。 -
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類まれな同時代史の書き手が急逝して一年半――。妻が語る二十五年間の記憶。「ぼくが死んだらさびしいよ?」が口癖だったあの頃……。けんかばかりしていたけれど憎めない。博覧強記の東京人。生涯一「雑誌小僧」。毎日が締め切りでも、いつもふらふら飲み歩く生粋の遊歩者。「怒りっぽくて優しく、強情で気弱で、面倒だけど面白い」夫との多事多難な日々が鮮やかに蘇る。そう、みんなツボちゃんを忘れない。
前にも書いたが、坪内氏の生活圏内に、かつての職場があった。文中に出てくる穏やかな内科医の先生にもお世話になったことがある。早く診てもらっていたらと、読んでいて切なくなってしまった。