熊井ひろ美のレビュー一覧 ゴーストランド 全米各地の幽霊話を、霊の実在を問うのではなく、何故そこにそのような物語が成立したのか、という観点から掘り下げていくという内容が面白かった。“言い伝え”と“事実”は恐ろしい程に乖離するのだということを知る。日本各地の都市伝説も、同じようにアプローチしてみたら、これも面白い結果になるのではなかろうか。 Posted by ブクログ ゴーストランド アメリカの幽霊と心霊現象の「背後」「側面」に迫った一冊。幽霊の実在を問うのではなく「どうしてそこに幽霊がいる・心霊現象が起きる(もしくは起きていない)といわれるのか?」に切り込み、そこに(副題にある)「アメリカ史」を見る…という視点はとても面白かった。 なぜ幽霊屋敷は誕生するのか、先住民と土地にまつ...続きを読むわる噂、奴隷制度の悲惨な歴史と幽霊が「出ない」理由、ゴーストツアーに群がる人々、幽霊話と犠牲者とその遺族、精神病院・墓地の変遷と幽霊がうまれるタイミング、人種差別に利用される心霊、IT時代・自動化時代の新しい幽霊観…。 「火のないところに煙は立たぬ」。 単に「廃墟だから」「事故物件だから」「なんか出そうだから」で止まらず、社会全体の根深い理由が染み付いている、それを解きほぐす・俯瞰する。 このアプローチは勉強になったし、なにより面白い! アメリカ史を学んでいる人ならまたより詳しく、違った視点で楽しめるのかな? Posted by ブクログ ドライ・ボーンズ 私立探偵をヒーローに据えたハードボイルド小説が減ってきている。或いは「売れない」ためなのか翻訳されない。本作の解説で、評論家・霜月蒼が言及している通り、生業ばかりでなく、その舞台も都市部から地方都市へ、さらには厳しい環境の辺境の地へと移っている。主題も、家庭の悲劇からマイノリティなど米国の抱える闇を...続きを読む捉え直して、ミステリに組み込み始めている。私立探偵という職業がもはやリアリティを持ち得ないのではなく、〝現代のハードボイルド小説〟を構想する上で、都会に住む〝孤高〟のヒーローよりも、ドロップアウトして地方生活を送る者、または土地に根差しながらも〝アウトサイダー〟である者の方が、社会的なテーマをより深く掘り下げ、明確にしやすいということなのかもしれない。 ハードボイルド小説のヒーロー像も変遷していく。その流れの中で、トム・ボウマンのデビュー作「ドライ・ボーンズ」は、〝これからのハードボイルド小説〟の本流となる力強さを秘めていると感じた。導入部一行目から引き込まれたのだ。 死体が見つかった日の前夜、わたしは眠れなかった。三月半ばの雪解けの時期だった。 主人公の独白は内省的でありつつ己の現状を達観しており、動的でありながらも情感に満ちた文体(無論、翻訳者の腕如何だが)で、眼前の情景を時に読者自身にも語り掛けながら綴っていく。ガス採掘の利権で揺れる町。ネイティヴの絡む不可解な死体の発見。色と欲と麻薬、暴力の連鎖。本筋とは関係なく時折挿入される亡き妻とのエピソードが決して邪魔にならず、〝余所者〟として事件に執着する主人公の動機が、喪失と疎外感の中で形成されていることが分かる。森林の中に投棄される鉄屑の山。そこに吸い寄せられていく敗残者。過去に生きる者の幻視。濃密な退廃感。関係者の過去へと遡り、徐々に「わたし」は真相へと近付いていく。 プロットや登場人物が整理されておらず混乱することもある。だが、それでもなお読ませるのは、この物語の持つ空気感、世界観が、今後のハードボイルドを切り拓く可能性までも感じさせるからに他ならない。 Posted by ブクログ ゴーストランド 「幽霊」とは何か、あるいは幽霊譚、取り憑かれた場所はなぜ生まれるのか。そこには光の当たるその土地の「正史」に隠された、しかし忘れ去られることをよしとしない陰の歴史が眠っている。類稀なる着眼点でもってアメリカ各地の幽霊出没地をめぐり、その陰に語り継がれる物語を紡ぎ出す。 大変興味深い一冊。 ただまあ難...続きを読むを言うとちょっとレトリックが多すぎる気はしたのでそこは文体の好みが分かれるかなあ。 Posted by ブクログ ドライ・ボーンズ 厳しい自然に囲まれた田舎町ワイルド・タイム。雪解けの季節のある日、銃痕があるうえ野生動物に荒らされた青年の死体が発見された。町で唯一の警察官ファレルは被害者の身元を洗うが、開拓時代から自分の身は自分で守ってきた住人たちは協力的ではなく、シェールガス利権や薬物の蔓延も捜査の行く手を阻む。やがて、法を信...続きを読むじない人々の暗い過去にたどりついたファレルは…アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞作。 雰囲気は悪くないが、筋立てがぎくしゃくしていた。 Posted by ブクログ ドライ・ボーンズ とある町で起きた事件を追うミステリなのだが、その主題となるはずの事件よりも、主人公ファレルの人生というか眼差しをみつめることに夢中になっていた。 たたずまいからして美しい。 翻訳が上手いのもあるのだろうが、原文も端正なのだろうなぁ。 難点があるとすれば、自分の語彙にない言葉が多く使われてい...続きを読むたので「あれこれなんだっけ」となってしまった箇所がいくつかあった。 まだ未読の方へのアドバイスを送るなら、わからない言葉があれば、さっくり調べたほうがいいです。 Posted by ブクログ <<<1・・・・・・・・・>>>