澤田康幸のレビュー一覧
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現代には国際的な援助プロジェクトがさまざまに林立していて、それぞれが支援を求めています。ただ、営利団体と違って、こういった団体・プログラムが自らに課している評価や検証は甘いケースが多いので、その援助が実際に貧困層にどのような影響を与えるのか、投資対効果はどうか、持続可能なものなのか、そういったことを精査し続ける必要性を強く訴えた1冊。
医療の分野でよく使用されているRCT(ランダム化比較実験)の手法を用いて、支援をしたグループと何もしていないグループを比較することで効果測定します。「こうすれば、きっとこういう効果が得られるから投資しよう」という安易な”善意”ではなく、現実世界できちんと実験し -
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行動経済学の見地から途上国の貧困問題を取り扱っている一般人向けの入門書。難解な式はなく、事例が豊富で分かりやすい。タイトル以上に経済学。各分野の言及もあるけど、とくにマイクロファイナンスが多かった。「人間は理性的」から出発しない行動経済学は面白そう。
澤田教授の解説も分かりやすい。日本のODAについても触れてくれている。彼によると、日本は保健教育で寄生虫対策をしているとのこと。現場で実績があるのですね。
全編を通して、援助の効果を測ろうと訴えている。「大事なのは貧しい人たちの役立つようになったかどうか。貧困問題で本当に前進したいのなら、定量化可能な実証済みの方法で改善し、その改善を同じ手順を -
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開発経済学、という初めての分野の本でした(あとがきで初めてわかりました)
今まで、募金とかうさんくさい、と思ってなんとなく敬遠していた節があるのですが、貧困という状況をクリアに定義し、かつその状況がいかによりよく改善されうるか、ということがとても平易に記されていました。
この本の題名に一旦の回答を自分なりに文章にすると、No、ということになるのだと理解しました。
善意は貧困を救うためのキーファクターであることは確かであり、必要条件である、ということでしょう。
ただし、十分条件ではない。善意があれば貧困が解決できるわけではない、ということを腹落ちさせておくことが、より本来の意味で貧困という -
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タイトルが格好良すぎ。間違いなくこの分野は行動経済学が必要である。
解説によると、開発経済学の一般向け入門書、新三部作として紹介している。
この分野ではグラミン銀行創始者のユヌス氏が有名だが、本文中でのユヌス氏の言への反論が本書の主張を代表している。
ユヌス氏は以下の通り言ったという。
「私は、すべての人は生まれながらのスキルを持っていると固く信じている。私はそれを生き残るためのスキルと呼ぶ。貧しい人たちがいま生きていることが、彼らの能力をはっきりと証明している。彼らは私たちから生き残る方法を教わる必要などない。もう知っているのだ。だから私たちは、彼らに新しいスキルを教えようとして時間を無駄に -
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ネタバレ表紙に、貧乏人の行動経済学とあるが、内容は著者の実証実験のまとめ。
途上国の子供に制服を無償で付与すると、登校率は上がるのか?(まともな服を持っていない家庭の子供ならば有効な施策らしい)
学校に来ると現金給付金という意味で親にお金を渡すと登校率は上がるのか?(一定の効果あり)
こういった実証実験を紹介してくれている。
惰性。現状維持が持つ抗いがたい力。禁煙然り、貯金然り。
この力が貧しさ脱却の妨げになっているというのは面白い見方だった。
祖先から代々引き継いできた農業方法を今も同じ方法で行っているのは、惰性であると。
鋤や鍬を使い労働力を以て生産する方法が惰性であるならば、村の有力者に現代の -
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ネタバレぉー、これも完全に登録忘れてた。
もっと援助哲学的な話かと思ったら…このタイトルの意味は、もっとプロジェクトの効果の検証をしっかりしなさい、RCTは素晴らしい、というものでした。想定外でちょっと拍子抜け。しかも、何やら開発世界に関係のない人向けに書かれた本なので、開発学の、特に研究や評価などに慣れ親しんだ人にはちょっと物足りないのかも。
だけど、その分さくっと読めて、具体例を知ることはできるので、良いかな。
例えば、マイクロファイナンスはもてはやされているけれども、よくよく検証すると、マイクロファイナンス自体よりもそもそも貯金の方が効果があるかもしれないという示唆があったり。グループ連帯責