大橋洋一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ヨーロッパにおける文学批評論発展の歴史を著者の濃ゆい解説で辿る好著。
英文学に親しみのない自分からしたら、おおいに知的好奇心を掻き立てられました。
言語のこと考えると毎回頭パンクしそうになる。
2回目。
文学批評だけでなく、西洋哲学や近代社会など、様々な要素をかき混ぜ合わせながら批評の歴史を辿っていく。
意識主体としての人間が、言語という媒介を通して何を得て、何を知るのか?
古典的ヒューマニスト流の価値判断が全てなのか、もしくは、フランス構造主義者たちが生み出した科学的客観性でもって、コード読解を行うべきか?
イーグルトンの思考の流れを共に味わえる良著。 -
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Posted by ブクログ
下では批評理論の趨勢だけではなく、広く人文科学の在り方、政治との距離の問題について踏み込んでいく。特に新版のあとがきは、その傾向、いらだちがにじみ出ている。
本書はまだ古典ではない。生きている。なぜなら訳者も述べている通り、文化闘争は終わっていないからだ。
・私たちは自分のことを、どちらかというと、自由で、統一のとれた、自律的な、自己形成をする個人としてみる傾向があるし、またそうでなければ、私たちは社会生活のなかで自分の役割をまっとうできるはずがない。ところがアルチュセールによれば、私たちがそんなふうに自分のことを考えるようにしむけるのが、まさにイデオロギーなのだ。
・後期資本主義の支配的 -
Posted by ブクログ
冒頭からぐいぐいと引き込まれる。古典の名にふさわし射程の深さ、鋭さをもっている。いい意味で期待(予想)を裏切られた。お手軽ではない。原語によるルビの振り方も含めて翻訳も良い。
批評理論をカタログ的に説明したものではない。批評理論間の関係を説明し、より根源的に文学とは何か問うていくのが本書の真骨頂だ。
冒頭の、いくつかの「はしがき」からして、言葉が生きている。上っ面でない。挑戦的だ。
序章の「文学とは何か?」ーーそれを誰も決められない、という議論は目から鱗だ。身も蓋もないのだが、ステレオタイプから、イデオロギーから、パラダイムから逃れるためには、まず、このような前提を共有できるかが重要だか -
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Posted by ブクログ
queer の語は、いわゆるLGBT全体を指すと共に、
その中のどれでもない、名付け得ぬ欲望を表してもいて、
QはLGBTを補完すべき要素――と、監訳者は述べる。
この本は根底に名付け得ぬ欲望を抱えた、
不思議で奇妙な味わい(=queer の原義)の作品を集めた
アンソロジーである。
表紙に採用されたのは印象派の画家
ギュスターヴ・カイユボット(1848-1894)「床削り」。
カイユボット作品の題材や雰囲気に
クィア性を認める評が多いと解説にあり、
その意味を考えながら読んでみた。
以下、全8編についてネタバレしない範囲(?)で。
■ハーマン・メルヴィル
「わしとわが煙突」 I and -
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Posted by ブクログ
クィア小説コレクション、とはいっても一般に「LGBTQ」というカテゴリーで想像されるような内容には到底とどまっていない。収録作品の中には、ゲイ・セックスをあからさまかつ幻想的に描写するオスカー・ワイルドの「ティルニー」や、男性としてパスしてきたうぶなホテルの給仕係が若い女との結婚生活を夢見るジョージ・ムアの「アルバート・ノップスの人生」(映画の原作)もある一方、シャーロック・ホームズもの(パロディではない)あり、規範に縛られた田舎町で生と芸術への熱望に浮かされる若者の小説あり。
「名づけ得ぬ欲望の物語」という副題が示唆する通り、行間から浮かび上がる欲望を読み取ろうとするクィア・リーディングの教