麿赤児
名文である。文章の密度が濃いというか、隙がないというか。
京極夏彦的な濃さではなく、より優しく孤高な濃さとも言える。
抜群にリズムが良くて、とっとっとっと読まされる。
脚本も書かれるのだから、プロの文筆家とも言えるがこのような自伝とは又別物。
ガンを克服し、己の来し方をまとめてとどめ
...続きを読むておこうと思われたのか。
最終章に、稽古中に被災した東日本大震災のことにも触れられているので、より一層その感を強められたのかもしれない。
なぜかあとがきがない。唐突な終わり方だ。
これは続編でもあると期待していいのだろうか。
実際、割愛している部分もあると明記されている。
読みたいです、麿さん。
あまりにも劇的すぎて、ホント?と思えるようなエピソードもあるのだが。この人ならばあるんでしょうね。
語彙の豊富さは文学者レヴェル。非常に好ましいのだが、現在では一般向けにはあまりアピールしないか。その点、少し寂しい感じもする。
最後の方に少しだけ出てくるが、劇団日本維新派。ボクはこの劇団を少しだけ、ほんの少しだけ手伝っていた。現在は維新派となっているようだが。
まだ、バリバリの白塗り前衛だったころ。町田町蔵(町田康)も在籍していた頃。
東の大駱駝艦、西の日本維新派と言われていた。
最初から最後まで、憧れた時代だ。麿赤児さん、ボクよりも大分と世代が上。
まさにボクにとっては理想的演劇人の人生双六。
唐十郎、三島由紀夫、埴谷雄高、池田満寿夫、そして寺山修司。
錚々たる登場人物をさらって描いて、かっこいいなあ。
あの時代の憧れていた東京、新宿あたりが期待通りに描かれている。
この思いは今、「深夜食堂」などに続いているのかもしれない。
と、脱線しかかったところで、まとまらないし、やめておきます。