荒木優太のレビュー一覧
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本書では、大学に所属をもたない「在野研究者」15人が、研究生活の実践と方法をおのおのの体験の中で論じている。
本書を読み、在野研究を続けていくには研究費の問題や文献の入手などいろいろと困難があるなということも感じつつ、好きな分野について、別の仕事を持ちながらでも在野研究に心血を注ぐことの魅力を大いに感じた。
本書の中では、公務員として政治学史を研究する酒井大輔氏の「職業としない学問」、趣味としての研究を楽しんでいる工藤郁子氏の「趣味の研究」、サラリーマンをしながら週末に研究に勤しむ伊藤未明氏の「四〇歳から「週末学者」になる」、ハエとの出会いで人生が変わってしまった熊澤辰徳氏の「エメラルド色のハ -
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前作の『これからのエリック・ホッファーのために―在野研究者の生と心得―』と同様に、本書も純粋に学問に取り組みたい在野研究者にとっての福音書なるだろう。本書は在野研究の事例集であり、終始わくわくしながらページをめくった。分野や専門領域は異なるが、そうした事例を組み合わせることにより、読者の研究に対する姿勢や研究環境を整える手段を知る一助となるはずである。
例えば、政治学の分野と同じように、高等教育研究の分野もセミプロ(プロとアマの中間)が多いイメージがある。研究対象としての大学に身を置いて、研究者以外の職にある事務職員等の立場で研究するケースが、自分も含めて少なくない。また大学事務職員そのもの -
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大学職員という職業を持つ者が、大学院に通い研究の経験をしたり、またそこを修了して研究活動を続けることに対する否定的な意見等を浴びせられることは少なくない。以前、何かにとりつかれたように病的にSNS上で、ごく狭い範囲のケースを想定して大学院や学会活動やその経験に関連する批判的な言説を垂れ流す輩もいた。おそらく、その成果に対する称賛の声より、獲得した学歴と業務への姿勢や当該人物の能力に関連付けされて批判される場面の方が多いだろう。
本書『これからのエリック・ホッファーのために-在野研究者と生と心得』には、こうした批判が生まれることを見越して、「仕事場で研究の話をするのは厳禁」と戒め、「日常生活で -
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『在野研究ビギナーズ』で著者の名前に馴染みがあったのと、『なぜ小集団は毒されるのか』という副題に気を引かれて手に取った。姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』を糸口にフェミニズムおよびインターセクショナリティについて述べられるのを、ほうほう、と読んでいくと、いつのまにか鶴見俊輔入門みたいになり、この本の副題は『鶴見俊輔の仕事を振り返りながら』とでもしたほうがよかったんじゃないの?と思いつつ、あとがきにたどりつくと「本書は『すばる』二〇二一年一月号に発表された「円を歪ませるもの—鶴見俊輔とサークルの思想」を大幅に加筆修正したものである」(p205)とあって、やっぱり、となった。オビなりそでなり、ど
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ネタバレ・誰かに会いに行くことが決まっているなら、事前に論文を何本か読んで<読んでわかったこと/わからなかったこと>をなるべく明確な言葉にまとめておき、機会があれば相手にそれを伝えてみよう(210)
・必要なのはまずは教科書的な知識であり、「最新の知識」ではない。できれば最初に会ったときにその分野の標準的な教科書をいくつか教えてもらい、次に会うときまでには読んでおこう。そうすれば相手はその分だけ楽に話せるようになる(210)
・支援者は自分自身で何か「よいアイディア」を出す必要はない(211)
・課題の方向を「彼/女たち自身がアイディアを出しやすくするために何ができるか」へと切り替えるだけで支援のハー -
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「在野研究」…ざっくり言って大学や研究機関に所属せず、研究活動(狭義には論文執筆や学会報告など)をしている人達によるエッセイ。
いや世の中ホントに色んな人がいるもんだなあと感嘆した。勇気づけられるし、自分も何かしらノウハウを高めながら取り組んでみたいと勇気づけられる。
イベントにも行ったけど実は皆執筆には後ろ向きだった様で(笑)在野研究という概念自体に疑問や問題点を指摘する声も多々あり。別にアタシら在野とか在朝とか意識してないんすけどみたいな感じだったか…忘れたけど。
それでも「研究は研究(機関所属)者だけのものじゃない」と多様な実例を持ってブチ上げた事に読者は勇気づけられたのだと思うし -
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エリック・ホッファーはこんな本は書かなかっただろう。知らないけど。彼は、彼の哲学を、周囲にとらわれることなく、境遇に迷うことなく続けた。それが僕の印象だ。
三浦つとむ、谷川健一、高群逸枝、小室直樹、南方熊楠、ほかに、名を知らない人もいましたが、ちょっと、普通の感覚では比較にならない抜群の才能群ですね。
彼らを先達とした、荒木青年の心意気や、よし!ただ、惜しむらくは、紹介されている「独学者」に筆がついて行っていない印象はぬぐえなかったことだ。
谷川健一や吉野裕子は長年のひいきだが、当たり前のことながら、彼や彼女の著作を読み切るだけでも、凡夫にとって一生の仕事といえるでしょうね。なかなか、