海部陽介のレビュー一覧
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海部陽介(1969年~)氏は、東大理学部生物学科卒、東大大学院理学系研究科博士課程中退の人類進化学者。東大大学院理学系研究科准教授、国立科学博物館人類研究部人類史研究グループ長等を経て、東大総合研究博物館教授。
2016~19年に国立科学博物館が主催した日台共同プロジェクト「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の代表を務め、3万年前に我々の祖先が行ったと想像される、手漕ぎの丸太舟で台湾から与那国島へ渡る実験航海を行い、成功した。
本書は、ホモ・サピエンスがアフリカから日本に如何なるルートで辿り着いたのかを、遺跡調査の最新のデータを踏まえて明らかにしたもので、2016年に単行本が出版された。そ -
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日本人のルーツの一つに、南方系のルートがあると考えられていますが、そのルートが成り立ち得るのかどうか、実際にやってみよう、というプロジェクトの全体を紹介した本です。
とはいえ、南方系のヒトが初めて日本に渡ってきたのは3万年以上前のことなので、想像するしかない部分は多々ありますし、3万年前と今では、海の状態も陸の状態も違うので、完全再現は難しいですが、それでも、人力だけで南方系のルートは可能と考えて差し支えないレベルの成果が得られたことは、非常に意味があると思います。
それにしても、このプロジェクトに関わった皆さんの情熱には、圧倒されます。
南方系のヒトが日本に渡ったときにも、きっと同じよう -
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草舟(草束舟)で台湾から与那国島へ渡る。
このプロジェクトはテレビのドキュメンタリーでもやっていた。
旧石器時代の道具で材料を加工し、コンパスなど文明の航海器具は使わない。
そのプロジェクトについて書かれるのは、最終章の11章。
やっぱり、その部分が一番面白い。
そこまでは、予備知識や関心の度合いにより、ちょっと辛い部分もあるかも。
ホモサピエンスは、アフリカで生まれ、世界中に伝播した。
部分的には旧人とも混血しながら。
こういうところは、近年の遺伝子解析技術でわかってきたことだという。
海岸だけではなく、内陸も含めたルートで。
日本へは、主に三つのルートで入ってくる。
旧石器時代の人々が途 -
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「人類学系の読み物として最高の一冊」
第2章の中盤からは次のページをめくる指が止まらない。それくらいに私たちの祖先への興味が1ページ毎にかき立てられる一冊。他のブルーバックスのように「専門を学ぶ入門書」というものよりは、「専門を旅する読み物」といった感覚の1冊。
私たちを私たちたらしめているのはテクノロジーであって、テクノロジーの進化によって種としての進化を代替している訳でもある。そしてそのテクノロジーは、世界をひとつにし、世界からガラパゴスをなくし、均質なものとすることで、種としての進化のストッパーにもなっている。
著者も問題提起していた現代の我々の大きな命題である「ダイバーシティ・ア -
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日本人とは何か。
それを人類学上から明らかにしようとするプロジェクトが進行中だ。
まず、日本に最初にホモサピエンスが到達したのはいつ、どのようなルートだったのかを考察するためには、世界を俯瞰する必要がある。
アフリカを出発したホモサピエンスが日本に到達したのは3万年以上前の旧石器時代のこと。
従来はアジア南岸沿いに進行したと考えられていたが、ほかにもヒマラヤを迂回する南北ルートの陸路で東進が行われていた。
3万年前、今より海面が低く、海岸線が広かった陸地からホモサピエンスが日本に入ったルートは、旧石器時代の遺跡から3つ考えられる。
・対馬海峡ルート
・陸路で繋がっていたサハ -
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かつてアジア地域に生息していた原人・旧人たち - 北京原人やジャワ原人という名前で知られている - についての解説本。アフリカやヨーロッパではかなり研究が進んでいるが、アジア地域ではかなり遅れていたため、最近になってフローレス原人や台湾沖での澎湖人など新しい発見が21世紀に入っても出ている状況である。その道の第一人者である国立科学博物館の海部陽介グループ長に導かれる形で著者がまとめたものである。自らの起源に関わる話であり、思い入れのある著者の筆にも熱がこもっている。
なお、我々の起源と書いたが、フローレス原人も澎湖人も北京原人もジャワ原人も我々の祖先ではないことがほぼ確認されている。タイトル -
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ああ、そうか。
本は明言を避けたというか、根拠ない事を断定はできないのだが、ヒントめいたものは書いている。我々はなぜ我々だけなのか。ホモサピエンスにかつての原人の血が混ざっていたとしても、我々は世界の至る所まで、ホモサピエンスのみだ。これは、別の人類を戦争で淘汰したか否か事実は分からないが、本著が書いたように、移動する能力により、混ざったのだ。閉鎖エリアで多様化した種は、戦争かウイルスや病気、あるいは気候変動か、はたまた平和的な交合か、いずれにせよ、移動する種により、混ざったのだろう。人間以外は、制限されたエリアほど、珍しい種が生存している。
有史以前に何が起きたかは、分からない。分からない