あらすじ
アメリカ各地に残る幽霊話は、この国が忘れようとしてきた過去、見捨てられた存在を闇の中から呼び起こす。先住民、魔女裁判、奴隷制、南北戦争、売春宿、精神病院、刑務所、廃工場――幽霊たちがかきたてる恐怖の背後には、アメリカという国が抱える根源的な不安がひそんでいる。全米の有名な幽霊スポットを興味深いエピソードをまじえて紹介しながら、「幽霊の国アメリカ」の深層を描いて話題を呼んだノンフィクション。
【目次】
著者より一言
序 幽霊出没の解剖 ニューヨーク州ニューヨーク
I 非家庭的なもの――家と館
第 一 章 隠し階段 マサチューセッツ州セーラム
第 二 章 動く土地 ルイジアナ州セントフランシスヴィル
第 三 章 果てのない家 カリフォルニア州サンノゼ
第 四 章 鼠穴の啓示 ニューヨーク州ジョージタウン&イリノイ州ブル・ヴァレー
第 五 章 短命の家系 ミズーリ州セントルイス
II 閉店後に――バー、レストラン、ホテル、売春宿
第 六 章 悪魔のような場所 ヴァージニア州リッチモンド
第 七 章 ベイビー ネヴァダ州リノ
第 八 章 通り過ぎる カリフォルニア州ロサンジェルス
III 公共心ある幽霊たち――刑務所、精神病院、墓地、公園
第 九 章 憂鬱なる観想 ウェストヴァージニア州マウンズヴィル
第 十 章 染み マサチューセッツ州ダンヴァーズ&オハイオ州アセンズ
第十一章 悪魔が来るのを待つ サウスカロライナ州チャールストン&カンザス州ダグラス郡
第十二章 我らが高名なる死者 テネシー州シャイロー
第十三章 大聖堂公園を吹き抜ける風 オレゴン州ポートランド
IV 無用の記憶――都市と町
第十四章 濡れた墓 ルイジアナ州ニューオリンズ
第十五章 廃墟の中で ミシガン州デトロイト
第十六章 ヒルズデール、USA
エピローグ ニューマシンの幽霊たち カリフォルニア州アレンデール
謝辞
訳者あとがき
文献注
索引
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
幽霊話は不動産をめぐる抗争から、富裕な老未亡人に対する反感と不安から、奴隷たちの行動を制限する目的から、そして人目につかない悲しい歴史を保存する必要から生じる。幽霊話とは象徴であり喩えなのだ。それを語ることによって人々は別のことを、もっと生々しい現実の問題を語っている。貧富の差、階級差、そういった現実の深刻な問題が幽霊話にも反映している。幽霊は圧倒的に白人が多く、黒人が幽霊として語られるケースは極端に少ないという。幽霊話にも人種問題というアメリカ社会の一面が潜んでいる。
Posted by ブクログ
全米各地の幽霊話を、霊の実在を問うのではなく、何故そこにそのような物語が成立したのか、という観点から掘り下げていくという内容が面白かった。“言い伝え”と“事実”は恐ろしい程に乖離するのだということを知る。日本各地の都市伝説も、同じようにアプローチしてみたら、これも面白い結果になるのではなかろうか。
Posted by ブクログ
アメリカの幽霊と心霊現象の「背後」「側面」に迫った一冊。幽霊の実在を問うのではなく「どうしてそこに幽霊がいる・心霊現象が起きる(もしくは起きていない)といわれるのか?」に切り込み、そこに(副題にある)「アメリカ史」を見る…という視点はとても面白かった。
なぜ幽霊屋敷は誕生するのか、先住民と土地にまつわる噂、奴隷制度の悲惨な歴史と幽霊が「出ない」理由、ゴーストツアーに群がる人々、幽霊話と犠牲者とその遺族、精神病院・墓地の変遷と幽霊がうまれるタイミング、人種差別に利用される心霊、IT時代・自動化時代の新しい幽霊観…。
「火のないところに煙は立たぬ」。
単に「廃墟だから」「事故物件だから」「なんか出そうだから」で止まらず、社会全体の根深い理由が染み付いている、それを解きほぐす・俯瞰する。
このアプローチは勉強になったし、なにより面白い!
アメリカ史を学んでいる人ならまたより詳しく、違った視点で楽しめるのかな?