荒木優太のレビュー一覧
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ネタバレ前作『これからのエリック・ホッファーのために』2016が過去の在野研究者を取り上げたのに対し、本書は「今現在活躍している人」を扱う。
●総論として
“
在野の研究生活に一般解はない。
個々人の生活はそれぞれ異なる条件を与えられ、使えるリソースもてんでばらばらだ。偶然性に左右される。
その上でなお在野での学問を志すのならば、各人、使える技法を自分用にチューンナップせねばならない。
■工藤郁子 趣味としての研究
“稼いだお金で学術書を思うさま買っては積み、ときどき読む。
有給休暇を取って学会に行き、たまに口頭発表をする。
まれに論文を書くが、別にアカデミックポストを狙っているわけではない。 -
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在野研究とはなんぞや? と未知の世界を覗くような気持ちで手を出してみたら、専門性に圧倒される部分もありつつ面白かった。
実践的な在野研究の進め方の解説やアドバイスがあれば、ご自身の研究生活を具体的に振り返られているものもあり、研究といっても内容は人それぞれで、ご自身が研究する立場の方も、研究者を支援するのが専門の方もいらっしゃる。
未知の世界、とても広かった。
時折出てくる、研究者・専門家視点のユーモアが面白い。「締切直前の深夜に降りてくる「文章の神様」はだいたい邪神」とか、機械翻訳に対する「普段はおかしいのに時々ぐさっとくることを言う面白い友達」「お前、大人になったらつまらない人間になった -
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私の読書生活にとって、有島武郎はまったく縁がなかった。読みたいと思ったことがなかった。そんな中でこの本を読もうと思ったのは、ビッグイシューで“在野研究者”としての荒木優太さんのインタビュー記事を読んだからだ。
それにしても荒木さんはなぜ並みいる作家のなかから「有島武郎」に肩入れするのだろうか?それが知りたかった。だって野球漫画で例えれば、巨人の星やドカベンではなく、アストロ球団に肩入れするようなものではないか?
荒木さんには失礼ながら私が意外だったのは、荒木さんの論調が、いわゆる個人的感想ではなく、有島作品を精読し詳解していたところ。在野とは言いながら、好き放題に自分の思いを書き散らすとい -
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昨今の在野研究ブームの立役者の一人である荒木優太による、近代日本のプロレタリア文学アンソロジー。
内容はバラエティに富んでおり、小説だけはなくエッセイや「どうしたら上手に謄写印刷出来るか」共産党のパンフレットに掲載された記事や、パラレタリア文学として太宰や横光利一といった非プロレタリア文学者以外の作家によるプロレタリア文学っぽい作品まで収録されている。
便所に書かれた落書きの報告である府川流一の「便所闘争」や、昨今のフェイクドキュメンタリーテイストの小林多喜二の「誰かに宛てた記録」などは実験小説や前衛小説を思わせる作品で初読なら強烈な印象を受けるだろうが、森話社の「アンソロジー・プロレタリ -
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大学や研究機関に属さない色々な分野の研究者の方々が、自身の研究の動機・内容・スタイルなどを綴った本です。
研究とは何か広く考えるきっかけにもなるし、様々な分野の研究の特徴を知ることができるし(在野の研究者の方ゆえの事情が加味されてはいると思うけど)、職業としてでなくても研究を続けている方々だからこそなのか研究対象への熱意があふれてるし、いろんな意味で面白かった。
在野の研究者の方の困難の1つとして文献へのアクセスが挙げられていたが、オープンアクセスにより少しそれが緩和されたとも複数の方が書かれていた。
みなさん、苦労されてるのは、仕事との両立(物理的にも精神的にも)というかんじはしたが、適度な -
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自分の研究者としてのキャリアパスを考えるために読みました。
読む前に気になっていたのは、倫理審査どうするんだろうということでしたが、本書の研究者の多くが人文科学系だったからか、研究倫理について触れている方はいませんでした。
大学以外となると、臨床現場や企業で、仕事とイコール、あるいはそれに近い形で研究を続けるという道しかないと思っていましたが、趣味やライフワークのような形で研究を続けていくスタイルが選択肢としてあってもよいのだなと思いました。ただし在野として研究活動を続けるにも向き不向きがありそうでした。
また、学問とは、研究とは、大学とは、等深く考えてこなかった概念について揺さぶられ、改めて -
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「研究者」というと、大学や研究機関に所属し、自分の研究分野に関連する学会や学術雑誌で研究成果を発表する人というイメージだろうか。
もちろん、そうした研究者は多いが、本書で扱うのは、いわゆる「在野」の研究者である。つまり、「職業」としての研究ではない、どこにも「所属」しない研究である。
編著者を含めて、さまざまな分野で、己の興味の対象を探求する総勢18名。
さて彼らがどのように今の研究スタイルにたどり着き、どのように研究を推し進め、どのように発表の場を持っているのか、研究者自身の執筆により、または対談形式でその姿に迫る。
大学などの「在朝」研究者に比較して、「在野」の研究者のハンディとなるのは