H・V・クライストのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「チリの地震」
首都サンチャゴで、何千という人間が落命した1647年のあの大地震のまさにその瞬間、さる犯罪のために告訴された、その名もジェローニモ・ルグェーラという一人の若いスペイン人が、監禁されていた牢獄の柱の下に立っていましも自ら首をくびろうとしていた。(p11)
どよめきの中に投げ込まれたあの衝撃からこの方、人々は皆許し合っている、とでもいうかのようなのだ。人々の記憶はもうあの衝撃の瞬間までしか立ち戻れなかった。 (P22)
最初の大揺れの直後、市内は男たちの目の前で分娩する女どもであふれ返ったということであり、修道僧たちがそのなかを手に十字架を持って走り回って、世界の終りがきた、と -
Posted by ブクログ
【チリの地震】
処刑という絶望の中、起こった大地震。そして、地震は離れ離れになっていた男と女と二人の子どもを再会させる。一瞬、希望が彼らを包む。まるで、それはユートピア。
しかし、たくさんの人々の「犠牲」の上に成り立つ再会と幸せなど長続きすることはない。
一組の男女を生かすのも、許すのも、裁くのも、殺すのも、それらは決して神が行うのではない。すべては、人間が行うことなのだ。
この作品が、3.11後に再び出版された意味とは一体何なのだろうか。わたしたちは、400年以上前のチリで起こった地震をテーマにした作品から何を感じ取るべきなのだろうか。 -
Posted by ブクログ
起承転結のしっかりした、王道の短編集といった印象。
「チリの地震」
天災が人間の心の中に、ある種逆説的に平穏さをもたらす場面の描写が凄く上手。★★★
「聖ドミンゴ島の婚約」
分かりやすい悲劇。起承転結がハッキリしていて短編のお手本といった観あり。ベタだけど普通に面白い。★★★★
「ロカルノの女乞食」
いや、流石にそこまではいかないんじゃないか。と思ってしまう幽霊の影響力の強さ。★★★
「拾い子」
シンプルな構成ながらも、怒り心頭のピアキの迫力はなかなかのもの。★★★
「聖ツェツィーリアあるいは音楽の魔力」
これは奇蹟と言えばいいのか何なのか。神の配剤は少なくとも俺の理解を超えている。